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職業【遊び人】遊び人ですが、なにか?

「アント! 大丈夫!?」

「遊び人、あんたなにした!」

「周りのモンスターを倒してたんだよ! 加勢するね!」


 周囲の敵を倒したレッカとカリナの二人はアントの後ろへと走り、即座に発泡する。

 二人の火球による攻撃は蟲に当たりはするものの、ダメージを与えているような手応えはない。

 いつものようにモンスターを召喚していく。新たに召喚可能となった蜘蛛を召喚しようとして、アントに手で止められた。


「まてっ!」

「なんで!?」

「あいつは階層ボスだ、あんたみたいに虫系(インセクト)モンスターを統率できるかもしれないだろ!」


 カリナの召喚した蜘蛛は召喚主の意思に従い蟲に牽制を仕掛ける。

 しかし、アントの危惧した通り蜘蛛は糸が切れた人形のように静止した。


「ほ、ほんとだ。ごめんね!」


 そういって蜘蛛を消滅させる。

 アントは「消すこともできるのか……」と困惑を声にしていたが、戦いとは関係ないため無視する。

 カリナはスライム、イノシシ、鹿の三種のモンスターを召喚して牽制を続ける。役割を分担し、防御・遊撃・攻撃を担わせる。

 さすがの階層ボスも数の暴力に抗しきれず、自由になった三人と鹿による攻撃で体勢を崩した。


「いまだ、行くぞ!! 【純白の魔法陣】」


 アントの足元に白の魔法陣が展開される。

 その上に立って魔法を放つと、魔法が遅れてもう一度放たれた。


「この攻撃強くない!? 最初っから使っといてよ!!」

「はじめからMPを無駄に消費するやつがいて溜まるか」


 アントの放つ魔法は桁違いの出力を誇っていた。職業【銃使い】というのは本当だったようでカリナは感化されていた。

 しかし蟲は狡猾にも消耗戦を続ける気は無いようで、けたたましい奇声を上げると突如として黒の粒子が現れる。


「もう、また!?」

「カリナ、どうしよう! 仕切り直しになっちゃう!」

「どうにかできないのか!」


 そこには、三人を取り囲むように蜂と蜘蛛の群れが出現した。

 その集団は召喚の勢いのまま襲いかかってくる。しかしそれを看過できる状況ではなかった。


「もうその手は見切ったよ!!」


 カリナの取得した「統御」のスキルを使えば、召喚されたモンスターの意思は意のままだ。

 三人に襲いかかってきたモンスターだったが、近くに近づくにつれて、光の粒子とともに消えていく。

 当の本人はせっかく召喚されたモンスターを倒してしまうことに罪悪感を感じていた。しかし二人の様子はそんな甘いものではない。


「な、なんで! なんで倒されていくの!?」

「遊び人お前……常軌を逸しているな」


 驚嘆の様子の二人をおいてカリナは蟲に攻撃を続ける。

 蟲は召喚が無駄だと理解すると、唐突に魔法を連発してきた。緑色をした斬撃が三人へと襲いかかる。

 アントは自慢の脚力で縦横無尽に回避するが、二人はそうは行かない。モンスターを召喚しては盾として使っていく。残虐ではあるが、最も合理的な選択だった。

 しかし魔法陣から離れてしまい、攻撃回数は減ってしまう。


「【鷹の目】」


 アントは右目を充血させた。そのスキルは相手の位置とステータスが分かるスキルであった。

 階層ボスのステータスは召喚された際だけは表示されているが、それ以降は分からなかった。

 しかしこのスキルを使うことにより、相手の体力があとどのくらい残っているのかが分かるのだ。

 それをみたアントは、口角を上げる。


「行けるぞ! 体力がもう四分の一まで減っている!!」

「アント、目が血走ってるよ!」


 カリナはそれを聞き、最後の攻撃を仕掛けようと模索する。

 だが、蟲は標的をカリナに向けると突撃を仕掛けてきた。


「うそっ!」

「カリナ!」

「遊び人!!」


 カリナの正面まで来ると、胴の先にある針で刺そうとしているのが分かった。

 逃げ場がないと、一瞬表情を歪める。


「【ハイジャンプ】」


 苦渋の選択だが、直接ダメージを与えられるよりかはいいだろう。

 あの攻撃が防御力を無視するものであれば、カリナの体力は極小のためダメージを負った瞬間にやられてしまうのだ。

 しかし空中に浮いた体に追撃しようと蟲はその体を捉える。


「初めてだけど、上手く行くかな」


 レッカとアントはカリナの最悪の結末が脳裏をかすめていた。

 それは当然だろう。二人はカリナが高く飛べるスキルを持っていることを知らないため、蟲による攻撃で浮かされたと思っているからだ。現に中空で動けなくなっているカリナに対して、蟲が追撃を仕掛けようとしていた。

 しかし、それを目にしていた。

 カリナの燃えるような熱い視線、笑顔の彼女に彼らは自ずと動くのを忘れていた。


「【始原・粘糸スパイダー】」


 その姿を見た途端、蟲は動きを止めた。

 なぜなら、カリナが蜘蛛を召喚したと思っていたからだ。蜘蛛であれば自分の力で支配可能であったからだ。

 それはあまりにも愚かな考えであったが、そこが虫と人とを分ける境界だと言える。

 カリナは心を踊らせていた。自分の策が上手くいく気しかしていなかったからだ。


「【始原顕現(プロベール)】」


 彼女は知らなかった。

始原顕現(プロベール)】とは己の内に存在する『始原』の力を引き出す能力であり、それは生物のイデアをこの世に召喚する能力であると。

 カリナは理解する。【始原顕現(プロベール)】とはモンスターの姿になる『始原系』スキルとの相性が抜群であることを。

 全長五メートルの巨体になった自身の身体を最大限までしならせ、蟲へと攻撃を仕掛ける。

 その瞬間、勝敗はもはや覆らなかった。

 蜘蛛特有の六脚の動かし方を瞬時に理解したカリナは、その五つの脚で蟲を拘束する。

 そして最後の一本脚の使い方は、すでに目にしていた。

 その脚は蟲の体を貫き、爆風を上げる。蟲の体が地面へと叩きつけられて、土砂が舞い上がった。



【第三階層ボスの討伐に成功しました】



「嘘でしょ……」

「やりやがった……」


 脚に貫かれた甲鎌針禍蟲は体をひくつかせて、動きを静止した。

 光の粒子と共に姿が消えている。

 人の姿へと戻ったカリナは、討伐に成功したことを確認すると、一人歓喜を隠しきれなかった。


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