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職業【鍛冶屋】嘘偽りなく

「なぁ鍛冶屋。俺は、か弱い女の子二人を守るために階層ボスを倒すことに協力したんだったな?」

「そ、そうだね」

「なのにこれはどういうことだ? か弱いはずの女の子に襲撃をくらい、あまつさえ約束の階層ボスは俺の知らない内に倒された。それのどこがか弱いんだよ」

「だ、だって、僕だって必死だったんだよ……」

「必死になれば蜘蛛になれるのか」


 痛いところを突かれて言葉を失っていた。

 現在三人は第三階層を突破し、第四階層へと降りていた。

 そこは乾いた高原だ。岩盤が露出した地表、上空には滑空する複数の影。


「第四階層は飛翔族(フライア)がメインだね」

「これまでスライム、魔獣族(ビースト)虫族(インセクト)と王道な感じがするね、次は水棲族(アクア)かな?」

「話を逸らすな」


 銃で小突かれた。鉄の塊なので普通に痛い。

 なんだよと頬を膨らませるが、彼の目線は鋭く言い返すことができずに肩を落とした。


「しかしなんだ、俺はレッカから武器を奪った反省をする意味合いで階層ボスに挑んだんだ。だが階層ボスを倒したのはカリナだ。これでは筋が通らん」

「犯罪者が筋を語りますー? まぁでもいいよ、私はもう気にしてないから!」

「だが……」

「僕だって武器を装備できるようにしてもらったのに、お礼ができてないよ!」

「だからいいって!」


 語気を強めて言った。二人は肩がビクッと跳ねた。


「これ以上は貸し借りなし! アントは第三階層が突破できたからもう満足! カリナは前にも一体でしょ!」

「そうか、悪いな」


 銃を大切そうに撫でるアントを見て、レッカは誇らしげな顔をする。

 カリナはレッカの言葉に体を震わせたが、レッカの気にしていない様子を理解して胸を撫で下ろす。

 話はおわりと言いたげにレッカはそっぽを向いた。しかし、アントが渋々話し始める。


「申し訳ないが、俺は先にログアウトする」

「ほんと? もう少しで僕の友人に会えるんだけど……」

「悪いが、明日早く起きてスキルを集めようと思ってな」


 彼はカリナを見つめてそういった。

 当の本人は首を傾げたが、レッカは静かに何度も頷いていた。

 実際現時刻は零時を回っていた。むしろ今の今まで元気なままゲームをしている二人のほうがおかしいほどだ。

 二人は寂しそうに手を振る。


「迷惑かけたな、また」


 そう呟いてログアウトしていく。

 カリナは不思議な感情を抱いていた。会った当初は印象が悪かったが、今となっては別れが寂しい。

 数時間の付き合いにも関わらず、もっと一緒に遊びたいと思えたのは彼の愚直な性格だ。


「素直じゃないね」

「ん? 何が?」

「アントは負けず嫌い何だと思うよ! 明日の朝、アントから呼ばれちゃったりして」

「なんで僕を呼ぶの、一人で遊びたいんじゃないの?」


 鈍感な彼女にレッカはからかうように笑った。

 ムッとした彼女をなだめるように話す。


「アントはカリナに負けたくなくて張り切ってるんだよ、【遊び人】がどうやってスキルを集めてるのか参考にしたいとも思うしね。もちろん、私も同感だけど」

「僕のことなんて気にしてないと思ってたよ、あんまり表情に出ないし」


 アントの表情を思い出す。

 彼の表情筋は固く滅多なことでは動かない印象。レッカとは真逆だ。


「そんなことないよ! めっちゃ見てたよ、口開けて驚いた顔してさ!」


 目を指で広げてアントの真似をするレッカを見てクスリと笑う。

 人のいいところを見つける天才何だなとカリナは感心していた。

 そんなことを言いながら話していると、突然レッカがカリナの手を引いて指を指した。


「ねぇ! カリナの友達って魔族だったよね? あそこで飛んでる人、そうじゃないかな?」

「ほんと? どれだろう?」


 手で傘を作って目を凝らす。

 地面を照りつける太陽光は眩しいが熱くはなかった。だが、空気が乾いて仕方がない。

 目線の先にいた影は、こちらに気がつくと、スピードを上げてこちらに向かってくる。カリナはその姿を見てほくそ笑む。


「遅いじゃねぇか! カリナぁ!!」

「ごめんね、ちょっと遊び過ぎちゃった」


 急ブレーキをかけて現れた魔族。

 翼をしまうと華麗に地面に着地した。二人はそれを見て思わず拍手をする。


「お疲れ様、フラム」

「そっちこそ! てめぇだけで楽しみやがって!」


 カリナの肩に手を回し体を揺らす。

 ゲラゲラと笑うフラムが、隣にいるレッカの存在を認識すると、目を丸くさせた。


「そちらは?」

「紹介するよ、僕の装備を改良してくれた優しい人なんだ」

「亜人族のレッカだよ! フラムさん、だったよね? よろしくね!」

「……?」


 フラムは眉を潜めてじっとレッカを見つめた。

 視線の置き場に困っているレッカをよそに体をなぞるように見る。


「ふ、フラム……どうしたの?」

「いやぁ、レッカ、さん。あんたどっかで見た覚えが……」

「い、いやだなぁ! そんな事ないと」


 そう言い切る前に、フラムは目を見張って驚愕した。

 途端に翼が溢れ出て、フラムの異変に首を捻った。


「も、もしかして! 【錬金術師】のレッカさんですか!?」

「え?」

「だ、誰だろう……? もしかして人間違いじゃ……」


 フラムはそんなレッカの言葉を無視して腕を無理やり掴むと、腕が千切れんかとばかりに振る。

 彼女の嗅覚は正しかったが、カリナは訳が分からない様子で目を点にしていた。

 レッカはフラムの腕を解くと、咄嗟にカリナの陰に隠れた。


「ま、間違いない、レッカさんですよね! いつも見てます、昨日上げてた『スライムの素材だけでスライム装備作ってみた』の動画も見ました!!」

「し、知らない……」

「今日は赤い鳥はいないんですか? やっぱり声すごく好きです!!」

「知らない、知らない」


 レッカの目は曇り、フラムの言葉はすでにどこ吹く風だ。

 カリナはレッカとフラムを遮るように立ちふさがるが、魔族の圧を間近で感じた彼女は目を回す。


「ね、ねぇ……助けて」

「レッカ、いつもの元気がなくなってない?」

「この魔族、圧が強いよ……」


 泣きそうな表情を浮かべるレッカを追い詰めるように、ジリジリと近づく屈託のない笑顔を浮かべた魔族。

 これでは事案になりかねないと不安を抱いたカリナは、二人を収めるべく第四階層の町へと向かったのだった。


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