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学都戦記  作者: ガンマニ
4/10

第参話 堕落(ロスト)

乱太、棟子、遥が話をしている日の前日


PM8:26


夜の学都で帰路に着く学生が居た

恐らく、塾帰りで遅くなったのであろう

一人で夜の外という状況もあって、学生は急ぎ足で自宅へと向かう

その時であった・・・


「よお兄ちゃん、あんたどこの学校行ってんの~?」

柄の悪い団体が現れ、学生を囲んで逃げ場を失くす


「あぁん?こいつ、震えてやがるぜ!カッコわり~!」

ギャハハハ、と品の無い笑い声を挙げる不良達

「あ、あの見逃してくれませんか・・・」

「ん?別にいいよ?但し、勘弁して欲しかったらやり方あるでしょ?」

学生は鞄から財布を出して不良達に手渡す

「・・・んだよ、二千円ぽっちしか入ってないじゃん」

「ウチ、お金の貸し借りで厳しいからママがお小遣いくれなくて」

「・・・ぷっははは、そうか!ママも大変だな~・・・おらぁ!」

バキッ!

財布を受け取った男は学生を蹴り倒して

道路の段差にぶつかった

「って、こんなはした金で何とかなると思ってんのか!」

「ひいぃ!許して!」

「大体よ、お前も能力使える学生だろうが、ちょっとは抵抗しないとこっちが面白くないだろ!」

学生の能力値は2

普通生の能力など、精々肉体強化や物を使ったちゃちな自然系能力くらいの物

ここにいる大人数を相手にするには余りにも手札が少ない

学生は多勢に無勢と感じて黙っていた

「まあいいや、リーダー!こいつシメますか!」

学生に暴力を振るっている不良がそう言うと

物陰から一人の男が現れる

「太陽の兄貴!こいつ金も無いし抵抗もしなさそうだ」

「そうか、放っといてやれ、能力も無い上につまらない野郎だ」

「分かりやした、いいか兄ちゃん、ウチのリーダーは器がでけぇ、見逃してやっからとっとと行きな」

「は、はいぃ!」

学生は鞄を抱きかかえてさっさと走っていった

「・・・いいんですかい?」

「構わねぇよ、むしろ、あんなの相手にしてるとこっちが恥ずかしいぜ」

「それもそうだ!」

あっはっはっは

周りにいた不良は笑っている

しかし、太陽と呼ばれたリーダーは凄く退屈な顔をしていた

「(渇く、やっぱりこうなっても俺の人生は渇いたまんまだ、これじゃ意味が無いじゃねぇか)」

――――――――



放課後・・・


不良グループ撃退の為

生徒会一同は科学研究部にて話し合っていた


「まず、彼等が狙うのは真面目な学生、そこはいいね?」

棟子はホワイトボードに要点を纏めながら喋る

「問題は何故学生を狙うのか、聞いたら彼等に襲われて何もされなかったという人もいる」

棟子の言葉に乱太は手を挙げて喋る

「どういうことだよ、目的があって襲ってるんじゃないのか?」

「どうやら、目的にそぐわない相手に対しては何もしないらしいよ、今時変わってるね」

ハイ、と行儀良くもはっきりとした声で

次に手を挙げたのは、昼間に宣言をした遥であった

「早速ですが、不良グループに対しての対処法を説明したいのですが・・・」

「いいよ、ちょっと早いけど、早期解決に越した事は無いからね」

棟子の隣に来て話し始める遥

内容をまとめると・・・


「まず、風紀委員である新村君が囮兼撃退の為に一人で行動する。グループの全滅及びリーダーの確保が確認できた時点で新村君はその場を離れ警備隊(ガードナー)に連絡する事。何か意見は?」

