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 さて、王になったザムザであるが、新しい王朝も臣下たちが働いてくれるおかげで順調に統治されていた。蒼竜ボルグの加護のもと王ザムザが統治することに、異論を出す者はいなかった。

 だが、ザムザは王としてするべきことを蒼竜ボルグに聞いたところ、古代竜には挨拶しておいた方が良いということになった。古代竜というのは、とても古くから生きている長寿の竜の総称で、特にどの竜を指すわけでもないのだが、めったに姿を現さず、竜たちの間でもその存在は半ば伝説となっていた。蒼竜ボルグは、古代竜チュルクだけは知っているので、ザムザを古代竜チュルクのもとへ連れて行くことにした。

 蒼竜の背に乗ってザムザは空を飛んで行った。山をいくつも越え、ドラゴニアの端を越えた辺りに古代竜チュルクの巣はあった。

 ザムザは、壊れかけた巨石神殿にたむろす古代竜チュルクに話しかけた。

「初めてお目にかかる。古代竜チュルクよ。おれは新しく竜の国の王になったザムザである。博識な見聞をもつというあなたに王として生きるにふさわしいお話を聞かせていただきたく参った次第である」

 すると、古代竜は、眠たげな目を開いて、ザムザを見た。そして、蒼竜ボルグを見た。この巨体の竜の加護を得ることができれば、新王朝ボルグは安泰だと思われた。しかし、古代竜は、ボルグを睨みつけ、あまり意にそぐわないそぶりを見せた。

「古代竜チュルクよ。王国はわしが一人で始めたものだ。わし一人で運営しよう。だが、この若い小僧には、一度、この世界の歴史を知っておいてもらった方が良いと思う。あなたが何を話し、何を話さないかは関知しないが、どうかあなたの叡智をこの小僧にくれてやってほしい」

 蒼竜ボルグが頼むと、古代竜はぶおおおと火を吐いた。ザムザが恐れて立ちすくんでいると、古代竜からお話を聞くことができた。

 古代竜が語ったのは、意外なドラゴニアの逸話だった。

「わたしが卵からかえった時から、この大地には竜がたくさん住んでいたが、その長い歴史の中でいちばん印象的なのは、やはり竜狩り族の時代だなあ」

 竜狩り族。聞いたこともない単語にザムザは緊張した。

「この長い歴史の中には、竜が人に狩られる時代もあったのだよ。竜を狩るほどに強い人の戦士を竜狩り族と呼んでいた。あの頃は、わたしらは、竜狩り族から逃げまわっていたものさ。その頃は、竜に加護される王国なんてなかったし、人はただ戦うためだけに己を鍛えつづけていたねえ。それがいつの間にか、竜狩り族はいなくなり、生き残りがどこかに残ってるという話も聞くが、まあ、ここ数万年は会ったことがない。これが、人の王として知っておくべき知恵というものではないかなあ。どうだろうねえ、ボルグくん。こんなところで満足いただけたかな」

「はい。ありがたいお話でした。竜狩り族のことはわしも知りません」

 それから、ザムザは、古代竜の角に触れるという栄誉に預かって、それで謁見は終わりとなった。

 ザムザは、王宮へ竜の背に乗って帰った。

 王宮へ着くとザムザはいった。

「ボルグよ、竜狩り族の話は本当だと思うかい?」

「そりゃ、本当だろう。古代竜がそんな嘘をつくとは思えない」

「いったい何万年前の話なんだろうなあ」

 ザムザは、王宮に飛んできては帰る黒竜の群れを眺めながら思った。


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