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幼馴染みってどう思う?

作者: 真田 蒼生

楽しんでいただければ幸いです。

カナロヴェ:突然だが、幼馴染みってどう思う?

ナリキン:本当に突然だな


無料のチャットアプリにて、『昨今のゲーム事情による自分達の悲惨な財布事情』という意外と熱中したが実際は「買いたいゲーム多すぎて財布がやばい」というどうでもいい内容の会話をしていたとき、いきなり投げ掛けられた質問に対し返答する。


カナロヴェ:いいじゃんべつに。んで、どう思うよ?

ナリキン:どう思うってなぁ……。

カナロヴェ:具体的に言うと、家が隣同士で、部屋は窓越しにお互いに覗けて、よく一緒に遊んで、一緒の大学に通って、さらにはお互いの部屋にも行き来する幼馴染みってどう思う?

ナリキン:……具体的すぎね?


どんだけ妄想豊かなんだこいつ。正直引くわ。中学2年でこのチャットを始めた頃から現在大学1年までの付き合いだが、そろそろ繋がりを切るべきかもしれん。そんなことを思いながら、再びモニターを見てみれば、こんな発言が表示されていた。


カナロヴェ:だって、俺の幼馴染みの話だもん

ナリキン:今すぐボンOーマンを起動しろこの裏切り者(リア充)。この彼女いない歴=年齢のこの俺が直々に貴様を爆殺してくれる

カナロヴェ:弁明を聞く耳を持たないか。いいだろう。返り討ちにしてくれる



カナロヴェ:……まさかあそこまで殺られるとは……非リアの妬みって怖い


PCに入っているボンバーOンを起動し、マルチプレイで対戦を行い、10連続で爆殺してやった。リア充()は滅ぶべし。


ナリキン:思い知ったかボッチの力。伊達に一人で孤独にやり込んでないぞ……あれ、なんだろう? なんかモニターが歪むぞ?


おかしいな、故障か? あとなんかしょっぱい。

気を取り直して。


ナリキン:なんだっけ、妄想乙って話だっけ?

カナロヴェ:妄想違うわ。現実に存在してるわ

ナリキン:ならあれか。同性って落ちか

カナロヴェ:普通に異性だコノヤロー。ボッチの妄想を押し付けるでないわ

ナリキン:喧嘩売ってますか買いますよコノヤロー

カナロヴェ:話が進まぬ

ナリキン:誰のせいだ。んで、結局何が聞きたいのよ?

カナロヴェ:いや、君が同じ立場だったらどう思うかなと

ナリキン:なるほどねぇ


家が隣同士で、部屋は窓越しにお互いに覗けて、よく一緒に遊んで、一緒の大学に通って、さらにはお互いの部屋にも行き来する異性の幼馴染み……ねぇ。


ナリキン:そこまでいいもんじゃないと思うぞ

カナロヴェ:予想外の返答が来たな。なんで?


だって……。


ナリキン:俺も同じ条件の幼馴染みいるし

カナロヴェ:今すぐボンOーマンを起動しろこの裏切り者(リア充)。この僕が直々に貴様を爆殺してくれる

ナリキン:その下りはさっきやった。まぁいいだろう。受けてたってやる


ナリキンこと俺、金成(かなしろ) 嘉成(かなり)には先程の条件の幼馴染みが存在している。

……ちなみにOンバーマンは、10回爆殺された。これが非リアの力か……っ!


ーーーーー


「おはようカナ」


次の日、あくびをしながら朝通っている大学に向かう道中、後ろから声をかけられた。

振り向けば、そこには我が幼馴染み、狭山(さやま) 汐里(しおり)がたっていた。


「おーおはよう汐里。いまから大学か」

「いや、僕の講義は昼からだよ。散歩がてらカナの寝惚けた顔を見にきたんだ」

「暇か」

「そだね」


聞いての通り、彼女は世にも珍しいリアルの僕っ子だ。知り合った頃は一人称私だったんだが、突然僕になった。そのころ俺は私より僕の方が親しみやすいとかなんか言った覚えがあるが……まぁ関係ないだろう。

そのまま、二人でならんで大学に向かう。なんでこいつ講義無いのにくるんだ。道中、汐里が話し出す。


「最近ちょっと行き詰まってることがあるんだよね」

「へぇ、どんな?」

「まぁ、簡単に言うと、攻略……かな」

「ゲームか。よければ手伝うぞ」

「いや、カナは絶対にやらないタイプのゲームだから」

「さいでっか」


あれか、いま流行りの乙女ゲーというやつか。


「それに頼りになる相談相手もいるし」


まぁ、女友達多いしな。同じゲームやってるやつもいるだろ。

そのまま大学に着き、汐里は方向転換して帰っていった。ほんと何しにきたんだあいつ。



カナロヴェ:突然だが、好みのタイプってなに?

