空回りな
――プルルルルル
電話が鳴る。
誰からの電話かは画面を見なくてもすぐ分かる。そう思いながらも、電話を耳にあてた。
「・・・佐織さん、どうしましたか?」
「彰君ごめん、今日行けそうにないや・・・。」
「いえ、無理言ったのはこっちですから、気にしないでください。」
「そう・・・ごめんね。」
――プチッ
さよなら無しに、電話が切れる。
佐織さんが来れないことを知っていながら、無理に誘った。
もし来てくれたら、このモヤがかかったこの気持ちもすっきりすると思ったからだ。
すっきりするはずないのに・・・。
今日は、佐織さんとあいつの結婚記念日。
だから誘った。
あいつに勝ちたかった。
あいつは何でも出来るヤツだから、業績でも、運動でも、勉強でも、何でも良いから勝ちたかった。
勝ちたいが為に、高校からあいつと付き合ってる佐織さんにも手を出した。
・・・筈だったのに。
「・・・馬鹿すぎるだろ・・・俺・・・。」
気づくのに遅すぎたんだ。
本当は最初から、最初から・・・