第5話
ユニークが100人を超えました。ありがとうございます。
外はまだお昼前だと言うのに薄暗い曇り空で、なんとも嫌な天気である。それは、現在の状況を暗示しているかのようだ。フルネーラ王国の東側にある小さな町。人口2000人位ののどかな町だが、王国の東側にある『樹海』の程近くにある。『樹海』は魔力濃度が高く強い魔物が多くいる。その『樹海』から魔物の大群が町に迫って来ていた。
(これは一雨降るな。)
国軍警備隊隊長の兵士のベルード・ブレイバーはそう一人考えていた。町の南側から千を超える魔物の大群の来る音が地響きとして伝わってくる。現在、部下が町を守るために忙しなく動いている。町の外には砦があるがそれは『樹海』側にあり魔物が来ている南の守りはないのも同じだ。
この町は開拓村から緩やかに発展していた町で、その際に『樹海』側に町の防御のための砦が建てられた。魔物が襲撃してきた時、4時間位のところにある都市の軍が援軍として来るまでの防衛線として機能する。しかし、魔物は現在何もない南側から襲撃してきているため部下たちや町にいた冒険者達で防衛するためだ。その防衛戦力は国軍警備隊の兵士100人、任意参加の冒険者20人である。兵士は大体Cランク下位といった実力で、冒険者はEランクからCランクまで集まっている。魔物は千体いるがゴブリンやホーンラビット、ウェアウルフといったEランク程度がほとんどだと発見した部下が報告しており、現在の戦力でもその程度なら勝てる。その様なこと考えていると、魔物の姿が見えてきた。後、20分程度で接敵するだろう。
「隊長、準備が整いました。」
「そうか。住民の避難はどうなっている。」
「かなり混乱していますが順調に進んでいます。」
「わかった。総員、戦闘用意!」
そして、両者が激突した。
魔物と警備隊が激突してからまだ30分程しかたっていない。しかし、ベルードの予想以上にこちらが押していた。守るものがあるため士気が高くすでに魔物は1割以上倒していた。中でもベルードの活躍がすさまじく、この短時間で30体近くを倒していた。そのことがさらに士気を高くしていた。
(これなら勝てる。しかし、このなんとも言えない胸騒ぎはなんだ。)
その時、ポツリポツリと雨が降りだしてきた。まるで、ベルードの胸騒ぎを表しているかのように雨はだんだんと強く激しく降りだしてきた。しかし、戦況はいまだこちらが優勢で、既に魔物は半分程討伐されている。こちらの方にも被害が出始めているが、余裕はある。
「ベルード隊長!これなら援軍が到着する前に魔物が全滅しそうですね。」
「数だけ多くても、ゴブリンとかじゃあ楽勝ですぜ。」
部下や冒険者が完全に勝利ムードになっていた。確かに負傷者は出ているが、死者はまだででいない。負傷者も死ぬほどの重体なものも出ていない。しかし、魔物はまだ700体近くいるため、
「油断するな!まだまだ敵はいるんだぞ!・・・クリッツ、なんだか胸騒ぎがする。少し警戒しといてくれ。」
ベルードはそう副隊長であるクリッツに頼んだ。わかりました、と返事がかえってきたので、意識を戦闘に向けた。
戦闘開始からさらに1時間がたった頃に違和感を覚え得た。戦況はこちらが優勢で士気が高い。今までの経験からこれだけ押されている状況なら魔物も馬鹿ではないので森に逃げたりするのだが、今回の魔物にはその様な感じが一切ない。これは何かおかしいぞと思ったその時、
「隊長!北側と西側に魔物が!!」
「何だと!?数は!」
「両側共に1,000体です!!」
ベルードはその数を聞いて絶望した。町で戦える者はほとんどこちらにいるためだ。ベルードは死傷者が増える覚悟で戦力を送る命令を下そうとしたそのとき、目の前の魔物の後ろからBランクの魔物、『オーガ』が姿を表した。その数4体。ベルードは更に絶望した。
(何故オーガがいる!?こちら今の戦力では勝てない。)
オーガを見た部下や冒険者もそう感じたのか、敵の前だというのに一気に混乱してしまった。
「なんでオーガがいるんだよ!?勝てる分けねーだろ!!」
「クソが!!俺は逃げるぞ!」
「おいお前ら、敵前逃亡は違反だぞ。おわっ!待て!」
オーガの出現に戦線は完全に崩壊してしまった。冒険者は我先に逃げ出し、部下も古参の兵士はなんとか正気を保っているが若い兵士は恐怖に囚われて逃げ出す者、立ちつくす者など様々な反応をしている。
(このままでは・・・クソ!! 防衛戦力の中でもっとも強い自分が何とかせねば!!)
ベルードは士気の回復、そして戦況打開のためオーガに攻撃を仕掛けようとしたそのとき気がついた。魔物の中に男が一人歩いている。遠目からもわかる変な仮面をつけており奇抜な服を着ているその男をベルードは怪しく思い止まって凝視していると男がこちらに気がついたようだ。その瞬間、凄まじい殺気を感じて大きく飛び退いた。
(何者なんだあの男は!?)
「ほう。こんな小さな町にも見所ありそうな者がいるじゃないか。ん?どうした、この私におびえているのか?」
「何者なんだ!?」
「何者?確かにこの格好ではよくわからんか。ではヒントを与えよう、一般的に魔物を操れて南にるのは?」
その男は魔物を後ろに侍らせてそのようなこと言ってきた。ベルードはその意味がよくわからなかったが、その時、男から自分とは比べられないほどの魔力を突然感じてその正体がわかり絶望した。
「まさか、魔族か!?なぜ魔族がこのような所にいる。」
「正解だが・・・何故かは貴様には関係ない。これ以上の話は計画の遅れにつながるな。死ね。」
ベルードはその魔族の男が何らかの魔法を発動をしたその時、自らの死を感じた。最期に想ったのは愛している妻とまだ教えたいことのあったまだ幼い愛しい息子のことだった。
(ネイラ・・・。レイ・・・。)
それからわずか30分で防衛戦力は全滅した。
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