ナリキン:また突然だな


帰宅し、PCをつけて開口(改行?)一番にこう尋ねられた。好きなタイプねぇ……。


ナリキン:わかんねぇわ


意外と自分の好きなタイプとか分からんもんよ?


カナロヴェ:ならこんな子は印象がいいとかそんなでもいいよ


そーだなー。俺は汐里のことを一瞬考え、そして、


ナリキン:おしとやかな子かな。家庭的な感じの


活発な性格の彼女とは真逆のことを書いた。そしてしばらく間が空き、


カナロヴェ:へー、それじゃ外見的な好みは?

ナリキン:そーさなー。髪は結ばずに下ろしてて、胸は……まぁ特に気にしないな。あ、服装はやっぱスカートがいいな。ミニスカとかじゃなく学校指定の制服くらいの長さの


ちなみに汐里の外見は、髪はポニーテールにしていて、服装はいつもズボン、胸はまぁぼちぼちである。

そして再び間が空き、


カナロヴェ:ふーん。ナリキンはそういうのがいいんだ

ナリキン:まぁ、そだな


そんなとき


「カナー」

「ん?」


窓の方から声がかけられた。窓から少し乗り出せば、隣の家の正面の窓に同じく汐里が身を乗り出していた。前述した通り、俺と彼女の部屋は向かい合わせとなっている。


「どした?」

「明日デートにいかない?」

「荷物持ちか。昼飯で手を打とう」

「了解、それじゃ明日……」


そうして詳しい予定を決めたあと、モニターを見てみれば、こう表示されていた。


カナロヴェ:じゃあ、僕、頑張るよ


何をだ。



次の日、家の前で俺は、硬直した。


「おはようカナ。絶好のデート日和だね」


買い物の準備を終え、家から出てきた汐里は、ポニーテールをやめ髪をおろし、ズボンではなくスカートをはいていた。


「…………」

「それじゃ、いこっか」

「お、おう……」


あっけにとられている俺の手を引っ張り、買い物へと繰り出した。そして、買い物が一段落し、昼時になったとき、


「今日はお弁当作ってきたんだ。おかずはカナの好物いっぱいだよ」


そういって、開けられた弁当箱には確かに俺の好物が満載だった。味についても申し分なかった。


「僕、結構家庭的なんだよ」

「そ、そうか……」


終始あっけにとられたまま、買い物は終わり、家の前で解散となった。そして帰った俺はすぐにPCをつけ、チャットに書き込んだ。


ナリキン:大変だ聞いてくれ

カナロヴェ:どうした?


ちょうどよく彼はログインしており、すぐに返事が帰ってきた。


ナリキン:今日は幼馴染みと一緒に買い物に行ったんだが

カナロヴェ:ふんふん

ナリキン:そいつが昨日俺が言った服装、髪型をして、さらに弁当をつくって家庭的アピールをしてきた

カナロヴェ:ほうほう


……あれ? おかしいな。いつもならここらでボンバOマンを起動させるのに。まぁいいや。


カナロヴェ:それで、どう感じたの?


どう感じた……か。そんなもの決まっている。


ナリキン:正直無いなと思った


「なんでさ!?」


おおっ?! どうした汐里よ。部屋で叫んだりして。攻略がうまくいかないのか?


カナロヴェ:なんで?

ナリキン:俺の中でのあいつは、そういうやつじゃないんだ……。

カナロヴェ:つまりどういうことだってばよ

ナリキン:家庭的、いいじゃないか。スカート・髪型、新鮮でよかった。だがおしとやか、てめぇはだめだ。


弁当、服装なんかは普通に好印象を受けた。だが、買い物中のあいつは、ずっと静かで落ち着いていたんだ。ちがう! お前はそんなキャラじゃないだろ! お前は活発なやつのはずだ!


カナロヴェ:つまり、性格というか、態度がそのままだったら完璧だったと?

