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第三章の七

「パジャマ、マジパジャ」


『パジャマ、マジパジャ』


「…………」


 ヴィヴィとフェブリが、何かおかしな呪文を唱えている。

 

 フェブリの声はヴィヴィに聞こえないはずなのに、二人そろって同じ事を言っているのは何かの奇跡でも起きているのだろうか。


『正直、これはないのですよ』


 ドン引きなのですよ、まおう様。と、後ろに続きそうなテンションで語りかけてくるのはフェブリ。


「いや、そう言われてもな……」


 なんだ。

 そんなに私のチョイスが気に入らなかったのだろうか。


 あの後、私がヴィヴィのために購入した服は、モコモコとした材質の長袖長ズボン――赤色をベースに、デフォルメされた竜の顔が背中と胸元に描かれたものだ。


 買う時からフェブリは『マジなのですよ!?』と、やたらと私のセンスにケチをつけていたのが気になりはしたが……。


『はぁ……なのですよ』


 改めてヴィヴィに、私が選んだ服を着せてみるとなおの事がっかりしたらしい。

 さっきからひたすら溜息をついている――それこそもう、魂とか色々出ちゃうのではないかというレベルで溜息を吐きまくっている。


 一つだけ言っておくが、私はパジャマを買ったわけではない。


 パジャマっぽい服を買っただけだ。


『メル様が居たら、言い訳乙って言いそうなのですよ……』


 えぇい、うるさい! 

 フェブリの奴、最近私に対する扱いが雑になってきている気がする。


 私がフェブリに文句を言おうとした瞬間。


「首輪は?」


「『!?』」


 二人そろって……と言うとまたしても語弊があるが、二人そろって首を傾げる私とフェブリ。


 私達が黙って先の発言主を見つめていると、その発言主ことヴィヴィは言うのだった。


「服はこれでいい……でも首輪がないのだぞ?」


 どこまでも澄んだ瞳で、邪なものなど感じさせない美しい声で言う。


「ペットには首輪が必要なのだぞ?」


 この日。

 ヴィヴィはペットじゃないと言い聞かせるのに、またしても膨大な時間を使う事になるのだった。


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