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第2話 : 『ちょっと待って、触らないで下さい』

 あれは、10年以上も前の事であったであろうか。


 私は、従業員700名位の中堅企業? のサラリーマンである。

入社以来、どちらかというと、技術畑を歩んでいた。

製品、売り上げの浮き沈みも激しく、会社としては、時には、ある製品に傾注しなくてはならない状況も出てくる。私もそれは熟知していた。


 ある日突然、製品拡販の為には、『プレゼンテーション』が重要である。

そんな言葉が重要視されはじめた。現在で言えば、当たり前の『プレゼン』である。

社内では、当時、各部署でバラバラの仕様で作成していた。


 私の担当していた製品にも陰りが見え始め頃、技術担当であった上司から、

「我が社の製品拡販のため、現在の君の業務、才能? の半分位を……、手伝ってくれないか? 」と、(口ばっかりの『白羽の矢が立つ』との内容だった)


 私は、その時、どの様な仕事・業務? なのかなと思いつつも、

「こんな私が協力できるなら」と思い承諾をした。

今で言えばそれは単なる『パワポ』のまとめである。


 そして、従来の業務の半分以上の時間が、拡販戦略部長の元での仕事になった。

その部長は、社長、取締役等との繋がりも厚い人であったが、全く威圧感もなく、むしろ私の方から

「こんなんで、いいのですか? データとちょっと違うと思いますが? 」と言うと、

「なるほどな、君の言っている事は解る、じゃぁ、ちょっとここ修正しようか?……。

ところで、今日、この案件が終わったら、時間あるのか? ちょっと飲みにでも行こうか! 」と、どっちが上司? なのか。


 今でも思うが、部下が思う以上のプレッシャーを、上司は受け止めていただろう、毎日が社長、重役等との折衝を繰り返す日々。

私は、そんな上司の心のオアシス? だったのかと思うと、正直なところは、嬉しい。


 ちょっと話が外れてしまったが、私のこのプロジェクト? の目的は『プレゼン』のまとめ、

「各々の部署で、独自に作っていた物を統一し、フォーマットを決め、我が社の作成基準、管理方法……等を作りあげる事」である。

 いろいろな方々のご苦労、ご協力、……等、紆余曲折ではあったが、纏める事が出来た。社内の皆さん協力で作り上げて頂いた『社内での規格』のもと、社内ノウハウ? なるもの? が出来上がった。


 そんな中、社長から上司へと。それは、

「今度、某会場で、我が社の製品(技術)を発表する事になった。いいプレゼン資料を用意してくれ」との内容だったらしい。

私は徹夜も惜しまず、頑張っていた。


 すると数日後、原案、ストーリー、が完成。なかなかの出来栄えある。

社長からの

「観てみたい」とのお言葉もあり、『プレゼン』の内容確認の依頼が……、資料も万全であった。


(そもそも、『プレゼン』とは、その作成者ではなく壇上に立つ、つまりスピーチする人が、その内容を全て自分のものとし理解し、聴いて下さる人達の前で、堂々とアピールする事が最も重要である。……と思っている。ちと、堅い口調になってしまい、申し訳ありません)


 そして、いよいよ社内で社長の前での最初の『おひろめ』リハーサルである。私は、今回のミッションは従来と違い、日本国内、いや海外の方達も来場する場である。私自身も緊張していた。

上司は、既に社長用に文言を並べた文章を作成していた。


 *


「このタイミングで次のページに移りますから」と、上司との念密? な最終打ち合わせ……等々。

 私は発表当日その場には、居られない立場。

(正直、その上司は、パソコンをあまり知らない、普段は社内メールの遣り取り位である。社長のプレゼン中に何か不慮のパソコン上でのトラブルでもあったら、恐らく支離滅裂になってしまうかもしれない、という不安もあった)


 私は、このプレゼン

(私に取ってもそうだが、大きな舞台で社長に恥を掻かせる訳にはいかない)、社内の中でも最も大きな会議室でリハーサルの準備をしていた。パソコン、プロジェクター、セッティング、色調整・・・等々。その最中に、上司が入って来た。


「もうすぐ社長が来るからね、大丈夫かい? 」いつもの口調である。

 私は、「えっ 」 と思ったが、

「はい、解りました」と。

まだ、もう少し調整したい部分が残っていた。

私は、

「何? このプロジェクター!!、自分が思ったいた色彩が出せない」などとも。

その後も、パソコン、プロジェクターと悪戦苦戦、駆使してみたが、納得は出来ていなかった。


 そんなこんなで、私自身、ある意味(パニック状態)だった。


 すると、私が最終調整をしている中である。

何か、パソコンを『カチャ、カチャ』と、

私は、てっきりあの上司かと思い、

「ちょっと待って、今は触らないで下さい! 」と口走ってしまった。

 

 それはそれは、大失言であった。

「あっ、ごめんごめん」との声、

少なくともその声はあの上司のもでは無かった。

それは、プレゼンを見に来た社長の言葉であった。

私は、今まで、会話等した事もない社長に、なんて失礼な言葉をと。


 それから、上司と社長の会話も弾み、社長自ら、私に

「ここ、こんな風でもいいんじゃないか? 」と。

嬉しい限りであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 私は出席出来なかったが、無事、その講演会は終わった様である。

私も、社長の堂々とした姿を観たかったが、そして、上がり性の我が上司の姿も見てみたかった。


 でも、無事終了した事が、一番の朗報であった。



 読んで頂いた方、ありがとうございます。

『本話作』がらみの続編は、まだ、2.3話続く予定です。あくまで、超短編集ですが、空いている時間に『ホッ』とな一瞬を届けられれば『いいな』と思っています。

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