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コメディ自衛隊 提案の中身は一部採用、発言は全部アウト

作者: リフェリア
掲載日:2026/03/13

本作はフィクションです。

作中に登場する「自衛隊」は「自立衛星観測隊」の略称であり、現実のいかなる組織・制度・人物とも一切関係ありません。

なお、万一よく似た部分があったとしても、それは偶然です。たぶん。

隊長:業務改善提案の締切が近いんやけど、なんかええアイディアない?


科長:ありますよ。人的基盤の多様化施策です。


隊長:お、珍しく真面目やな。


科長:通称『シングルマザー勧誘計画』っす。


隊長:通称を今すぐ捨てろ。名前からして軽く逮捕やぞ。


科長:いやでも、狙いとしては理にかなってるんすよ。生活基盤の安定を求める層に対して、自衛隊の雇用の強さを打ち出すんす。


隊長:急にまともな言い方したな。さっきまでの犯罪臭どこ行ったん。


科長:自衛隊って、収入だけ見ればかなり強いじゃないっすか。特に新規採用。


隊長:まぁ、最近の若手厚遇はすごいよな。初任給も上がったし。


科長:しかも民間みたいに、賞与が業績で消し飛ぶ不安も薄い。


隊長:あー、そこはたしかに強いか。民間も最近は初任給上げてるけど、あれ賞与削って月給に回してるだけのとこもあるんやろ?


科長:そうっす。で、こっちは賞与はそのままで基本給上げたんす。


隊長:あっ、そうか。賞与って基本給に倍率かかるから、年収で見ると結構差がつくんか。


科長:やっとCPUが起動しましたね。


隊長:誰がPentium75MHzや。


科長:Windows95世代は黙っててください。


隊長:急に世代を焼き払うな。


科長:で、ここからが本題です。特別休暇に『子の看護等のための特別休暇』あるじゃないっすか。


隊長:あるな。最近は入学式とか学校行事にも使いやすくなった、ええ制度や。


科長:ぬるいっす。


隊長:第一声がそれ?


科長:対象年齢がぬるいんすよ。なんで小学三年生までなんです?


隊長:そのくらいまでは体調崩しやすいからちゃうん? それ以上なら、たまの通院くらい年休でええやん。


科長:そういう発想が昭和脳なんすよ。


隊長:今日わしに厳しすぎん?


科長:小学四年生になった瞬間、急に全部一人でできるようになるわけないじゃないっすか。中学生でも、受診は『親御さんもご一緒に』って言われること多いんすよ。


隊長:まぁ、それはそうかもしれんけど……。


科長:しかも今、人手不足でみんな過労気味じゃないっすか。そんな中で年休って、制度上は自由でも、心理的には使いづらいと感じる隊員が多いんすよ。


隊長:そこは上司の指導で何とかする話やろ。


科長:理想論っすね。できるなら今ごろ改善提案なんか要らんのですわ。


隊長:ほんまにわしのこと嫌いなん?


科長:そこはまた別件で。


隊長:別件で嫌われとるんかい。


科長:だから対象を中学三年生まで広げるんです。病気、通院、学校行事、PTA活動も含めて。そうやって子育て中の隊員が『使ってええ休暇なんや』って認識できるようにする。


隊長:なるほどな。子育て支援としては筋が通ってる。……でも、それとシングルマザー勧誘計画と何の関係があるん?


科長:話は最後まで聞きましょうって、お母さんに習いませんでした?


隊長:お前ほんま一回殴られたいんか?


科長:で、もう一つが駐屯地内の激安託児所です。最初は朝霞みたいな大規模駐屯地からでええんすよ。


隊長:託児所の整備、始めてるとこもあるやろ。三宿とか。


科長:それは点です。こっちは線で考えてるんす。


隊長:急にできる参謀みたいな言い方すな。


科長:シングルマザーが入隊するうえで最大の障害は、教育課程なんすよ。前期教育、後期教育、特技課程、昇任のための入校……。親の支援が潤沢に受けられる人ばかりじゃない。小さい子抱えて、あの入校ラッシュを乗り切るのは無理ゲーです。


隊長:まぁ、そこはたしかに現実的な壁やな。


科長:だから大規模駐屯地に託児所を整備して、教育課程の間はそこを使いながら通えるようにするんす。資格も取れる、免許も取れる、継続すれば昇任も見える。生活は安定する。福利厚生も厚い。保険の説明したら、民間の営業マンが静かに帰るレベルです。


隊長:お前、そこだけ聞くとむちゃくちゃ優秀な勧誘担当やな。


科長:さらに定着率も上がります。


隊長:どういう理屈で?


科長:生活基盤が職場に乗るからです。子育てしながら働ける、収入も安定する、資格も積み上がる。気がついたら『ここまで来たし、定年まででええか』になるんすよ。


隊長:その言い方やと、だいぶ人を沼に沈める仕組みに聞こえるんやけど。


科長:制度設計って、だいたいそういうもんです。


隊長:言い方!


科長:しかも副次効果もあるんすよ。今の職場、基本男社会じゃないですか。そこに子育てしながら真面目に働くシングルマザー隊員が入ってきたらどうなるか。


隊長:嫌な予感しかしないから言わんでええ。


科長:独身隊員どもが急に身だしなみ整えて、『自分、やれます!』とか言い出して勤務態度改善する可能性があるんす。


隊長:発想が最低なんよ。


科長:で、うまいこと家庭持って定着したら離職率も下がる。人手不足解消。すごくないっすか、この提案。


隊長:発想は最低やけど、一部だけ妙に現実的なんが腹立つな。


科長:でしょ? もうこれ幕僚長表彰もんですよ。


隊長:いや、表彰はない。


科長:えっ。


隊長:提案の中身は一部検討の余地あり。せやけど、題名と途中の発言が全部アウトや。


科長:そんなぁ。


隊長:とりあえず今回の件、口頭注意を行った旨はジャケットに書いとく。あと来週のコンプライアンス教育、受講者名簿の一番上にお前の名前入れとくわ。


科長:業務改善提案しただけなのに。


隊長:お前はまず自分を改善せえ。


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