職業【遊び人】第三階層に姿を表す
生い茂る木々、風に揺られて雑草が躍る。木漏れ日から感じる太陽の暖かさだけを唯一の救いとするここは第三階層。
「『大きな木の下』ってどこ……!?」
第三階層は辺り一面の森林だった。
フラムと約束した「第三階層の大きな木の下」を探そうと、目を覚ましたカリナは第三階層へと上がってきていた。
しかし大きな木の下と言われても、どこを見ても木しかないこの場所で探すのは苦だ。無茶なことを言うなとカリナは悪態をついていた。
一旦は気持ちをリセットさせるために、第二階層のボス戦でゲットしたスキルを見てみる。
スキル
【自爆】
「自爆」はスキルにしては珍しく「技」であった。その効果は自分の体力を全て消費して放つ無属性の魔法攻撃らしい。確かにこれは魔法として存在していても使うことはない、だからスキルとして存在しているのだろう。しかしカリナにも用途はなかった。
そして「自爆」はもうどうでもいい。一番の問題は「始原顕現」だ。
スキル
【始原顕現】
取得条件
階層ボスを初めて討伐。戦闘開始から5秒以内に討伐。ダメージを受けずに討伐。装備をせずに討伐。直接触れることなく討伐。一人で討伐。
以上の条件を全て達成。
効果
一分間、全てのステータスがとても大きく上昇
僕はとんでもないスキルをゲットしたのだろうと目を見開いた。
それもそのはず、取得条件の難易度が異常に高い。狙った訳では無いが、結果的に異常なスキルを取得してしまった事に、何者かの意思があるのではないかと疑ってしまった。
というか長く感じた戦闘も、あれで五秒しかなかったのかと驚く。
こんな明確な条件のスキルをゲットしてしまうなんて、人工知能に見られているかもしれないが、そうだとすれば人でなかっただけマシ。嬉しい限りだ。しかしこんなにも簡単に強くなるのだろうか? 他のプレイヤーも同じように強くなってるんだろうなと考えるカリナであった。
しかし、そんな考えは一瞬にして吹き飛んだ。
それは第三階層の一幕であった。
「モンスター、かかっておいで!!」
スキル取得
【挑発】
いつも通りスキルを取得してモンスター刈りをしようとしていたカリナであったが、獲得したばっかりの「始原顕現」を使ってみたかった。
そのため「始原顕現!」と叫ぶと、心の内側からふつふつと煮え立つような熱い何かを感じた。
気力や氣のようなものであろうとカリナは考えていた。そんな彼女の背後に、一匹のモンスター。
耳元をかすめたその存在は、カリナにパニックを起こさせるに充分だった。
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
それは二対の大きな羽に、緑の美しい模様、しかしカリナに新たなトラウマを植え付けることとなった蝶のモンスター。
草色アゲハ
HP 50/50 MP 25/25
カリナは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の虫を除かなければならぬと決意した。
彼女は生粋の虫嫌いだったのだ。
そうしてスライムの剣を片手に握ると、虫のいる方へと思いっきり振り上げた。
すると、剣は暴風を立てて、粉々に砕けた。
「えぇぇ!?」
爆発したかのような音が発生し、カリナが体勢を崩す。
森林が悲鳴を上げて崩壊していく。砂埃が巻き上げられて、一瞬にしてその場の視界が失われた。
虫どころか、その場全てが轟音を立てて崩れていく。木々が吹き飛び、草が巻き上げられて、土が風に乗り暴れ回っていた。
竜巻が発生したような勢いに、カリナは頭を抱える。そんな彼女の頭部には何匹もの蝶が風に煽られ機動力を失っていた。
しかしその蝶たちも勢いよく衝突してきた丸太や風のエネルギーを受けて、羽を穴だらけにした末、光の粒子となって消える。
そして気がつくと、視界が開かれていた。
カリナを中心とした半径十メートルの範囲が更地となっている。そして半径二十メートルの範囲の木々が全て折れて太陽光が降り注いでいた。
「うん。この技は、使わないようにしよう」
カリナは「ごめんなさーい!」と叫びながら、即座にその場から逃げていった。




