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職業【遊び人】毒を喰らう

 カリナ達は町まで歩いて向かっていた。町にたどりつくまでに、これまでのことを全て隠さず話した。フラムのことは信用しているため、隠さなくても良いだろうと思ったためだ。

 当然彼女は驚いていたが、それ以上に興奮した様子で話を聞いており、熱い人だなと再認識した。


「要はスキルを簡単に手に入れられるってわけか」

「そうそう! ところで、第二階層のボスを倒すって言ってたけど、一緒に戦ってくれるの?」

「私はすでに第二階層のボスを倒してるんだ、だから直接手伝うことはできない。だけど、カリナがボスを倒すスキルを手に入れる手助けはできる!」

「それに魔法が必要なの?」

「そのとおり! まぁカリナは魔法を使うMPがないから厳密には違うんだけどな!」


 町にたどり着くと、フラムは魔法屋をスルーして道具屋へと入っていく。

 道具屋は現実世界でいうところのホームセンターみたいなものだ、なんでもあるので困ったときには重宝するだろう。

 カリナは魔法屋に行くと思っていたのできょとんとした顔でフラムを見つめた。しかしフラムが一つの小瓶を手に取ると、眉をしかめた。


「フラム、それなに?」

「毒だ!!」

「だよね。それ、どうするつもりなの?」

「まぁ急ぐな! とりあえずあるだけ買うぞ!!」


 フラムは小瓶を抱えるだけ抱えるとレジにおいた。途端に「チャリーン」と定番の効果音が流れると同時に小瓶が消えた。どうやら自動で所持品の中に入ったようだ。


「あれ? でもこの毒、僕が使うんだよね? お金払わなくていいの?」

「あぁ、大丈夫大丈夫! 毒なんて買う人普通いないから、超安いんだ!」


 聞けば一つ10Gだそう。確かに安いのは安いが、こういうのは値段ではない気がする。僕が払うと言っても聞いてくれなかったため、ここは貸し一つと割り切ってもらった。

 ほんとにマイペースな人だが、こういうところが職業【先導者】に反映されたのだと思うと妙に納得してしまうのだ。

 僕は言われるがままに彼女についていくと、町の外へと着いていた。


「準備は終わり?」

「あぁ、とりあえず私の言う通りにしてくれるか?」

「了解」


 フラムは目の前を指差して跳ね上げるような動作をしながら「スライム召喚」と唱えると、スライムが現れた。

 すかさず左腰に据えてあった手斧を振りかぶってスライムを叩き切った。「ドゴッ」と音を立てて地面がえぐれた。なんてことをするんだと目を見開くが、その瞬間僕にも聞こえるようにスキル取得音が響いた。


「今、スキルを取得した。カリナも同じように召喚したモンスターを攻撃してくれ」

「わ、分かった!」


 僕はスライムを眼の前に召喚すると、剣を握る。


「ご、ごめんなさい!!」


 目を瞑って剣を振りかぶる。剣がスライムに触れた瞬間「パンッ」と音を立てた。倒したのだろうか?



