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~第49話~

「実を言うと、私最初はこの気持ちがわからなかったんです。お兄ちゃんや里奈さんに感じてるものとは違うなぁ、とは思ってたんですけど……天城さんと話してるだけで心がポワポワして……友達は『やっと蓮華も女の子らしくなった』って言って……やっぱりあれって……こ、恋のこと言ってたんですよね」

「でしょうねぇ」

 シエルの甲板で、サティは落ち着きを取り戻した蓮華の相談を受けていた。殆どが蓮華の独白だが。

(本当にわかってなかったのね)

 ハルと同じ≪他人の色恋沙汰≫に鋭いサティは、ハルと蓮華が生徒会室に一緒に来た時から、蓮華はハルに恋をしている、と気付いていた。だが、まさか本人が気付いていないとは思わなかった。

(純粋、と言うより、そっちの感情だけが赤ちゃんみたいなのね)

 初恋を知った≪娘≫の話を聞く母親ってこんな感じなんでしょうね、とサティは学生にしてそんな事を悟った。

「ど、どうしましょう。私、最近ようやく天城さんと普通に話せると思ってたのに……つ、次から天城さんの顔をまともに……み、見れません!」

 顔を真っ赤にして頬に両手を当てる蓮華。

(あぁ……可愛い)

 そんな蓮華を恍惚の表情でみつめるサティ。

 ミキの時もそうだったが、蓮華には年上の女性の心をくすぐる何かを持っているようだった。

 コホン、とサティは一つ咳払いをし、諭すように口を開いた。

「まぁ、そんなに深刻に考えなくていいんじゃないかしら? ポジティブに考えましょう、蓮華ちゃん」

「ポジティブに、ですか?」

「そう。これからもっと親しくなるこの時期に気付いてよかった、って考えれば、いくらでもアピールの仕方が生まれるものよ」

「そ、そんなものですか?」

「ええ」

 頷きながら、蓮華ちゃんは茨の道を歩むことになるわね、とサティは思っていた。

(天城君、優しいし、気が利きそうだし、見た目はちょっと頼りないけど実は物凄く強い、っていうギャップがあるし……これからもっとライバル増えるでしょうね)

 蓮華も可愛さでは学園で一・二をとれるが、その競争に勝てるかどうかは流石にわからない。

 それでも、蓮華は言った。

「私……頑張ります! 難しいかもしれませんけど……天城さんに振り向いてもらえるように一生懸命努力します!」

 近い内にハルの人気が急上昇するのは、今のところ一番近くにいる蓮華が一番わかっていることだろうが、それでも彼女はハルを健気に好きであり続けることを選んだ。

(彩夏ちゃんといい、この娘といい。本当、眩しい娘達。私も二人みたいに青春を謳歌したいわ)

 そんな事を密かに思う彼女はすでにとある色恋沙汰の渦中にいるのだが、

(似合わないことはわかってるけど……私、卒業までに恋が出来るかしら)

 全く気付いていない。

 甲板に流れる何とも言えない、青春くさい空気。その空気は、次の放送で一瞬にして払拭されることになった。


『サティ先輩! 今すぐに南西斜め上に魔法障壁を張って下さい! 大きいのを、至急!』


「え?」

 蓮華はその突然の放送に困惑し、

「っ! 了解っ」

 南西に意識を集中させたサティは一瞬で現状を理解し、両手をそのまま上空へと差し出した。直後、巨大な魔法障壁が四つ、飛空艇を護るように出現した。

 ≪医術魔法≫と同じで魔法障壁に≪言霊≫は必要なく、障壁に込めた魔力の量で強度が決まる。

 ちなみに、魔法障壁は会得するのがかなり難しく、生半可な努力では使う事すら難しい。なので、魔法を主に扱う者は、相手の攻撃を避ける修練をひたすら積むことになる。


 バァーーン!!


 と、サティが障壁を展開した数瞬後、厚い雲を突き抜けた二つの≪火球≫が障壁に激突し、爆発した。

 障壁は破壊されこそしなかったが、その際に発生した衝撃は飛空艇を揺るがす程のものだった。

「きゃあ!」

 揺れる飛空艇に脚をとられ、体勢を崩す蓮華。

「っと。大丈夫、蓮華ちゃん?」

「は、はい。ありがとうございます、サティ先輩」

 蓮華を抱き止めながら、サティは南西斜め上へと顔を向ける。

 爆煙の向こう側、穴の開いた厚い雲からは二匹の魔物が姿を現していた。 



    *****



「……竜?」

 その魔物を見たハルは思わず呟くが、すぐに首を横に振った。

(全体的な形は似てるけど……よく見ると全然違う)

 大きな体躯に大きな翼、その身体に合った大きさの手足があり、パッと見は竜と酷似しているが、やはり違う。その魔物は異様に首が長く、口の両端が首に届くまで裂けている。そして、長い首とは逆に尻尾が極端に短い。

 完璧に均整のとれた、見る者を魅了する竜とは比べるまでもない、言ってしまえば、かなり≪不細工≫な魔物だった。

「新手の魔物、だよな……?」

(どうしよう……)

 このまま<クロプス>との戦闘を続けるべきか、それともあの<竜もどき>との戦闘に備えるべきか。

(……一旦、会長の指示を仰ぐか)

 そう決めたハルは後退しようとして、気付いた。 

 <クロプス>達が慌ただしくこの場を離れようとしていることに。

「?」

 ハルが首を傾げていると、

『ガギャーー!!』

 と、奇声をあげた二匹の<竜もどき>が空を滑空し、逃げまどう<クロプス>の元に向かった。

『ゴアァ!』

 <クロプス>はさらに混乱し、散り散りに走りだす。

 だが、大きさと速さの両方で遥かに勝る<竜もどき>は<クロプス>の行く手を阻み、その大きな体躯を使って、<クロプス>を攻撃し始めた。



    *****



「さ、サティ先輩……あ、あの魔物って?」

 飛空艇から数百メートル離れた場所で<クロプス>を攻撃する<竜もどき>を見て、顔を青くする蓮華。

「<ルーラレイズ>よ。本当はもっと山奥にいる魔物なんだけど、偶然出くわしちゃったみたいね」

(あるいは、住む場所を追われた<クロプス>がここまで来て、それを<ルーラレイズ>が追いかけて来たか……どっちにしろ、迷惑な話ね。私達はキチンと住む場所を特定してるのに)

 はぁ、とため息をつくサティ。

「大丈夫……何ですか?」

「ん……まぁ、二匹ぐらいならどうってこと」


『ゴギャーー!!』


「ない……ん……だけ……ど」

 計ったように聞こえる特徴的な<ルーライズ>の鳴き声。

(まさか……)

 嫌な予感しかしなかった。

 その鳴き声は、先程現れた二匹の<ル-ラレイズ>がいる場所とは違う所から聞こえてきたのだ。

(と言う事は……)

 鳴き声の聞こえた、その最初の二匹の<ルーラレイズ>の真上に目を向ける。

 そこには、

『ギギャーー!!』

 新たに現れた<ルーラレイズ>がいた。

 しかも、一匹だけではない。

 その数、八匹。地上にいる二匹を合わせると、計十匹になる。

「……はぁ」

 その数を、そして、その中に混じる≪親玉≫の<リネル・ルーラレイズ>を見て、驚きを通り越して呆れるサティ。

(本当……イレギュラーな依頼ね)

 再度遠くの空を見る。

 そこでは七匹の<ルーラレイイズ>と、他のより一回り以上も大きい<リネル・ルーラレイズ>が翼をはためかせながらこちらを睨んでいた。


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