ナリキン:せやな。そのままの君でいてと言うやつだ

カナロヴェ:そっか……


翌日から、汐里はたまにスカートをはくようになり、昼時に弁当をくれたりするようになった。なんか機嫌はよさそうだ。おれも昼代が浮くから嬉しい。


ーーーーー


カナロヴェ:鈍感な人にアピールするにはどうしたらいいですか?

ナリキン:彼女いない歴=年齢のやつになんてことを聞きやがる

カナロヴェ:いいじゃないか。それで、どうしたらいいと思う?

ナリキン:そーさなー


鈍感なやつにアピールねぇ……


ナリキン:いつもと違う態度をとってみたらどうだ?

カナロヴェ:というと?

ナリキン:あれだよ。いきなりそっけない態度をとってみたり、避けてみたり

カナロヴェ:……大丈夫なの? それ

ナリキン:いつもと違う態度によってそいつは相手を意識するはずだ。古事記にもそう書いてある

カナロヴェ:ほんとに?

ナリキン:お前が信じるお前を信じろ

カナロヴェ:それ君を信じろっていってないよね?

ナリキン:だって自信ねーし


経験ないものをどうやってアドバイスしろと……。


カナロヴェ:まぁ、うん。がんばってみるよ

ナリキン:骨は拾わんぞ

カナロヴェ:薄情者



次の日、大学の廊下で汐里とばったり会い、挨拶をした。


「おはよう汐里」

「……」


スルーされた。


「汐里、がんばれ!」


次は一緒の講義になり、班を組むように言われたので汐里を誘った。


「汐里、一緒の班にーー」

「ーー嫌」


即答で拒否された。


「汐里、堪えて!」


講義が終わり、帰りが一緒なので一緒に帰らないかと誘おうとした。


「汐里、一緒に帰ーー」

「ーー絶対に嫌」


また即答で拒否された。そのまま汐里は立ち去っていく。


「汐里!? そんなに辛いならやめていいんだよ!?」


さっきから汐里に声をかけている女子は誰だ……。まぁ友人なんだろうが。頑張れ堪えろ辞めていい……なにをいってるんだ? んー、にしても、おれ汐里になんかしたかね……。わからん。まぁ、こういうときは奥の手を出しますか。

帰宅し、部屋の窓から身を乗り出して汐里に声をかける。


「汐里ー」

「……なに?」


お、今度は反応してくれた。まぁ、下手に遠回しにいってもあれだし、直球で伝えるか。


「駅前の洋菓子屋でシュークリーム買ってきたけどたべーー」

「ーー食べる! 早くこっち来て!」


最後まで言い切る前に承諾された。あそこのシュークリームら汐里の大好物だからな。簡単につれる。俺の好物が把握されているようにお前の好物も逆に把握しているのさ幼馴染みなめんな。とりあえずこれで機嫌を直してもらえば普段通りに戻るだろ。



カナロヴェ:早速チャレンジしてみた

ナリキン:ようやるな……して、結果は?

カナロヴェ:……スッゴい辛かった

ナリキン:お、おおぅ……


まぁ、アピールしたいってことは好意を持ってるんだろうし、そういう態度とるのはつらいわな。


ナリキン:んで、お相手の反応は?

カナロヴェ:それが……


ん? どした?


カナロヴェ:怒っていると勘違いされ、好物を買われて機嫌とられてそんな態度がとれなくなった……

ナリキン:それは……鈍感なやつが強いのか、それとも単にお前がちょろいのか……

カナロヴェ:しっかり、満足のいく数ピッタシでかわれてた。幼馴染みって恐ろしい

ナリキン:なんだ、相手は幼馴染みだったのか。幼馴染みをなめてはいかんぞ。隠し事とかすぐばれるしな


何度隠れてたべようと思ってた菓子を見つけられたことか……逆にこっちも発見してやったけどな!

それからもカナロヴェからの相談は続き、それごとに、汐里が色々な変化を起こした。いったいどうなってるんだってばよ。


ーーーーー


「おう汐里、おかえり。友達か?」

「あぁカナ、ただいま。うんそう、いまからちょっと相談事がね」

「こんにちわ。やっぱり二人ってもう夫婦みたいだね」


帰宅したとき、ふと他の女子と一緒に家に入っていく汐里を見かけ、声をかければその女子からそんなことを言われた。俺と汐里が夫婦?


