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囚執愛 ― 愛してる、だから奪った ―  作者: 婀娜
第二章 距離と優しさ
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第二話 崩れ始める虚勢

昼のオフィス。

ホワイトボードには「米ハイテク株連動仕組債」と大きく書かれていた。


圭介は胸を張り、営業部の面々に向かって笑う。

「これだよ。利回りは高いし、安心して売れる。これからの看板商品だ」


 部下たちは一斉にメモを取った。

だが、一人の若手が恐る恐る口を開く。


「……でも課長、最近ナスダックの動き、不安定ですよね。

 お客様に突っ込まれたら、どう説明すればいいのか……」


圭介は鼻で笑い、豪快に言い切る。


「市場なんて上下するもんだ。長期で見りゃ必ず戻る。安心させろ、数字は俺が取る」


会議室の空気が固まる。

誰も反論できなかった。

その沈黙の中で、圭介の笑みだけがやけに明るく響いた。



数日後の夜。

高層マンションのリビング。

ブランデーを片手に、圭介はニュース番組を眺めていた。


《速報:米ハイテク株、過去最大の下落幅》

《ナスダック、一日で8%安》


 テロップに、手がわずかに止まる。

だが、すぐに笑みを浮かべた。


「ふん……一時的なもんだ」


グラスを傾ける手は、わずかに震えていた。



翌朝。

営業部のフロアに足を踏み入れた瞬間、電話の音が鳴り響いた。


「課長! 顧客からの問い合わせが殺到してます!」

「『元本は守られるって聞いたのに!』って……!」


部下たちが青ざめ、次々とメモを差し出す。


圭介は眉をひそめ、強気の笑みを作った。


「心配すんな。俺が全部対応する」


言葉は強かったが、掌には冷たい汗が滲んでいた。



夜。

クラブのソファに沈み、圭介はシャンパンを煽った。

隣には、新顔のホステス・みくる。


「圭介さん、今日は疲れてる顔してますね」

あざとく首を傾げる声に、圭介は苦笑した。


「客がうるさくてな……でもすぐ戻る。俺に任せときゃ大丈夫なんだよ」


 みくるは微笑みながら、グラスに酒を注いだ。

その瞳に、圭介の知らない冷たい影が一瞬だけ浮かんだ。


──それが、すべての“始まり”だとも知らずに。



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