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パンドラ魔法学校と黄昏の賢者達  作者: 東奔西走
第四章:夏休み編
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第二十六話:楽しい時間と共に




翌日。

と、言うか数時間後。


私達御一行は、ラロの家から箒で数分の湖に来ていた。

透明度の高い水は、日光の光を借りキラキラ輝いている。


ひんやりと冷たい湖に足だけを着けて、ぼんやり前を見ていると、ジャンナが隣に座った。


ちゃぷん、と水に足を入れ、深く空気を吸い込んでいる。


「気持ちいいわ!」


横を見るとジャンナが笑っていた。

金に近い銀色の髪が風に揺れていて、とても綺麗だ。


「淋漓、私こんなに楽しいのは久しぶりだわ」


向こうの上空では、ラロとキリルが箒に乗っかり戦闘を繰り広げているし、ニックはというと寝たりていないのか大きな木の下で沢山の猫に囲まれ昼寝をしている。


水面にちょこまか映るラロとキリルの見ながら、私は頷く。


「私もそうかも」


こんなに活き活きとした生活は久しぶりだ。


中学の頃は勉強ばかりしていたし、特に何があるわけでもなく常々退屈な日々に嫌気がさしていた。


私の住んでいた所には、都会でも田舎でもなくこれと言って取り上げるものは何もなかったのであまり遊ぶと言ってもピンと来なかった。


「兄さんがいつも一生懸命私に色々してくれるんだけど、何かイマイチなのよね」


クスクスと笑ながらジャンナが言った。


ジャンナとキリルの仲の良さは校内でもダントツだ。

そこら辺のカップルよりか、いつ見てもペタペタくっついている。

普段見るキリルは中々ウザいが、こうして時折ジャンナの口からでる兄弟話を聞くと、いかに妹を大切にしているかが伝わってくる。

家もヴァレンニコフ財閥と、超大金持ちらしいし、両親からしっかりと教育されているのが見て取れる。

話によると、ジャンナ達は幼少期を孤児院で育ち、後に養子として引き取られたらしい。


―――――「最初、兄さんだけを養子にするつもりだったのだけれど、いくら引き剥がそうしても剥がれない位、決して兄さんは私の手をちゃんと繋いでくれていたの」―――――


前にジャンナが言った事が頭に過る。


―――――――「ジャンナと一緒が、俺を引き取る条件だ! って偉そうな事言って、結局二人揃って引き取られたのよ」――――――


ひゅーー、と風が耳元を過ぎていったと同時に現実に戻る。


隣のジャンナを見ると、水に足を突っ込んだまま、横になって寝ていた。

ジャンナの気持ちよさそうな寝顔につられて、私も一眠りしようかと横になった瞬間、お腹に何かが容赦なく乗っかった。


「うぇっ!?」


原因を見ると白い巨大な猫がいた。

よく見ると黒い点が所々に。

こいつは確か、さっきニックに寄り添っていつもニックの後を追っていた猫。


まるで豆大福のような猫だ。


「重いよ、豆大福猫!」

「なぬぅーーー!?豆大福とは何事じゃーーー!!」

「え!?」


今叫んだのは紛れも無く、猫だった・・・・。


・・・・・はぁ。また変なのにつかまった・・・。






「あー楽しかったー!」


ラロがベッドに潜り込み、ニコニコ笑っている。


ラロの家に帰り、夕飯を食べたらもう空は真っ黒だった。


明日は帰る日。


少し寂しいが、学校に行けばまた嫌と言うほど会える。


「中々旨い飯だった」


ポリポリと顎を掻く大福猫。

なんというふてぶてしさだろう。


「ついて来ちゃったのね」

「淋漓、どーすんのさ」


私の膝に乗る大福猫にジャンナとラロがつぶやく。


「ついて来てしまったものは仕方がない。パートナーにでもしたらどうだ?」

「パートナー?」


聞き慣れない言葉に私がオウム返しをすると、キリルが人差し指を立てて説明してくれる。


「自分の好きな動物をパートナーに出来るんだ。魔法の補助役、つまり補佐さ。たまに魔法の起動源になる時もあるけど」


私は思わず大福猫を見た。

こんなのが魔法の補佐役なんて無理じゃなかろうか?