遥の言葉に当の担当者である乱太が意見する

「・・・そいつら、通報して突き出すのか?」

「・・・当然です。彼等は曲がりなりにも犯罪を犯しています。それとも、貴方は彼等を更生させ、以降悪事を施さないように出来るのですか?」

遥の言葉に兵賀は反論する

「だけどよ、幾らなんでもそこまでしなくたって・・・」

「何ですか会計の浦島君、君は立場上最も低い上に能力はともかく、学科テストではこの中で一番低いじゃないですか、そんな曖昧な発言なら自重してください」

「くっ!」

「まあまあ、仲間同士で仲間割れなんてしないでよ~」

遥と兵賀の間に入る棟子

乱太は遥に思っていることを告げた

「・・・午前中にも言ったけどさ、俺が動くのは、別に強制されて行く訳じゃない」

「はっ!言われた事も出来ない貴方が何を偉そうに・・・」

「確かに、俺は言われた事すらまともに出来ない落ちこぼれだよ、否定はしないしする気もない」

「だったら!」

遥の気持ちとは裏腹に

乱太は自分の真意を伝える

「でも、誰かの・・・支えとか・・・手伝いくらいは出来るようになりたい!」

遥の目を見て真っ直ぐに答える

すると・・・

「な、何を世迷言を!」

急に赤くなって顔を逸らす遥

ごほん、とわざとらしく咳をつき乱太に向かって喋る

「と、とにかく!これは貴方の仕事でもあり会長の命令でもあります。しっかりやってくれなければ困るという事を再度確認しておいてください!」

「分かってるよ・・・」

それでは、と

会長がソファーから立ち上がり服を取り出した

「乱太君、お着替えの時間ですよ♪」

乱太はその言葉に耳を疑った


「・・・はい?」

――――――――――


PM 7:47分・・・


乱太は学都の道路にいた

服装は制服

度の合わない厚めの眼鏡を付けて

真面目な学生を装うかのように広辞苑を持ち歩いて行動していた

――――――――――


科学研究室にて・・・


乱太の様子を見守る棟子

・・・と、何故か居る遥

「遥ちゃん、別に帰っていいんだよ?」

「い~え!あの男が逃げだして仕事を放棄しないか監視しているんです!」

もしかして、と棟子は遥を見ながらニヤニヤ笑う

遥は不気味な笑い方をする棟子に動揺する

「な、何か言いたいんですの?」

「遥ちゃんさぁ・・・もしかして、乱太君に一目惚れとか?」

遥はそれを聞いた瞬間

耳まで真っ赤にし、口をぱくぱくし始める

「ば、馬鹿な事仰らないで下さいまし!べ、別にあんな無能な役立たず、男性として見るに値しない上に、私は恋愛なんて物に興味は無いんだから!」

ふ~ん、と言いながらも終始顔がにやけている棟子

「そっか~いや~乱太君も隅に置けないな~」

「だから!違うって言ってるでしょ!」

「別に照れなくてもいいじゃん~まあ~乱太君確かに顔は悪くないしね~結構男らしくてカッコいい部分も~・・・ねぇ?」

「し、知りません!誰があんな口だけ男なんか・・・」

「それは違うよ、乱太君は口だけじゃないし、遥ちゃんみたいに可愛くてスタイルの良い女の子が好きになってmおぶえ!」

「違うと言っているでしょ~~~!!!」

遥は棟子を頬を両手で掴んで伸び縮みさせる

「(皆なんで私の顔をイジりたがるんだろ・・・)」

そんなに面白いのかな?

棟子はそう考えていた

――――――――――


その頃乱太は・・・


「(・・・いる!後ろから着いてきている・・・数は)」

背後からの気配に気づき、建物の曲がり角に差し掛かる辺りで猛スピードで走る

「っ!気づかれた!」

「追え!」

複数人の不良グループが乱太を追う為、一斉に走り出す

しかし・・・

「ぐはぁ!」

一番最初に曲がり角を曲がった男は、何者かに蹴り飛ばされていた

「どうした!・・・てめぇ一体なんだ!」

不良の一人が安否を確認しながら蹴った人間を見る

「どうしたって?いやぁこんなにストーカーさんがいると僕ちん怖くておしっこちびっちゃいそうだわ」

「フザけんなゴラァ!」

「いやさ、おしっこしようして足上げたらそこに居る人をポーンと」

「ボール感覚で内の仲間蹴りやがって!野郎共!やっちまえ!」


「「「おおおおおおおお!!!」」」


一斉に現れる不良達

その数は見ただけでも十数人

「・・・話と違くねぇ?」

「死ねやああああ!!!」

不良の一人が乱太に拳を振るう

だが・・・

「よっ!」

乱太はそれを軽く避けて、そのまま背負い投げで投げ飛ばす

「さあ、次は誰が来るのかな?」

「「「うぅぅ・・・」」」

不良達はどうやら乱太に対して

暴力では勝ち目が無いと踏んで怖気づく

そこに・・・

「俺がやろう・・・」

「兄貴!」

「照山の兄貴!」

不良達の声で乱太はハッと思い出す

「お前が照山太陽か?」

「ああ、どうやらそっちにも情報が流れているらしいな・・・」

「何でこんな事、お前の目的はなんだ!」

「・・・つまらないんだよ」

「え?」

太陽は俯きながら呟くと

乱太に向かって叫び始める

「学校なんてクソ喰らえだ!周りの奴等は俺を見下す!それ所か、教師自体が俺自身を見下しやがる!気にいらないんだよ、たかが能力で一々順位決めやがって、何様のつもりだ!仲の良い奴は段々俺と喋らなくなって、しまいにゃ俺を囲んで陰湿な袋叩き・・・イジメにまで発展しやがる」

「・・・・・・」

乱太は黙ってそれを聞いていた

「だから俺は、そいつらを能力を使って黒焦げにしてやった。そしたらよ、糞窮屈な首輪なんか嵌めやがる!もううんざりだ!俺は、能力なんかで一々縛り付けるアイツらが憎くてムカついて仕方ないんだよ!」

