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~第41話~

 今回は前回よりも短いですが、かなり遅くなってしまいました。申し訳ありません。

 色々と新しいことだらけの毎日で、これからもこのぐらいの更新速度になってしまうとも思います。

 それでは、作品を楽しんでもらえたら幸いです。

 この世界は≪無数の魔物≫が闊歩しているとは思えないほど美しい自然で覆われている。人が住む都市は、東京のような世界に十程度しかない≪大都市≫を中心に、その自然の中に何百と点在している。

 都市間の距離は地域によってまちまちだが、平均二百~三百キロ程度だと言われており、都市同士の交流は容易ではなく、素人がその身一つで都市を出るにはそれなりの覚悟が必要になる。ただ、都市はそれぞれが完全に独立していて、その都市で需要・供給・生産の全てを賄っていので、生活面に関しては他の都市の助けは必要ない。もちろん東京もその例に漏れない。

 とは言え、都市間の交流が全くないわけではない。それこそ、ハルのクラスメイトでアイドルの『エリ』のファンは東京以外の都市にも多くいる。それは、彼女の歌が収録された≪CD≫などが他の都市にも出回っているからこその結果である。

 ちなみに、ネット回線や電波を他の都市と繋ぐことは不可能なので、都市によってテレビやインターネットで流すものが違うのはもちろん、電話や携帯などは都市内にいる者にしか掛けられない。都市外の者と直接連絡をとる方法はいくつかあるが、どれも簡単に出来るものではない。

 それぞれの都市の近辺に魔物はあまりいないが、それでもゼロではないし、都市から離れるほど魔物との遭遇率も上がる。そんな危険に囲まれた中でも人々は遠く離れた都市と有友好関係を持ち、他の都市へ移動出来る。

 それらを可能にしているのが≪科学≫と≪魔法≫を組み合わせて作られた≪飛空艇ひくうてい≫である。



    *****



「でっかいなぁ~……」

 停泊されている≪飛空艇≫を前に半ば呆然と呟くハル。

 場所は、桜楼学園からそれほど遠くない場所にある飛空艇の停泊所。

 広さも高さも申し分ないそこには、現在三つの飛空艇が停泊されている。その中でも、ハルが見上げている≪蒼の騎士団のシンボル≫が船頭に描かれた飛空艇は群を抜いて巨大だった。

「ハルは飛空艇初めて?」

 と、声をかけたのは今回ハルと一緒に≪世界機構≫の依頼を、強引に、受けた千である。

「いえ、何度か乗ったことはあります。でも…こんな大きいのを見たのは初めてです」

 答えながらも、ハルの目は飛空艇に釘づけだった。

「そう」

 そんな子供のような反応をみせるハルを慈しむように見守る千。

『…………』

 そして、そんな二人を遠巻きに見つめる数人。

「あれは……誰だ?」

 その中の一人、天楼学園生徒会の副会長で褐色の美少女【ミリヤ・レイガーニ】が、ポツリと呟いた。

 いつも悪戯っぽい笑みを浮かべている彼女の顔が、さっきからずっと引き攣ったまま戻っていない。

「見た通り、あんたの所の会長とこっちの新人だが?」

 そんなミリヤの呟きに、特に変わった様子のない里奈が答える。もうこの程度のことでは彼女は驚かなくなっていた。

「いやいやいや。私達の会長はあんな優しい視線を誰かに向ける奴じゃないですよ。もっと、こう、冷めた……いや、最近はよく感情を表に出すようになったが……それでも、あんな……いやいやいや」

 いやいやいや、と独り言を始めるミリヤ。

「落ち着きなさい、ミリヤ」

 そんなミリヤを≪同郷≫の桜楼生徒会副会長である【サティ】が宥める。

「……あの新入生、何者なんです?」

 サティに宥められたミリヤは若干冷静さを取り戻し、改めて里奈に尋ねる。

「こっちが知りたい」

 里奈はその豊満な胸を支えるように腕組みし、ふん、と一つ鼻を鳴らす。

「千があいつの影響を受けた、って事だけは言えるな」

「でしょうね……」

 冷静になって千を見たミリヤは、その変わりように改めて驚愕した。

(私達に向けるのとは全然違う……まるで……恋慕の……)

 そこまで考えて頭を振る。

(このまま憶測でものを考えるのはマズイわね……今わかるのは、ここ最近の千を変えたのがあの少年だってことか……)