「ちなみに俺のパートナーはこのカメレオンのリンクだ!」


関心半分不安半分、聞いてもいないキリルのパートナーカメレオンが何処からともなくキリルの肩に出現した。

本当に今どこから来たんだろう・・・・・・。


「お前、ずっとリンクをつけたまま来たのか?」

「そうとも。なんせパートナーだあたりまえだろう。どうせ俺に同化してるから皆にはわからないさ!」


いや、今皆知った。


私は膝の大福猫をよいしょ、と目の高さまで持ち上げ黄色の半分閉じた目を見ながらきく。


「どうする?私とペアになる?」


じとーっと見つめる大福猫。

暫くそうしていたが、大福猫はジタバタしだし私の手から脱した。


すると私の足元で丸くなりそのまま寝てしまった。


まぁ、今決めなきゃいけないことじゃないし、そう思いベランダに出ると、オリエンタの街の夜景が見えた。

発展都市なのか人の温かみのある光が浮かび上がっている。星空と一緒に見るとまた絶景だ。


「あっそうだ!皆で夜景をバックに写真を撮ろう!」


私の後ろでラロがポラロイドカメラを構えた。

振り向きざま、試し撮りとか言ってパシャっと一枚撮られれてしまった。


「素敵ね!」

「写真なんて久々だな。」

「ジャンナの写る写真は全て俺の物だ!」


皆がわらわらと私の周りに集まってきた。

ラロがカメラをスタンドに置き、セルフタイマーをセットしている。


「行くよ!」


シャッターボタンを押したラロが入った所でパシャッとフラッシュが光った。


わーい、と喜びながら皆が窓の内へと入っていき、カメラから出てきた写真をパタパタと乾かしている。


涼しい風が吹いて、私はもう一度夜景を眺めた。

すると、まだ隣に残っていたらしいキリルが、ジャンナ達を見て呟いた。


「ジャンナが楽しそうだ」


いつもの鬱陶しい声とは随分かけ離れた声音だったので、私は驚いて横目で彼を見る。

キリルは笑っていた。

その顔は兄そのもので、妹を見守るその横顔は威厳さえ感じさせるものだった。


「楽しかったですね。久しぶりです、こんな楽しい夏休み」

「そうだな」


暫く心地のいい沈黙が続いたが、隣から私の名前が聞こえた。


「淋漓・・・」


ポツリとつぶやかれた私の名前。

静かな声で発せられたそれは、危うく夜景の空に消えかかったが何とか私の耳が拾った。


「なんですか?」


二人とも暖かい光りを見つめながらも、相手の顔は大体想像ついている。


「ジャンナと仲良くしてくれてありがとう」


さっきよりもはっきりとした声でキリルが言った。

彼のジャンナと同じ色の髪が風に揺れる。私もその風をうけ目を瞑る。


「私のほうこそ、ありがとうございます」


目を開けたとき幾つもの光が私を迎えた。


私は一人じゃない、そう感じた。

皆がそう感じさせてくれた。


「淋漓ー!見ろこの写真、超いい写真!」


嬉しそうなラロの声に私は振り向く。

ラロが手にもった薄い紙には、皆が笑顔で映っていた。


「いい写真だね!」

「だろ!いい記念写真だ。部屋に飾るんだ!」


嬉しそうに部屋に入るラロ。

それに続き私もキリルも部屋に戻る。


明日は帰る日。


少し寂しいけれど、皆が居るから平気です。








こんにちは。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

少し、いえ、大分短かったですが夏休み編はこれにて終了です。

二学期からは、淋漓ちゃん達がありとあらゆるものに巻き込まれて行きます。

時に笑い、泣き、シリアス感も混ぜつつ書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします!


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