職業【鍛冶屋】詐欺にあう
カリナは第三階層の町に来ていた。それは虫根絶のためであった。敵を見据えたカリナは行動が早い。
彼女は大の虫嫌いだった。それは子供に人気のある蝶であっても同様、とにかく虫という属性が苦手なのだ。
町の中心にある魔法屋に入ると、早速巻物を一つ手に取った。
「これください」
「あいよぉ!」
魔法獲得
【火球】
どのゲームにおいても、虫は火に弱いのだ。そうに決まっている。
これで虫を討伐しまくって「虫致死」や「虫無効」などのスキルを得ることができれば、虫に対して無類の強さを得ることになる。
そうなれば、カリナに近づく虫を根絶することができる。虫を見ることなくゲームを進めることができるのだ。
「打倒、虫」
怒りに燃えているカリナのもとに、一通のメッセージが届いた。
冷静になりメッセージを見てみる。それは珍しい人からであった。
『カリナ、久しぶり! 急でごめん!! クエスト詐欺にあって困ってるから手伝ってくれない?』
メッセージの相手はレッカのようだ。
クエスト詐欺とはなんだろう? とカリナは頭を捻った。しかしレッカのためになるのであれば、動かないわけには行かない。
そう思いメッセージを急いで返した。
『僕にできることがあれば手伝うよ!!』
「ありがとう! じゃあよろしくね?」
「うわーっ!」
背後から急に声がした。振り向くと、そこにはニヤニヤと笑ったレッカがいた。
「どうよ! 驚いたでしょ?」
「なんで驚かせるのさ。ところで、どうして僕がここにいるって分かったの?」
「スキルのおかげだよ! スキル『追跡』っていって、自分が作った武器を持っている人の居場所が分かるんだ!」
「通りで……」
すごいでしょ! とレッカは体を押し付けて画面を見せつけてくる。ゲームの世界のはずなのに不意にいい匂いがして背徳感に駆られる。いくら同性だからってもう少しは貞操観念を持ってほしい。
「ん? それって、常に僕がどこにいるか分かるってこと?」
「え? あー、別にストーカーしてるとかじゃないんだけどね? 今はちょっと困ったことがあるんだよ! だからちょっと手伝ってほしいなーって」
ストーカーしてるんだねとは言えないカリナであった。レッカはソワソワと両手で指を絡ませる。
カリナは冷たい目で見るが、それを気にしない様子でレッカは話を続ける。
「カリナはクエスト詐欺って知ってる?」
「知らないね、なにそれ?」
「クエストで武器の作成を頼まれたんだけどね、完成した武器を渡した瞬間にクエストを破棄するとクエスト未達成になるの」
「それがどうかしたの?」
「クエスト未達成ってことはつまり報酬がもらえないってわけ!」
「そ、そんな問題があるんだね! 致命的なバグだね……」
「でしょ!? 職業にはモノを作ることに特化した人も多いから、今急遽運営が対処してくれてるんだけどね。だから武器奪っていったやつを懲らしめたいの!」
腕をブンブンと振り回す、怒りを体で表しているのだろう。
しかし彼女、なかなかにストーカー気質なのではと考える。だがカリナは賢いため声には出さないのだ。
「というわけで手伝ってくれない? 報酬も支払うからさ!」
「もちろん手伝うよ。けど報酬はいらないかな」
「えー、なんで!? そんなの悪いよ!」
「それはこっちのセリフだよ。まだ剣と鎧を作ってもらった恩が残って……」
そう言いかけて、思い出す。
そうだ、「始原顕現」の効果で剣を折ってしまったんだった。
途端に口を紡ぐと、疑問に思ったのかレッカは首をかしげた。
「ん? どうしたの?」
「え!? あ、いやー……」
どうしようかとあたふたとしてしまう。
職業【鍛冶屋】という武器を作ることに特化したような人に、武器を壊したと伝えてはどんなことをされるか知ったことではない……
非常にまずいと冷や汗をかく。
しかし、こういうときに限って、彼女は鋭いのだ。
「あれ? スライムの剣、腰に据えてあったよね? 剣どうしちゃったの? 売っちゃった?」
「あ、あのー……」
「ふふん! なんてね、知ってるよ? 壊れちゃったんでしょ?」
「えっ!」
レッカはそう言うとカリナの頭を撫でた。レッカの身長はカリナに対して少し高い、故に姉のような安心感を抱いてしまってどこか悔しい思いを抱いたのだった。
「私は鍛冶屋だからね! 自分が作ったアイテムについては使ってる人よりも詳しいよ! 大丈夫、スライムの剣は簡単に壊れる粗悪品だったし、また武器作ってあげるね?」
「で、でもそうするとレッカに貸しをもっと作っちゃうことになるんじゃ」
「だからいいって! 前回の報酬はちゃんと前回すでに受け取ってる! 今回は私がカリナの武器を作る、その代わりに武器を奪っていった犯人を捕まえるのを手伝って?」
「……! う、うん!!」
そう言うとレッカは、僕の腕を無理やり掴んで握手をした。
「交渉成立」と笑顔を浮かべるレッカに対して、なんて小悪魔だとカリナは思ったのだった。




