職業【銃使い】FPSを始める
破裂音が森の中を轟く。近くを何度か打たれた。犯人に動く気がないから助かっているが、もし陰まで迫られたらやられる。
「そもそもPVPってできないんじゃ」
リリースされて数日。まだこのゲームにはPVPは実装されていない。PVPではプレイヤー同士が戦うことができる。勝利すると、相手のアイテムやスキルを得ることができるらしい。
しかしまだPVPは実装されていないだけに今プレイヤー同士で争ってもメリットはない。
「銃を奪いたいんでしょ! 生意気だね!」
「黙って出てこい!」
先程の銃声とは変わった、連続した破裂音が響く。
威力は低いが、命中率を上げるためのいわゆるフルオートに変更したのだろう。
カリナはFPSの経験が少しだけある。もし二人を倒したいのであれば、こういうときは潜伏して相手の姿を確実に捉えた上で撃つべきだ。
だからこそ彼のやりたいことが分からないと、カリナは頭を悩ませていた。
打開策が浮かばない。
「カリナ、モンスターを召喚できる? 相手の武器は銃だから、目標を分散させるのが強い!」
「それだ!」
カリナは計十五体のモンスターを慣れた手つきで召喚する。これではまるでテイマーだ。
命を使い捨てているため、テイマーの足元にも及ばないであろうが。これも戦略だと割り切る。
召喚されたモンスターたちはあたりに散らばると、そのままの勢いで犯人へと体当たりを仕掛ける。
しかし、犯人の技量は凄まじい。フルオート銃の連射は凄まじく召喚されたモンスターを一秒もかからず仕留めていく。
召喚を途切れなく続けるが、これでは千日手だ。相手のMPが切れる可能性があるためこちらの方が有利か?
そう考えていると、突如として爆発音が鳴り響く。
「くっ!!」
激しい閃光とともに木々が倒れていく。手探りで、まだ折れていない木の陰に隠れていく。
しかし爆発は途切れることなく発生する。「爆発」の魔法だろうが、これほどまでに連発できるなんて、途方もないMPを持っているようだ。
「大丈夫!?」
「大丈夫だよ! どうするレッカ、このままじゃ押されてやられちゃう!」
「任せて! カリナはそのままモンスターを召喚しててね。【複製】」
レッカの方を見ると、笑顔でピースをこちらに向けていた。こんなときなのに強い人だ。
爆発が一通り止む。カリナはとめどなくモンスターを召喚していく。しかし、少し変だ。先程と違ってモンスターを召喚した瞬間に、そのモンスターに魔法がかかっているような気配。
それにおかしい。僕が召喚できるモンスターの数は、一種類につき五体ずつのはずだ。なのに……
「くっ、数が多い!」
「手数で責めさせてもらうよ!!」
モンスターの数がどんどんと増えている。おかしい、地面を覆い尽くすほどの数だ。それも全てが意思を持って敵の下へと向かっていく。
「【模倣】」
彼女の手元に黒く光る武器。あれは銃だ。どうして彼女が持っているのだろう。
銃声がモンスターに向いた瞬間を狙って銃を撃っている。しかし銃の扱いは素人なのか、犯人には当たっていなかった。
「カリナ、安心して!」
「えっ!」
後ろを振り向くと、レッカがいた。
おかしいと思って再度振り向くがそっちにも赤髪の彼女がいる。
どういうことだ、レッカが増えている。それに銃が増えているではないか。
「【転写】」
声がした方を見ると、そこにもレッカがいた。犯人の目の前だ。彼女の背には先程見たような緑の蝶の羽。そして手元には例の銃だ。
カリナの頭が情報でパンクしそうになっていたが、その時には決着がついていた。
「【鏡像】」
羽を使い宙に浮くレッカは、銃を男の方に向けていた。
男は同様に銃をレッカに向けていたが、険しい顔をしている。
「ど、どうして」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「降参だ」
背後にいたレッカが答える。
「私、ドッペルゲンガーなんだ」