 スキル取得

【生贄】



「お、なんかゲットしたよ! 『生贄』ってスキルみたい」

「いけにえ?」

「ある程度倒したモンスターの能力を奪えるみたい? っておぉぉ!」



 スキル取得

始原(しげん)・スライム】【始原(しげん)・飢餓イノシシ】



「な、なんかすごい! すごいスキル手に入れたよ!! これ? これのこと言ってたの!?」

「え、知らないぞ……いけにえってなんだ?」

「え?」


 そんなことを言っていると、もう一度スキル取得音がなった。


 スキル取得

【裏切り者】



 このスキルの効果は召喚したモンスターに自分の能力を付加することができるらしい。

 例えば、自分が状態異常にかかっていればそれを付与したり、逆にスキルによって防御力を上げていたら、それを反映させることができるらしい。

 「要塞」などを付与してカチカチのスライムを作ることができるということだろう。


「もしかして、【裏切り者】ってやつ?」

「そうだ……あんたほんとにスキルをバンバンゲットしやがるな、このスキルなんて最近上位勢に見つけられたんだぜ? なのに関係ないスキルまでゲットするなんてな……」

「あ、あはは……」


 とりあえず笑ってやり過ごしといたが、フラムはため息をついていた。


「そんなことより、私の作戦だ。これを飲め!」


 そう言って渡されたのは、例の毒が入った小瓶だ。やはりこうなるのか……

 カリナは静かに頭を振るがフラムは悪い顔をして何も言わない。どうやら僕がこれを飲むことは決定事項のようだ。諦めて小瓶に口をつける。

 毒には粘性がありゆっくりと喉へと流れてくる。舌がピリピリと焼けるように痛い、それに体力がどんどん失われていく感覚がする。

 小瓶を飲み干したが、眼の前がゆらゆらと揺れている気がする。手先が痺れる感覚が始まった、毒になるだけでこんなに体に異常が起きるなんて、状態異常の強さを恐れ知った。


「こ、これ気持ち悪い……毒ってこんなに強いの?」

「いや、普通毒を飲むやつなんていない。だからより強く効いてるんだろ」

「それなら良かった」


 普段の戦闘では、毒になるだけで戦えなくなるわけではないようだ。そう思うと少し楽になる。しかしそんな心配は今後しなくてもいいようだ。


「回復!」


 フラムがそう唱えると、気分が晴れる気がした。回復の魔法のようだ、体が芯を取り戻していく。

 そして、いつもの音が流れた。



 スキル取得

【毒耐性】



「毒耐性、ゲットしたよ」

「もっともっとだ!」


 フラムは更に多くの小瓶を渡してきた。

 僕の気持ちも知ってほしい、そう思いながらも黙って小瓶を飲み進める。



 スキル取得

【毒半減】



 徐々に毒による体の変化が減っていき、次第にスルスルと飲めるようになっていた。

 いつまで立ってもお腹はいっぱいにならないのでいくらでも腹に入る。そうしてついに、



 スキル取得

【毒無効】



「来たよ! 毒無効!!」

「まだまだ! もっと飲める!!」

「う、嘘でしょ……?」


 そうして小瓶が全て空になると同時に、最後のスキルを取得した。



 スキル取得

【毒の体】



「きた! どくのからだ?」

「そうそう! それだよそれ!」

「な、なにこのスキル」

「『毒の体』は毒無効かつ自分が常に毒状態になっているって能力なんだ! 状態異常にかからない秘訣は常に状態異常にかかっておくってな!」

「いや、訳分からないんだけど……」


 二人は当然のように「毒の体」の取得を喜んでいる。しかしこのスキルの珍しさに彼女らは気づいていなかった。

 このゲームにはスキルにレア度というものが組み込まれていた。これはこのゲームが人工知能によって制御されており、特定のプレイヤーが強くなりすぎないようにするための仕組みだ。

 しかし、カリナの職業である【遊び人】は人工知能の制御の枠を超えて強くなることが可能であった。

 カリナが取得していた【魔獣致死】や【要塞】は『上位級(アドバイス)』というレア度だ。これは普通のプレイヤーでも頑張れば取得することができるスキルだ。レッカの言っていたプレイヤーの方針を決めるスキルというのはだいたいこれ以上のレア度のスキルのことを言う。

 それよりも上位のスキルである【毒の体】や【始原・スライム】は『希少級(レア)』というレア度だ。『希少級(レア)』のスキルを持つプレイヤーはこのゲームでも数少ない。

 これらのスキルはプレイヤーの方針どころか、戦闘の勝敗を分ける重大な要素である。これを取得しているか否かで強さが大きく変わる。

 しかし、カリナは『希少級(レア)』以上のスキルを持っていた。それは【粘性之王(スライムロード)】だ。これは種族としての「粘性生物(スライム)」を支配する力であった。

 このゲームには計二十種類の種族があり、「粘性生物(スライム)」はその一種であったのだ。そのレア度は『固有級(ユニーク)』だ。そしてこのゲームで『固有級(ユニーク)』のスキルを持つものはカリナが初めてであった。

 しかし二人はそんなことなど当然知らない。ここに、職業【遊び人】(バランスブレイカー)が生まれたことを理解しているのは運営と人工知能のみであった。

 フラムは腕を組むと、確固たる態度で語り始めた。


「カリナには今二種類のモンスターを召喚するスキルがある!」

「そ、そうだね。スライムと飢餓イノシシがそれぞれ五体ずつ、かな?」

「そして、今のカリナの体は常に毒状態かつ毒無効、つまり敵にふれるだけで敵に毒を付与することができる!!」

「そ、それ強いね! 確かに、考えてなかったよ……」

「さらに、先程獲得した『裏切り者』は自分の状態をモンスターに与える効果がある。これの意味がわかるか?」

「僕が召喚したモンスターにも『毒の体』は有効ってことだね!」

「そう!! つまりは『毒の体』を持つモンスターを召喚してアタックさせることで、MPを消費することなく毒を振りまくことができるんだ! どうだこの作戦!!」


 彼女はまるで世界滅亡を企む魔王が高笑いをしているように見えた。

 どうやらカリナが強い職業を得たのが彼女の闘争心に火をつけたようだった。

 しかしここまで負けず嫌いを発揮するとは、カリナも想定外だった。


「もう少しほどスキルを取得したら第二階層のボス攻略だ!」

「う、うん! ありがとうね」

「当然のことをしたまでだぜ! 次は第三階層の大きな木の下で会おう!!」


 そう言うと、フラムは翼を出してどこかへと飛んでいった。

 ここで別れるんだねとは、言い出せないカリナであった。

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