第六話:インチキ魔法学校入学式
さぁやって参りました入学式。
昨日ニックに案内してもらった講堂に、大勢の自称・・・・ゴホンっ・・・失礼。立派な魔法使いのタマゴ達が、制服に身を包み集まっています。
因みにここの制服は、白いブラウスに女子はクラス色のリボン(クラスが決まりしだい配布される)、男子はネクタイに、男女共に黒いスカートとズボン。裾には白いラインが着いている。
ネクタイとリボンは銀と赤・青・オレンジ・緑のシマシマになっている。
仕上げに学校のエンブレムが刺繍してあるローブ。
と、至って普通ではないが普通の物になっている。
正直もうちょっと派手なものを予想していたが、案外そうでもなかった。
前方の台の上では校長先生が、三角帽子を被って演説をしている。
何かナイトキャップにも見える。
校長らしく胸を張り、今年からエセ占い、いや魔法を習う新入生達に初心の心を教え込んだ。
「それでは諸君、クラス分けに移ろうかの」
校長の発した言葉に対して、辺りが騒ついた。
前を見ると、既に大きな壺が用意されていた。
中から何やら怪しげな煙が出ている。
「いいかの?新入生君達は選ばれたクラスのテーブルに移動するのじゃ。このペンダントを持っての。」
校長がチャリンと音をたてながら掲げたのは、綺麗な透明のダイヤだった。
飴玉位の大きさだろうか。
結構大きい。
首から下げられる様になっている様で、ダイヤから銀色の鎖が着いている。
「それじゃ順番に来るのじゃぞ!せいれーーーーーつ!!!」
突然、年寄りとは思えぬ大声を出した。
それを合図に、最前列に座っていた新入生達が壺の前に並びだす。
私は周りの人達に押されるようにしながら並んだ。
すると後ろの子が急に私と腕を組んできた。
「?」
びっくりして見ると私より少し小さい可愛い女の子がいた。
「貴方名前何ていうの?」
お人形さんを連想させるその可愛らしい顔がニッコリ笑った。
「私の名前はね、ジャンナ・ヴァレンニコフ。同じクラスになれると嬉しいわ!」
ふわふわの柔らかそうな髪と、真っ白な肌、真っ青な瞳。
私も女だけど、同じ女とは思えない。悲しいけど・・・・・・。
「私、結城淋漓。よろしくね」
「淋漓ね!よろしく!」
ふふ、と笑った顔が本当に可愛い。
「淋漓はどの教科をとるつもり?」
「教科?」
「ええ、この学校は皆自分で受けたい授業を選択出来るのよ」
「そうなんだ。私ここに来てあまり時間が経って無いから、まだよく分かんなくて」
無論、『授業が選択制』以前に、選択するほど授業数があるとは思っていなかった。
「そうなの?なら何でも遠慮しないで聞いてね、淋漓?」
「ありがとう、ジャンナ」
ジャンナと何気ない会話をしていたら、いつの間にか私の番になっていた。
それまで組まれていたジャンナの腕が離れた。
「いってらっしゃい淋漓」
そう小さな手で背中を押された。
壇上に上がると校長と目が合った。柔らかく笑っている。
目を閉じると、周りの音が遥か遠くの音の様に拡散していく。
目を開くと、目の前の光景が確かな現実として脳内に反映される。
後ろを向くと様々なクラスの在校生が、期待や当惑等様々な目で壺と私を見ている。
最後にジャンナを見ると、ニッコリ笑って私を見上げていた。
私もニッコリ笑って前に向き直った。
校長とまた目が合い今度は真っ直ぐ私を見ていた。
私はしっかりと首を縦に降る。
もうとっくに決心している。
今日からここが、私の居場所だ。
僅かな光が私の中に宿る。
私の目を見ていた校長は、満面の笑みを浮かべた。
目の前に置かれた真水の入った魔法瓶を片手に、もう一方の手で透明のペンダントを壺の中に落とした。
壺の中を覗くが何も変化は無い。次に魔法瓶の中身を一気に壺へ流す。
緊張しているのか、無意識に空になった魔法瓶を持つ手に力が入る。
そんな私の緊張を解こうとしてくれてるのか、なめているのか解らないが、いきなり壺の中から出て来た煙がオバケの形を作り出し、しかも笑った。
「ひっひっひっ♪」
これはなめられてる。
「何よ!」
校長がパァンっと手を叩く。
するとオバケ型煙は消え、壺の中から、さっき私が入れたペンダントが飛び出す。
あれ?赤い・・・・・・?
いつの間に!?
透明だったはずのペンダントが真っ赤なルビーの様になっていた。
「結城淋漓、アレクサンダークラス!」
校長の声とペンダントの色を見た生徒達が歓声を上げる。
「淋漓、これはアレクサンダークラスの証じゃ、
しっかり首にかけておくのじゃぞ。
さ、行きなさい。
次の子前に来るのじゃ」
冷たい金属が首に触れたと思ったら、既に校長に背中を押されていた。
「やぁ!入学おめでとう!」
「アレクサンダークラスにようこそ!」
「解らない事あったら何でも聞いてよね」
テーブルに着くと同じ赤いペンダントをした、アレクサンダークラスの人達に歓迎された。
シャンパングラスを持たされ、大量のチョコレートで作ったような茶色のケーキを半ば無理やり食べさせられ・・・・・・
そんな時、後ろから聞き慣れた声がした。
「「淋漓!入学おめでとう!アレクサンダークラスおめでとう!」」
思わね助け舟が来たと思い後ろを向くと、
「ルカ、ルナ・・・・・・」
陽気無邪気能天気、ニンマリ笑った双子ルカとルナが立っていた。
お互いの肩を組んで、空いている手でシャンパンのビンを持っている。
その姿さえシメントリーだ。
見事に左右対称である。
「このクラスだったんだ」
「そうさ!」「俺たちアレクサンダークラスのー?」「第三学年の問題児!」「今年も盛り上がって行こう!」
よっぽど楽しいのか終始笑みを絶やさず、周りを盛り上げている。
自分の口でパフパフパフー♪等とホザき、それを見て何が面白いのか皆爆笑している。
私は驚いた。
コレが二つも歳上だったなんて。
「精神年齢は私と同じ位なのに」
ボソッと呟いた私に双子は首をグリンと回し(不気味だ)、満面の笑顔をこちらに向けた。
「「何か言った?」」
「何も言ってません!」
開けてないシャンパンを私に手渡す双子に、そういえばと聞く。
「ニックって何年ですか?」
「黒猫は三年」「俺達と一緒さ!」
そうか、三年だったのか。
「淋漓!やったわ、同じクラスよ!」
「おわっ!」
ジャンナが私に飛び付いてきた。重力に逆らえず後ろから倒れる寸前に、誰かの手が私の肩を受けとめる。
「・・・・・・!!あっ、ニック!」
噂をすれば何とやら。振り替えるとそこにいたのはニックだった。
胸には真っ赤なダイヤが輝いている。
「あ、兄さん!」
私の後ろからひょっこり顔を出してジャンナはニックの方を見た。
「は?」「「え?」」
双子と私はハモる。
この二人が兄弟!?
そんなばなな!