職業【遊び人】第四階層を探索する
カリナとフラムは第四階層の探索を行っていた。
相変わらず自然が少なく、直射日光が眩しい。
「それで? 何が入ってたんだ」
「基礎的な魔法が7つだね」
魔法屋で「初心者おすすめ魔法詰め込みセット」という巻物が売られていたため、買ってみた。
そこには全ての属性の最下位魔法が書かれていた。戦闘用の魔法としてはあまり強くないが、普段使いとしては十分に便利だ。
例えば無属性の魔法は「魔撃」だ。「魔弾」とも呼ばれており、これは魔法攻撃力×100%の威力がある、初心者から上級者まで皆が使う魔法だ。
他にも「水打」は簡単な汚れ落としに最適、「風撃」はほんの少し飛べたりする。
「魔撃はいいぞ、私のおすすめだ」
「フラムも魔法使うんだ」
「物理が効かない敵にはな、あぁ言うのにも有効だ」
そう言って目線を上げる。
カリナも釣られるように空を見ると、そこには群となったモンスター。
赤い小さな身体、周囲に炎を纏い自立して飛翔する羽、群となって一体の大きな鳥のように見える影。
炎禽スパロー
HP 30/30 MP 50/50
「可愛いね、スズメみたい」
「気をつけろよ? あいつ、なんでMPが多いと思う」
「え、それって……」
それを察するのは遅かった。空から灼熱の雨が降る。
空気を裂く音が鳴ると同時に、肌を焼く熱が叩きつけられた。
スキル取得
【火傷耐性】
カリナは「不落要塞」によってダメージを受けなかったが、フラムは直にダメージを受けてしまった。
手斧を素早く抜き、頭を覆うように持つ。翼を広げると、素早く飛翔して、手斧を構えた。
「いてぇじゃねぇか! お返しだよ」
手斧を振りかぶり体を縦に回転させて、容赦なくその小柄な体へ切り込む。
群れが散り散りになる。しかし、鳥たちはフラムを囲うように展開する。
炎羽が舞い散り、彼女の周りで意思を持ったように回転すると、背中へと突き刺さっていく。
「うぐっ!」
「大丈夫!?」
カリナは単純なジャンプであれば「戦場掌握」で可能であるが、空を飛ぶことは不可能だ。
こんなことなら「始原同一化」で蜂の羽を使えるようになっていれば良かったと後悔する。
しかしその心配は無駄に終わる。
「【魔族覇気】」
その瞬間、鳥は一瞬翼を動かすのを止めた。空気が張り詰める。
何が起きたのだろうか、フラムの付近が一瞬暗くなった。
腕を伸ばして鳥を蹴散らすように手斧を振る。黒いオーラが斧の軌道をなぞるようについていく。
それに触れた鳥は抗うことができず、力をなくしたように自由落下を始めた。
オーラは全ての鳥を包み込み、光の粒子と化して消えていった。
「おぉ、すごい、すごいね!! そんな技が使えたんだ」
「私は魔族だからな、習得には一苦労だったぜ」
フラムは冷却ポーションを互いの肌に掛け合った。
すると、やけどの痛みは引いていった。
「魔族……思ったんだけどフラムって魔族のなんなの?」
「ん? どういうことだ?」
「レッカだったら亜人族の『ドッペルゲンガー』でしょ? アントは獣人族の『キメラ』でしょ? フラムは?」
「あー、だとすれば私は『魔人』だな。第三階層はきつかったぜ」
そう言うと、フラムは噛み締めるように思い出す。
よく悪魔や魔族は虫に対して弱いという印象があった。彼女が一人であの蟲を倒すのは骨が折れただろう。思い出しただけでもゾッとする。
カリナはフラムを慰めるように背中を撫でる。翼の感触がすべすべとしていた。
「それで、今回はこの鳥を倒していくの?」
「そう思ってたんだけどな。カリナはもう狩り、飽きただろ」
「うーん、どうだろう。嫌なわけじゃないけど、出来ることなら他のことをしたいかな」
「だろ? 実はな、第四階層はなにもないように見えて、これまでのどの階層よりも広い」
「そ、それって?」
「【戦場掌握】で地面の下の方を感じられるか?」
『歩耐性』『常連』『耕作』『ハイジャンプ』を合成した【戦場掌握】は、半径十メートル範囲の情報が分かるようになっていた。それに、やろうと思えば一瞬で移動ができる。しかし空を飛べるわけではないので、空に移動したら落下するし、地面に移動したら埋まる。彼女には「無呼吸耐性」があるので文字通り生き埋めだ。
しかし今はその能力が有効に使われていた。
地面の下に集中をする。そこには空間があることが分かった。それに何かの音が反響している。
意識を凝らせば凝らすほど、地下空間が鮮明に思う浮かぶ。これは洞窟だ、暗くて状況が分からない。
「空間があるね、洞窟かな」
「そうだ、地面に穴が空いてることが少なくて気が付きにくいがな!」
そう言うと手斧をもう一つ取り出し大きく振りかぶる。
膂力が溢れて、その勢いに空気が割れて音が響く。
「『大斧割裂撃』!!」
岩盤が割れて、瓦礫が舞う。
地面が崩れて、人が一人入るくらいの穴ができた。その先には洞窟があった。
「す、すごいね! 今の何、スキル……じゃないよね?」
「あぁ、『技』だ。多分カリナもゲット出来ると思うぜ? スキルじゃないから取りづらいけどな!」
そういって激しく笑った。
二人は深穴の中を見て、覚悟を決めたのだった。




