第六話 無能対無敵
第五学区に流れるニュース
何と、五学区入り口付近にて不法侵入者が徘徊するという
目的は未だ不明
この凶報が五学区全体に流れていた・・・
「どうすんだよ?俺等の事はもう知られてるらしいぜ?」
「心配ない、ここからは別々行動、お前はこいつを始末してくれ」
「あいよ・・・あぁ?誰だコイツ?」
写真を受け取った究極念動は写真の人物に覚えなど無かった
想像しているのは、五学区の誇る天災生第五位『月妖鏡惑』
そう、東北高校生徒会長の漆粟であった
「天災生じゃないとして、優等生か?悪いが雑魚を相手にするのは好きじゃねぇ」
とは言うものの
究極念動の力は、天災生の中でも群を抜いている
能力値の限界が5というだけで
彼はそれ以上の能力値と言っても可笑しくは無い
つまり、彼にとって
全ての学生の能力は無力に近い物になる
「それは少し残念だな。そいつは八学区の中でも少数しかいない無能生だ」
その言葉を聞いて
一瞬呆気に取られて
究極念動はその場で馬鹿笑いを始める
「・・・っはっはっはっはっはっはっはっは!!!」
そして、笑いが収まると
コートの男の胸倉を掴んで
紅い眼を光らせ睨みつける
「てめぇ!あんまり俺を安く見てもらっちゃ困るぜ!自慢じゃねぇが俺は八学区じゃ気が短いのでも有名でな。お前なんかこの状態でも肉塊に出来んだよォ!」
究極念動が動く理由
それは、自分と対等な立場として殺し合いが出来る存在
彼の能力は強力すぎる
研ぎ澄まされた精神力と尋常ではない速度で行われる脳内演算
脳に埋め込まれたプログラムチップはそれに反応し
彼に『究極念動』という名前と力を与える
「分かっているさ、だが甘く見ない方がいい。この少年は彼女の研究の実験動物。つまり、その少年には能力を無効化する技術を持った何かがある」
「能力を無効化?はっ!信じられないな、科学者は本来能力の開発に努めるモンだ。それが、自分から使えなくしてどうするんだ」
「言ったろ。その少年は能力値0、正真正銘の無能生だ」
「・・・けっ面白ぇ、だったらその餓鬼の首ちょん切ってテメェの目の前に放り投げてやるよ。余りのグロテスクさに吐くんじゃねぇぞ」
競技『クラス対抗球入れ』
これだけ聞けば、運動会や体育祭でもよくやる競技だが
学都の玉入れは少し違う
「喰らいな!発火制御『火球炎弾』!」
2-Aクラスの上等生が発火系列による炎弾攻撃を仕掛ける
その先にいるのは、優等生であり生徒会会計の浦島兵賀
「はっ!無駄だ!吸熱氷結『剛氷水壁!』
突如として現れる氷の柱
それは炎弾を防御するだけではなく
相手の能力者の地面からも現れ攻撃する
「っ!ぐあああ!!!」
「そんな攻撃じゃ俺は倒せないぜ・・・」
学都での玉入れは
能力を行使用いても良しとされる
ルールも少し違う
相手の籠より玉を入れる
相手のチーム全員を気絶もしくは能力解除させる
つまり、玉を入れるか相手を倒すかという勝負であった
「兵賀の奴、頑張るな~」
先程の剛氷水壁を見て
友人の生存を確認する乱太
因みに、乱太自身は能力が使えない為
能力の流れ弾に当たって颯爽に退場する
現在、観客席にて競技を観戦中
「(受けた時は死ぬかと思った・・・)」
昼の競技が全て終わり
乱太は昼食を取る為に外の出店へと向かう
「ふむふむ・・・色々あるな」
何を食べようか迷っている乱太に
衝撃的な印象を与える一品が目に入る
「っ!これは、余りの微妙さに売れ行きが怪しいと言われる、学都の『カレーそばめしパン』!」
そう
乱太の眼に入ったのは
カレーの香りが漂う、茶色の物体
ロールパンに挟まれたのは、カレー粉で味を付けられた焼きそばとご飯
炭水化物の三乗という
肥満児にありがちなこの食べ物
しかし、一度食してみたかった乱太はこれに好奇心が沸いて仕方なかった
「おばちゃん!これ一つ!」
「あいよ、百五十円ね」
会計を済ませ
近くにあったベンチに座ってパンの包装を破く
そして、食欲に任せてカレーそばめしパンを頬張った
「・・・うん、俺は結構好きな味だ!」
何という微妙な反応
人を選ぶこの味は万人受けされず
購買やパンの店などでも時折にしか顔を見せない
そうして、昼食を済ませて
会場に向かおうとすると
近くで激しい破壊音が鳴り響く
「っ!一体何が!」
乱太は原因を解明する為に
音がした方向へと走り出す
乱太が着いたのは
会場の近くにある廃棄ビル
「・・・ここで一体」
「よう、五学区の無能野郎」
「っ!さっきの衝撃はお前か!」
廃棄ビルの傍から乱太に声を掛ける紅い眼の男
身長は華奢で乱太の168cmより低い
しかし、黒髪の肩に着くか着かない程度長さの髪によって見え隠れする眼
その眼には、会ったばかりの乱太も恐怖を感じる
「あぁ?なんだ、今日は俺の事を知らねぇモグリによく会うな」
「まさか、ニュースでやっていた不法侵入っていうのは・・・」
「正解だ。俺が片棒担いでんだけどよ、俺の目的はお前。もう片方の目的はお前の近くに居るっていう女だ。知り合いに学生の癖に科学者ってのがいるだろ?」
「っ!?棟子の事か!お前等棟子に何をする気だ!」
怒気の含んだ叫びを受けて尚
動じもしない究極念動
面倒くさそうに頭を掻いて、地面を力の籠もった拳で殴りつける
すると・・・
「な!地面が・・・割れていく!」
殴った場所から
乱太の居る場所目掛けて地面に亀裂が走る
「言ったよな?・・・俺の目的はお前だ。女がどうなろうが俺には関係ねぇ」
「くっ!」
亀裂が入る地面に挟まるのを回避する為に
乱太は、持ち前の身体能力を駆使してそれを跳躍して避ける
「ふぅ、何が目的か分からんが、お前がアイツに危害を加えるなら、俺はお前を止める!」
その挑発的な言葉に
究極念動は大きく口角を吊り上げる
「いいねぇ、今まで俺の名前を聞いてそんな台詞吐いた馬鹿はいねぇ!俺の名前は究極念動。八学区内の天災生の第一位だ」
「・・・第一位だと!」
「どうした?女を助けるんだろ?ここで怖気着いてちゃ話にならねぇぜ!」
「・・・第一位だろうが関係ない、俺はアイツや友達に手を出す奴は許さない!」
「最高だ!お前最高だよ!今最高の気分だからよぉ!礼にお前をお前と認識出来ない位に細かく磨り潰して、大量の挽肉にしてやるよ!」
腕の転送ボタンを押す乱太
両手の指を動かして肘を後ろにやって肩甲骨を寄せる究極念動
「てめぇを倒す!」
「お前を殺す!」
乱太は転送されたブレイズカノンの武装
ブレイズスラッシャーで斬りかかる
究極念動は、念動力を使って高速移動
乱太(標的)に向かって一気に接近する
第六話 完




