第四階層ボス【多貌翼禍鳥】空から舞い降りる
一枚岩の最奥に行くと、途端に地面が震えだす。
地面が燃え始め、鉄板のように熱くなる。空が蒸気に包まれてドームが形成される。
「情報通りだね」
「気をつけろよ、いつなにが飛んでくるか分からないからな」
熱の地面は火傷と鈍足の効果がある。アントはそれらの異常を無効化するポーションを飲んでいたため無事だった。
空から風が勢いを増して降り掛かってくる。それは暴風と化して二人を襲うが、ダガーを固定させてそれに捕まっていた。
舞い降りてくる鳥は丸くて赤い体つきをしていた。頭部は三つ、翼は五つ、足は一本生えている。その異様な姿を目にしても二人はまるで落ち着いていた。
多貌翼禍鳥
HP 500/500 MP 500/500
「行くぞ!」
「うん!」
事前に立てた作戦ではカリナが空を走り至近距離で水の魔法を撃ち、怯んだところをアントが畳み掛ける段取りだ。
カリナは作戦通り空を駆ける。
しかし怪鳥はそれを見逃さまいと魔法を連発してきた。それは異様な光景だった。
三つの顔から詠唱が唱えられ、『大火魔球』が飛んでくる。そして五つの翼から赤や緑の斬撃が飛んでくる。
「何だこの数は!」
「まずい!?」
カリナはモンスターを召喚して魔法を肩代わりさせ、自分も高度を下げて避けるが、斬撃が一つ当たった。
その攻撃は風の属性を含んでおり、触れた直後カリナの体が空へと打ち上げられる。
体勢を整えようと怪鳥を見ると、すでに魔法を唱え終わっており、再度八つの魔法や斬撃が飛んできていた。
思わずモンスターを召喚するが、間に合わずにほとんどの魔法を受けてしまう。
「うがぁ!」
体は力を失い無防備に地面へと叩きつけられようとしていた。
「【風撃】【鎖破悪狼】!!!」
『風撃』は風によって落下ダメージを軽減出来る。巨狼でカリナをキャッチすると、回復の魔法を唱える。
どうやらまだ体力が残っているらしく、戦えそうだ。
カリナはアントの肩を持って立ち上がる。
「アント……ごめんっ」
「大丈夫だ。あんたモンスターを召喚しようとしてやめただろ、あれが良かった」
「間に合わなかったんだよ」
「あんたの【不落要塞】は動きを止めていれば止めているほどダメージを減らせる、なにかあれば焦る気持ちを殺して受けきれ」
「なんで僕よりも詳しいの……」
「お前に勝ちたかったからな」
アントはスナイパーを握ると、怪鳥が放った魔法に銃弾を打ち込んでいく。
取り逃した魔法は巨狼が切り裂き、魔法を打ち消していった。
「あの口から出るでかい火球は、スピードが遅くて威力が高い。斬撃はダメージは低いが早い」
「なるほどね」
「行けるか」
「斬撃を消してくれれば!」
「任せとけ」
そう言うとカリナはまた空を駆ける。
今度は斬撃は避けない。スピードは早いが、銃弾よりは遅い。
怪鳥の高度は五メートルくらいで低い。このまま走っていけば余裕でたどり着く。
斬撃は一時も隙を生まずに放たれていたが、それらは一つ残らず処理されていく。
「命中率高いね」
カリナの『間合』に似た効果を持っているのだろう、そうではなく素であの命中率なら化け物だとカリナは冷や汗をかく。
今では空を駆けるのに思考をさくことはない。怪鳥に攻撃ができないかとダガーを飛ばしてみるが、体を避けて避けられる。
「火球だ、避けろ!!」
火球は必ず避ける。動作が遅く数も少ないため、走る場所を横に避けるだけで避けきれた。
しかし追い込まれるように斬撃が連発される。
「くっ!!」
どうしても避けきれない斬撃は、翼を生やして受け切る。
攻撃を受ける前提で立ち止まるのは怖い。だが動いているときよりも衝撃は少ない。
カリナはそのまま踏み込み、怪鳥の眼前に立つ。魔法の頻度が上がるが、小刻みに座標を変更した移動を行いそれを避ける。
剣で怪鳥に斬りかかろうとすると、剣が震えて刀身にヒビが入った。熱気と魔法の圧にやられたのだろう。
たまらず剣を鞘におさめて『水打』の魔法を放つ。これを至近距離で撃つことがカリナの目的だ。
「っ!!」
『水打』を放ち手のひらに水が現れた。それと同時に水は破裂するように蒸発を起こした。
カリナは翼による打撃を受けて吹き飛ぶ。ダガーを空中に固定して受け身をとる。
「駄目だ! アント、どうしよう……」
「選手交代だ」
アントはショットガンを持った。




