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学都戦記  作者: ガンマニ
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第九話 天使(ニイムラランタ)

「なあ光圀、乱太を知らないか」

「奇遇だね。僕も探していたんだよ」

席で合流する光圀と兵賀

「全く、ああいう人間は本当に・・・」

ふわっと揺れる緑の長髪

新たに現れる一人の女性

「遥・・・お前も乱太を?」

「って違います!別にあんな男なんか・・・」

「そういえば、会長と正宗君もいないね」

「何かあったのかしら・・・心配ね」

三人は、自分達が心配する以上の出来事が起きている事に

気づいてはいなかった


「・・・ぐああ」

「もうやめようぜ、こんな事に意味はねぇ」

会場近くのビル付近

ボロボロに荒れた道路

全壊したビル

置いてあった木材や鉄パイプも殆ど壊れている

そこに居るのは、究極念動と言われる天災生第一位

そして、未知の可能性を秘めた白翼の男

背中に翼を宿す・・・無能生

「・・・てめぇ、名前は」

「・・・新村乱太」

「新村か・・・しょぼい名前に似合わねぇ力だ」

「・・・ほっとけ」

ばさっと、翼をはためかせ

乱太は空へ飛翔する

「俺は行く、お前は逃げろ」

「・・・けけけ、ここじゃあ、屑共が俺から逃げても、俺が逃げる事は無いぜ」

「・・・なんていうか、お前って俺と似てる気がするんだ」

「・・・あん、どういう意味だ」

「別に、先を急ぐ、またな」

びゅっ!

一気に翼で反動を付けて、高速で飛行する乱太

それを見て、小さく笑みを零す

「またな、か・・・まるで、また会うみたいな言い方しやがって」

服に着いた埃を手で払いながら、究極念動は立ち上がる

ズボンのポケットに手を突っ込み、第五学区を立ち去っていく

「・・・次会ったときは、てめぇを殺すぜ」


「棟子・・・君を攫った理由は解ってるよね」

「・・・私の研究成果を奪うとか、テンプレートな事言うんでしょ」

「つくづくお前には腹が立つね。彼が来る前に殺すよ?」

懐からナイフを取り出し、棟子の首に突き立てる

「・・・最低な兄ですよ貴方は、実の妹に刃物を突き立てるなんて」

「おやぁ?それは命乞いかい?」

「っぺ!」

ぴちゃ

吐いた唾は、健次の頬へと付着する

拭いた手を凝視すると、額に血管を浮かべた健次は

棟子の顔にナイフを掠れさせる

「つっ!・・・」

「・・・もういい、まずは君を殺そうかな。どうせアイツが来る事は無いだろうしな」

「彼は・・・乱太君は絶対来る」

「何故そう言い切れる?所詮は無能生。役立たずにどれだけ期待しても価値は無いさ」

冷たい言葉・・・

心に突き刺さる感触すらしてしまう、残酷で冷徹な痛み

しかし・・・

「・・・私は、彼を信じています」

棟子の眼は、強く輝いていた

「なんだその眼は・・・なんだと言うんだ!」

そして、少女の強い想いに応えるように

一閃の光がタワーの頂上に差し込んだ


パリィィィン!!!

窓をぶち破り、天使は颯爽と駆けつける

「・・・きっ貴様、一体誰だ」

「よう、返しに貰いに来た。ウチのマッドサイエンティスト」

「・・・遅いよ。私の可愛いモルモット」

大きく羽ばたく翼・・・

健次はその姿に、心の底から恐怖する

「・・・天使・・・だと」

「お前か、天災生第一位を雇って、事件起こした奴ってのは」

すると、すかさずナイフを握り締め、棟子の首元へと突きつける

「うっ動くな!動いたら殺すぞ!」

「・・・お前、そいつの何なんだよ」

「ふん!まさかそんな能力を持っているとはな・・・教えてやるよ、こいつは俺の妹だ」

「・・・何?」

「正宗健次、私の兄だよ」

それを聞いた瞬間、今まで静かにしていた乱太の眼に変化が現れた


「・・・貴様、何故泣いている」

涙を・・・流していた

「悲しい・・・こんなに悲しいのか、兄妹同士でそんなの・・・あんまりだ」

「・・・ふっふざけるな!」

「まだ・・・やり直せるんだ。諦めるなよ・・・」

「もう遅いんだよ。後戻りなんか出来るかあああ!!!」

突如、乱太に襲い掛かる右脚の脚払い

「・・・大丈夫だ」

「何っ!?」

健次の脚は乱太を攻撃出来ず

代わりに、乱太の左翼が蹴りを受け止めていた

「お前達を・・・絶対に救ってみせる」

「何を・・・おわっ!」

「だから・・・少し我慢してくれ」

ガスッ・・・

健次の脚を払い、右拳が腹に決まる

「がはっ!」

「・・・うら!うら!うら!うら!うら!うら!うら!ウラァ!!!」

拳の連撃・・・

左右放たれる豪腕により拳

「・・・ごはっ!」

「これで・・・どうだあああ!!!」

空中で回し蹴り・・・

更に、翼により強打が健次を吹き飛ばす


断末魔を挙げる事も無く、健次は壁へと激突し、気絶する

「・・・ごめんね乱太君、世話掛けさせちゃったね」

「今更だろ。それに・・・こいつを何とかしないと」

一歩ずつ歩を進めて、健次の元へと歩み寄る

「・・・アンタ」

「なっなんだよ・・・」

バキッ!

「げふっ!」

「・・・間違っても妹にナイフ向けんじゃねぇよ。兄妹はそんな事の為にあるんじゃねぇ」

「・・・くぅ、こいつは・・・俺から全てを奪った!」

「棟子はそんな事をするような奴じゃない・・・それに、アンタ人殺しはしていない筈だ」

「それが・・・何故それを」

究極念動(あいつ)だってその辺は弁えている。あいつは命を簡単に奪えても、人は絶対に殺すような男じゃない」

「・・・それは貴様の思い違いだ。奴はあの力を手に入れる為に何百、千人という人間を殺してきた」

「それでも、人間はやり直せる」

「貴様のそれは綺麗事だ。綺麗事で人が救えるなら、俺はこんな事をせずとも・・・」

自らの苦悩を嘆く男に

天使は優しく、手を取った

「・・・そうだ。これは綺麗事だ・・・でもさ、人間、綺麗事が一番じゃないか」

「・・・確かにな。はは・・・自分のやってたきたことが急に虚しく感じる」

「やり直せるさ・・・人間はいつだってそういうものだからな」


後の話、健次は自ら罪を認め、監獄に入った・・・

だが、乱太にとって、健次という存在は、自分とは違う他人のようにも思えなかった

かつて、憎んでいた兄が、自分にもいたように

嫉妬という闇に狂ってしまった健次は、昔の乱太自身に・・・よく似ていた


第九話 完



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