「・・・・・・・」

「俺が何をした!俺が何か言ったか!何もしていない!何で俺があんな目に遭わなきゃいけねぇ!」

「・・・それでもだ」

「・・・あん?」

「それでも、お前はまだやり直せる!」


乱太は太陽に対し

目を逸らさず、真っ直ぐ眼を見て叫んだ

彼の理不尽を・・・

彼の闇を・・・取り払うかのように


「いいぜ・・・久しぶりに滾ってきた。俺とやろうぜ、お前が勝ったら何でも言う事聞いてやらぁ」

「・・・約束する、俺は逃げない!」

「いいねぇ、男前のスピリッツ感じるぞ・・・おめぇら!」

「「「うっす!」」」

不良達は太陽の言葉に返事をする

そして・・・

「コレは俺とこいつの一対一(タイマン)だ。邪魔したら・・・ぶっ殺すぞ」

「「「うっす!」」」

「・・・いい仲間がいるじゃないか」

乱太は笑いながら太陽に言う

「・・・御託はいい、行くぜ!」

そう言うと

太陽は懐からライターを取り出し火を点ける

そして・・・

「俺の能力は分かってるだろ?・・・これが俺の燃える拳だ!」

ライターの火を右手に当て、炙るかのように焦がしていく

すると・・・

「・・・手に炎が!」

「俺の発火制御は単純かつシンプルでね、こうやって炎を体に移す事が出来る」

右手で燃え盛る炎が今度は右足に移る

「名付けて『火炎拳脚(バイオレンスバーナー)』、俺は自在に炎を操り炎でボコる。文字通り炎の暴力だ!」

太陽は走り出し、乱太に向かって燃え盛る蹴りを放つ

乱太は間一髪避けるが、掠った眼鏡が落ちて熔けていく様を見て恐怖する

「言っとくが、こいつの温度は千度近くだ、掠っただけでも相当熱いだろ?」

見ると、乱太の掠っていた髪の毛が(すす)になって零れ落ちていた

「てめぇ・・・バンダナに当たったら危ないだろうが」

「っけ!まずはよ、テメエの心配をしやがれ!」

今度は顔に炎を移し、一気にジャンプする

どうやら頭突きを決めるらしい

「(あれを受けたら流石にマズイ!・・・仕方ない!)」

乱太は預かっていた腕時計のスイッチを片方押す

すると・・・

「・・・あぁん!?」

乱太の変化に気づいた太陽はそれを見て驚く

何故なら、さっきまで普通の制服を着ていた乱太は

ゴテゴテとした鎧のようなコスプレを身に纏っていたからだ

「喰らえ!」

そう言って、乱太は太陽に対し拳を振りかぶる

―――――――――


ブレイズの状態は基本的に近接・中距離型の装備で

武装として、能力遮断・防御性能が一番高い『ブレイズイージス』という大型の盾

殺傷能力を調整できる『スタンライフル』

そして、近接武器である『ブレイズイージス』に収納された大剣『ブレイズスラッシャー』

装甲自体に能力遮断とかなりの強度を誇る素材が使われている為

鎧を身に纏うだけで能力者に対して絶大な効果が見込める

――――――――


そして・・・


宙を飛ぶ長身の太陽

態勢は変えれず、依然として頭突きの状態である

バキッ!

乱太は太陽の頭突きを盾で殴り返す要領で弾き飛ばした

「ぐはあああ!!!」

突如の事態と余りのダメージに

太陽は地面に倒れ落ちる

「く・・・そっ・・・なんだそりゃ」

「俺の友人が造ってくれた物さ」

「・・・滅茶苦茶だぜ」

バタリ、と倒れる太陽

すると・・・

「いいなぁ」と呟いて、続けて喋りだした

「俺にも、そんな友達欲しかったな、最後に出来た友達には裏切られちまったしよ」

呟くようにそう言う太陽に

乱太は武装を解いて、太陽に手を差し伸べる

「・・・いるじゃねぇか、あんなに一杯」

「・・・あん?」

太陽が起き上がり

見た先には・・・

「兄貴ぃ!」

「負けないでくれ!」

「例え兄貴が辛くても、俺たちがいるっす!」

太陽の不良グループの仲間達が

彼の為に必死に叫んでいた

「・・・てめぇら」

太陽は思わず、涙を零していた

「・・・お前の欲しい物ってさ、既にお前の中にあったんだよ」

「おめぇ!何こっ恥ずかしいことを言いやがる!」

「それにさ、これからでも人生を変えていけばいいじゃん。大丈夫、俺も着いてる、あいつ等も着いてる、お前が諦めなければ、幾らでも道はあるんだ」

「・・・っは!言ってくれるぜ。お前、名前は?」

「新村、新村乱太だ」

「乱太か、変な名前して中々男気あるじゃねぇか」

笑いながら手を掴む太陽に

「うるへぇ」と言いながら乱太は手を引っ張ってやった・・・

―――――――――


後日・・・


学区内における不良グループによる暴力事件は無くなった

聞けば、彼等は自ら罪を認めて罰を受けてこれからは更生し、社会に貢献する為に頑張っているらしい

そんな情報を耳に入れて

今日も、バンダナ男は笑顔で学校へと向かう



第参話 完

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