第十七話:驚愕の代表者選び
星願祭前日。
今日は星願祭の代表者が選ばれる事からか、皆少し落ち着かないようだ。
あまり代表者に興味がない連中も、ダンスパーティーの相手選びに余念が無い。
そんな中、私は一人先生に頼まれた薬草を教室まで届けていた。
が、しかし。
「わっ!!」
いきなり地面から飛び出してきた幽霊にビビり、
「ぎゃっ!!」
「!人を幽霊扱いするな」
廊下でニックと鉢合わせ、幽霊扱いしたから頭を軽く叩かれ、
「そぉなたに苦労相が出ておぉるぅー!」
「っひ!」
と、いきなり占星術の先生が私の顔を見るなり大声で叫ぶ。
ここ廊下なんですけど。
山越え野を越え谷越えてやっとこさっとこついた薬草術の教室。
ガンダラ先生という大きなオッサン先生がニッコリ笑い大声で喋った。
「おう!ご苦労さん!いや助かったよ。名前はなんつったか?あーユーキちゃん、そう!ユーキちゃんだ!がっははははは!!」
教室の窓がカタカタ揺れるほどの大声に思わず苦笑い。
「ガンダラ先生この薬草ここに置いておきますね」
「おうよ!手伝ってくれたユーキちゃんにご褒美だ」
そう言ったガンダラ先生は多くの薬草が陳列してる戸棚をガサゴソし、一つの袋に入った葉っぱを手渡してくれた。
「なんですか、これ?」
「葉切草って言ってな。形が鋭く尖って同じ葉さえも切ってしまいそうだろう?だからこういう名前がついたんだがな、これが茶にするとうまいんだよ」
よっこらしょと椅子に座り、まるでビールは旨いと言うように言った。
まんまオッサンだ。
「お湯にこれを入れるんですか?」
「おうよ!日々の疲れをその鋭い葉で除去してくれるぜ。まぁ物は試しだ。飲んでみな」
上手いんだか下手なんだかわからん言葉を残し、ガンダラ先生は書類の束をそばに引き寄せた。
「わかりました。ありがとうございます」
「おうよ!じゃぁな」
◆
◆
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私はジャンナとラロの元へ向かおうとして図書館に入った。
元居た世界の図書館とは比べ物にならない位の蔵書に今だ圧倒される。
適当な本棚の間の小路を抜け、本の背表紙を眺めていると、
「わっ!」
「!」
本棚の本と本の隙間から、いきなり顔が覗いた。
さっきからビビってばかりだ。
すると向こう側の少年がびっくりしたように謝る。
「ごめん驚かせて・・・」
二人で本棚を抜けた。
「あ、君、計算得意な子だよね」
あれま。すっかり有名人なわたくし。
「僕の名前はフィリップ。ベルナップクラスで同じ一年だよ」
「私、結城淋漓」
メガネをかけた頭の良さそうな顔。
長くも短くも無い金髪。
「淋漓は小さい頃から計算が好きだったの?」
「え?うん、まぁそれなりに」
そうか、ってふんわり笑うフィリップ。
何だかどっかの国の王子様みたいだ。
図書館の一部に広がる勉強場を見渡すがジャンナとラロは居なかった。
ってことは談話室かな。
「じゃ、私行くね」
「うん、話楽しかった」
只の世間話なのにフィリップはニッコリ笑って手を振った。
私も手を振り返し図書室を後にした。
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談話室に入るとジャンナとラロがソファーで寝っ転がっていた。
「おかえり淋漓」
「無事薬草届けられた?」
「大変な道のりだった」
私はソファーに座り背伸びする。
「そういや、明日だよなー。星願祭」
「代表者、誰になったのかしら?」
「案外俺等だったりして。」
「無いな」
ヒュー、パンッ!!
「?」
「きゃっ!」
「何だ!?」
いきなり談話室に花火が打ち上がる。
他の生徒がなんだなんだとあたふたする中、脅かしに慣れていた私はソファに深く座ったまま傍観していた。
「は、花火?部屋で?ひ、火の用心!!」
「ラロ君。つっこむとこそこ?」
「待って、誰かいるわ!」
パンパンッと尚鳴り続ける花火の中から、ポンッと英雄の様な格好した幽霊が出てきた。
「やぁ、勇敢なるアレクサンダークラスの諸君。君達の名は、淋漓君、ジャンナ君、ラロ君でいいのかな?」
ひょうきんな表情と声に突然名前を呼ばれ、私達はコクコクと頷く事しか出来ない。
この雰囲気、まさか。
口角を存分に上げ、胸を張る英雄型幽霊。
まさか。
「勇敢な君達は、選ばれたのだよ!明日の星願祭の代表者にね!」
・・・・・・・・・・
なんだと。
こんにちは、毎回読んで頂きありがとうございます!
つい先日携帯を水没死させてしまい、パンドラのデータが全て吹っ飛びました。泣きたいです。
けれど読んでくれている方々や、楽しみになさってくれる方々の為に頑張ろうと思います!