「あ、茜! いったいなにを!」

「そうだぞ? 俺と汐里が夫婦とかないない」

「むっ、即否定することないじゃないか」

「いやしらんよ。てかお前、俺と夫婦でいいのかよ?」

「そ、それは……」


そう聞くと、汐里は顔を俯かせる。ほらやっぱりいやなんじゃねーか。


「まぁいいや、俺に聞かれたくないことならしっかり窓閉めろよ。聞こえるから」


そういって、自分の家に入っていく。


「確かにこれは強敵だねぇ……」


汐里の友人が呟いたその言葉は、ドアを閉める音によって阻まれ、俺の耳に届くことはなかった。



カナロヴェ:幼馴染みをどう思う?

ナリキン:原点回帰か?


部屋に入って、PCをつけた俺の目に飛び込んできたのは、そんな文字だった。


カナロヴェ:いや、そういう訳じゃなくてね。君には幼馴染みがいるじゃないか。その子をどう思ってるのかなと

ナリキン:ふむ


……汐里をどう思っているか……ねぇ。

少し考えて、キーボードを打ち込む。


ナリキン:仲のいい異性の友人


すると、汐里の部屋からドタドタと音がなった。


「まって汐里ちゃん! 落ち着いて!」

「僕は落ち着いている! でもこいつが、こいつが!」


なんだ? 乙女ゲームが佳境にでも入ってるのかね?

しばらくして、返答があった。


カナロヴェ:そういうことじゃなくて、異性としてどう思うかってこと

ナリキン:なんだ? 偉く踏み込んで聞いてくるな

カナロヴェ:いいじゃんべつに。たまには君が暴露しなよ


こいつの暴露を聞いたことがないんだが……まぁいいか。


ナリキン:異性としてか……ないな


再びドタバタとやかましい音が聞こえてきた。


「まって汐里ちゃん! 早まっちゃダメ!」

「止めないで茜! 一発ぶつけてやらなきゃ気がすまない!」


なにやってんだあいつら……ゲームのキャラに騙されたか? 感情移入のしすぎはいかんぞ。

っと、まだ書き終わってなかったんだった。


ナリキン:俺の中で、あいつはもう家族みたいなもんなんだよな


そう打つと、どたばた音がやんだ。


ナリキン:小学校の頃からずっと一緒で、他の女の子より活発で親しみやすいとかあって、俺の自慢の友達だった

ナリキン:中学にあがって、やっぱり女なんだなって意識することもあったけど、この気持ちは変わらなかった

ナリキン:高校辺りから、彼氏彼女に間違われることもあったけど、別に嫌に思うなんてことはなかった

ナリキン:だから、家族同然の仲のいい友人ってのが……まぁ、一番近い認識なのかね?

カナロヴェ:君は……


ここまで書き終わったあと、俺は先程玄関で言われたことを思い出した。


ナリキン:まぁ、そうはいっても夫婦とかそこら辺はやっぱりないけどな。本人も嫌っていってたし


すると再び、さらに大きなおとで、どたばた音が発生した。


「もうゆるせん! こらしめてやる!」

「流石にゴーサインだすよ汐里ちゃん! あげて落とすとはこの事よ!」


おおぅ……かなり乙女ゲーに夢中になってる様子。なんだ? ひどい展開でもあったか? にしてもうるさいなぁ。

……いままで俺が聞かれてばっかだし、たまにはこっちからいってみるか。


ナリキン:やかましい幼馴染みってどう思う?


「やかましい!」


お前がな。

名前の由来

ナリキン:「金」城 嘉「成」

カナロヴェ:ローマ字にすると「kanalove」……あとはわかるな?

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― 新着の感想 ―
[一言] 彼女に恋する相手が出てきて~はじめて異性として 意識して~とかいう鉄板な定番でもないかぎり、関係が 安定しすぎて発展はしないきがする~(^^♪
[良い点] いいっすねぇ……やっぱり幼馴染みはこうでなくては! この報われそうで報われない……けどほっこりするような関係。 素晴らしいっすね! 是非ともこれからも幼馴染みの作品を……第2弾щ(゜Д゜…
[一言] 爆発しろ でもほっこりした つまりはくっそ裏山スィ…… なんで俺には可愛い幼馴染みがいないんですかねぇ?(血涙)
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