 完全に普段の調子を取り戻したミリヤは、その顔にほほ笑みを携えていた。

「感謝しないとな」

「感謝? お前はあの状態の千に憤りを感じてたんじゃないのか?」

「憤り? まさか。あんな楽しそうな千を見て、私が怒るわけないじゃないですか」

 と、快活な笑みをみせるミリヤ。

「そんなものか……」

 あの千をどう捉えるのかは人それぞれか、と里奈はいつしか桜楼の屋上で今の千に対して≪腑抜けた≫と感じた自分を思い出していた。

「会長!」

「ん?」

 里奈の見上げた先、飛空艇の甲板からは同じ生徒会役員の彩夏、蓮華、健吾が身を乗り出していた。

「点検は終わったか?」

「はい。いつでも出発できます」

「わかった。三人とも降りてこい……さて、あとは騎士団の担当者が来るのを待つだけか」

「風谷会長」

 と、里奈に声をかけたのは、いつの間にか傍に寄っていたハル。

「何だ、天城?」

「飛空艇の点検って普通騎士団の人がやるものなんじゃ?」

「普通はそうだが、彩夏が同行する場合は別だ」

「別?」

「あいつは二年にしてすでに騎士団の技術開発部への所属が確定してる。機械いじりに関してあいつの右に出る奴はいない。だから、特例として認められてるんだ」

「へぇ……」

(騎士団に入るのが決まってる、って……凄いな)

 ハルが感心していると、

「機械いじり、という言い方は止めて下さいと言ったじゃないですか」

 不機嫌そうな彩夏が後ろに苦笑気味の蓮華と健吾を伴って近付いてきた。

「せめて、メンテナンス、と言って下さい」

「悪い、悪い。つい、な」

「全く……天城君」

「は、はい」

「私は戦闘はからっきしでこの程度のことしか出来ませんが、機械のことに関して困ったことがあったら何でも言って下さい。可能な限り手助けしますので」

 と言って、手を差し出す彩夏。

 それから直ぐに自分の手が薄汚れているのに気付き、苦笑して手を引っ込めようとしたが、

「俺、機械下手なので凄い助かります。それと、自分の好きなことをこの程度って言わない方がいいですよ」

 ハルはその手を迷うことなく握り返した。

「……ふふ」

 その行動と言葉に彩夏は一瞬目を丸くし、ほほ笑んだ。

「あなたは優しい人ですね……ありがとうございます」

 その笑みは事務的なものではない、彼女の自然な笑顔だった。



    *****



「しかし……高いなぁ」

 甲板に登ったハルの一声は、そんな当たり前の言葉だった。

「天城、そんなに身を乗り出してたら落ちるぞ」

 下を覗いていたハルに健吾が呆れ気味に声をかけた。

「す、すみません。つい、珍しくて」

「まぁ、気持ちはわからないでもない。こんな大きい飛空艇は東京にもあまりないからな」

「そもそも、こんな大きい飛空艇で行く必要があるんですか? たかだか八人を他の都市に送るだけなのに」

「今回は特別だ。それなりの緊急事態だから、騎士団が機動力の高いやつを貸してくれたらしい」

「緊急事態って……そんなに危険な状況なんですか?」

「情報が錯綜してるからよくわかってないが、急いで損はないだろう、って判断だ……っと、里奈が来た。里奈!」

 健吾が呼ぶと、里奈は手に持った紙に目を向けながら二人の近くに来た。

「現在の状況はどうだって?」

「まだ詳しくはわかってないが……出来るだけ急いでくれ、だと。彩夏にも連絡したから、そろそろ動き始め、っと」

 里奈の言葉の途中で、飛空艇が一瞬動き、続いて彩夏の声で放送が入った。

『これから浮遊、発進します。多少揺れますので、手すりなどに捕まって下さい』

 言い終わるや否や、巨大な飛空艇が浮遊し、

「っと、と」

 ハルが甲板の手すりに手をついた直後、一気に飛空艇が停泊所から大空へと飛び出た。

 軌道に乗った飛空艇はそのまま上昇を続け、雲の中に突っ込み、一瞬で抜け出てようやく、地面と平行に飛行を始めた。

「…………」

 半ば呆然と手すりにもたれかかるハル。殆ど一瞬の出来事に頭と身体が付いていけてない。

「全く、あいつは本当に機械が関わると大胆になるな」

「最近飛空艇飛ばしてなかったらしいからな」

 里奈は乱れた髪を鬱陶しそうに後ろに流し、健吾は苦笑しながら服を整えている。

「…………」

 未だに呆然としているハルに比べて、二人はかなり冷静だった。

「大丈夫か、天城?」

「……は、はい」

 何とか立ち上がるハルの髪も服もボサボサである。

「あの……飛空艇って出発する時あんなでしたっけ?」

「いや。この飛空艇『シエル』って名前なんだが、これはちょっとじゃじゃ馬でな。ちゃんと扱える奴が彩夏を含めて数人しかいないらしい。あ、それも今回の依頼にこの飛空艇を使わせてもらえた理由だな」

「は、はあ」

 ハルが微妙に納得していると、

『すみません、健吾先輩、里奈会長。今ので蓮華さんが軽く目を回してしまって……第二廊下付近にいますので介抱してもらえませんか?』

 との放送が流れた。

「ったく、ちゃんと気をつけろって言ったのに……しょうがない、私が付きっきりで介抱を」

「おい待て、里奈。お前が行くと蓮華の貞操が危ない気がする。俺も行くぞ」

 そんなこんなで、二人はワイワイと言いあいながら甲板を後にした。

 一人甲板に残ったハルは、

「生徒会って……凄いなぁ」

 と、しみじみ思ったのだった。


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