第一章の五
以前――殺される前の私のステータスは神だった。
控え目に言っても神だった。
▴職業
魔王(レベル:100)
▴ステータス
体力:700 筋力:60 魔力:7921 敏捷力:120 運:30
▴保有スキル
闇魔法、空間魔法、禁忌魔法、高速詠唱、超高速詠唱、MP自動回復
そう、たしかこんな感じだった。
数値とスキルだけ思いだしてもいまいちピンと来ないと思うが、私を殺しやがってくれたクロワと同じ四天王の一人にして、フェブリの妹――メディアのステータスはこんな感じだったように思う。
▴職業
暗黒騎士(レベル:70)
▴ステータス
体力:1380 筋力:207 魔力:180 敏捷力:201 運:68
▴保有スキル
暗黒剣技 闇魔法
一見すると私が全体的に劣っているように感じるだろう。
だが、実際はそんな事はない――クロワと戦ったときの様な、最悪のコンディションでなければ、百回やっても百回メディアに勝てる。
それほどに私のステータスは強い。
なぜならば、体力を除いてステータスは普通4桁になったりしないのだ。にもかかわらず私の魔力は4桁になっているどころか、7921という恐ろしい数値を叩きだしている。
最強クラスの魔法使いでもおそらく……そうだな、多めに見積もって400を超えるか超えないかがいいところだろう。
ここまで言えば、生前の私の強さがわかってもらえただろう。
「……なのに」
なのに何なのだこれは。
「冒険者ギルドへの登録完了なのですよ! 職業は魔法使い、無事に職業変え出来たのですよ!」
きゃっきゃと尻尾をフリフリ喜んでいるフェブリ。
一方の私は、体の主導権をフェブリに委ねて傷心中だ。
「……盲点だった」
まさかこんなに弱いだなんて――私の脳裏に流れ込んでくるのは、自分の……フェブリのステータス。
▴職業
魔法使い(レベル:1)
▴ステータス
体力:10 筋力:1 魔力:1 敏捷力:1 運:1
▴スキル
ベビーファイア ベビーサンダー ベビーアクア
やばい、やばい弱い。
弱すぎて涙が出てくる。
おかしい、どうしてこんなに弱いのだろう。
「まおう様! さっきから失礼なのですよ! フェブリも傷つくのですよ!」
「いや、だって貴様……いくら何でもこれは……」
「普通なのですよ!」
普通?
いったい何が普通なのだろうか?
私が「引きこもり部屋」と名付けたここ――フェブリの体の中に存在する心が宿っている場所で、抱えていた頭をあげる。
「まおう様はレベル1からでもステータスが高かったかもしれないですけど、普通はみんなこれくらいのステータスからスタートなのですよ!」
…………。
マジか。
そうかそうか、我ながら自分の特別性を再認識できたな――まぁ、フェブリが弱っちいという根本的な問題は解決していないが。
「フェブリは弱くないのですよ! 普通なのですよ!」
「あ~わかったわかった。じゃあ適当なクエスト受けてレベル上げに行ってみるか」
「納得いかないですけど、わかったのですよ……じゃあ、体の主導権を渡すのですよ!」
こうして、私とフェブリは初めてのクエストに出たのだった。