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職業【錬金術師】空を伝える

「こんなもんでいい?」

「うんっ! カリナってすごいよね……」


 レッカは蜘蛛の糸で縛られた蝶を、長い棒のような武器で叩く。彼女のスキルである【収集家】はドロップ率を上げてくれる。

 二人は草色(そうしょく)アゲハのレアドロップである「翠光翅」を集めていた。翠緑色の羽で、鼓動をするように光るのだ。


「僕は何もしてないよ? 虫苦手だし……」

「いやいや、カリナがいないとこの子達は動いてくれないんだから」


 スライムや蜘蛛がせっせと虫を運んでくる。しかし当のカリナは森の外でモンスターを操作するので手一杯であった。

 剣の練習で克服したと思っていたが、それは自分が操る虫意限った話だった。

 いまだに自立して動く虫は苦手だし、トラウマを生んだ草色アゲハなんて苦手を通り越して嫌いだ。



 スキル取得

【統御・草色アゲハ】【始原・草色アゲハ】【念動】



『【統御・草色アゲハ】を【統御生多相(マルチ・ドミネート)】へ統合、【始原・草色アゲハ】を【始原同一化(プロト・イコール)】へ統合しました』



「ね、ねぇいまなんか聞こえなかった!?」

「あぁ、スキルを統合するときに流れる声だよ。気にしないで」

「そうなんだ! カリナはほんとにスキルが簡単に手に入るんだね」


 褒められて悪い気はしない。彼女は胸を張る、これでゲットしたのが草色アゲハ関連のスキルだというのだから誠に遺憾である。

 ちなみに、新たに手に入れた念動というスキルは、ものを自由に動かすことが出来る。いわゆるサイコキネシスだ。

 アイテムの回収は終わったようで、レッカは武器をしまう。

 しかし何かを思い立ったかの様相でカリナを見つめる。


「ねぇカリナ、蝶召喚してよ」

「え、えぇ……いいけど」


 そう言って召喚された蝶はゆっくりと羽根を広げて宙を舞う。

 それを見て、初めてレッカと共に戦った時のことを思い出す。


「カリナって、頑張れば空、飛べそうだよね?」

「うぐっ……」


 二人は羽根を生やす。

 レッカは蝶の羽根を、カリナは炎禽スパローの羽根を広げた。

 蝶の羽根は大きく、美しい模様が描かれていた。それに対し炎禽スパローの羽根は羽毛でできており、全体が炎に包まれていた。


「ほら、腕を広げてゆっくりと動かすイメージだよ」

「……うん」


 レッカはそう言って一足先に宙に浮く。

 周りを回るように飛んでアドバイスを飛ばすが、カリナの羽根はピクリとも動かない。


「あのねレッカ、今の僕は腕が四本ある状態だよね。ない腕は動かせないんだ」

「え、いや。なんというか、背中に集中を向けて……」

「翼はね、揚力を得て初めて飛ぶんだよ。僕の体は揚力を受けるには重すぎるみたい」

「その揚力を受ける羽根が動いてないんだけど」


 冷めきった目で地面を見つめた。

 カリナは翼を制御できなかった。そもそも、翼で空を飛ぼうとしたのは【統御・錯乱ホーネット】を倒した後だ。

 自分もレッカやフラムのように、空を飛べるようになれば強くなれると考えた。しかし結果は羽根さえ動かない。惨敗であった。

 カリナは羽根を消すと、吐き捨てるように話す。


「もうやめよう、空はお天道様のものだから」

「か、かりな……」


 しかしレッカは諦めきれなかった。

 何でも出来るすごい子何だと知っている。羽根は使えなくても空を飛ぶ方法は他にもあるのだ。


「じゃあさ、例えば、【戦場掌握】で常に自分を空中にワープさせればいいんじゃない? そしたら飛べる!」

「知ってる? 重力ってのは時間が経つほど落ちる速度が加速するんだよ? 時間が経てば経つほど落ちるスピードが早くなっていずれはぺしゃんこだよ」

「じゃ、じゃあ固定は? 【戦場掌握】はものを空中で固定出来るんでしょ? 例えばものを空中で止めてそれに捕まるとか、自分を空中に固定してもいいじゃんか!」

「【戦場掌握】の固定は完全停止。だから生き物を固定したら呼吸も心臓もすべて止まって死ぬよ」

「そ、そう……」

「それにずっと空中にあるものに捕まるなんて、僕の握力じゃ無理だよ」


 スパイダーなヒーローのように蜘蛛の糸を範囲ギリギリで固定して、それに捕まって空中をターザンのように駆け巡ろうとした。

 しかし体重を全て支えるほどの握力はカリナにはない。腕を無理やり縛っても、腕がちぎれるほど痛かったので断念した。

 大きなため息を吐くカリナに、彼女は申し訳なさが込み上げてきた。


「あとできることといえば、ものを固定してそれに乗るとか?」

「乗るって、僕の【戦場掌握】はものを動かせないよ……」


 そこまで考えて、さっきのスキルを思い出した。

 カリナは短剣を取り出すと、察した彼女はそれに【複製】を使う。

 短剣は全長が三十センチ程で、カリナの足がちょうど乗るくらいの大きさだ。

 取り出した短剣に集中を向ける。すると短剣は意思を持ったように立ち上がると、ゆっくりと宙に浮いた。

 そしてカリナの足元で静止する。他の短剣も同じように動かすと、三段の小さな階段が出来上がっていた。


「じょ、冗談のつもりだったんだけどな……」

「ほかにものなんてないでしょ、僕は空を飛びたいんだ」

「これじゃあ空を『歩く』だよ」


 おそるおそる短刀に足を置き、体重をかける。

 静止した短刀は接地しているように動かない。もう片方の足を地面から外すと、カリナは短刀を起点に宙に浮いた。


「浮いた……浮いてるよね!!」

「すごい、すごいよカリナ!!」


 後はバランスを崩さないようにするのみだ。高所から落下したら死んでしまう。

 短刀を足元に持ってきて両足で立つ。短刀を一歩先へ移動させて、それに体重を掛け、また両足で立つ。

 徐々に高度を上げて、階段のように登る。【戦場掌握】に合成された【歩耐性】の影響でつかれることはほとんどない。

 地面から三メートル程の高さまで登ると、足が途端に震えだす。

 レッカはすでに翼を使って空を飛んでいた。


「や、やっぱり怖いね……!」

「それでもすごいよ! これを戦いで使えるようになれば、また強くなれるね!」


 レッカは体を翻す。

 まだ彼女のようにスムーズには動けないが、それでもカリナにとっては大きな一歩であった。


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