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プロローグ

うぅ、もうやめてください


ごめんなさい


もう何回同じフレーズを言ったんだろうか。

目の前には鮮やかなくらい赤い血を流している母が倒れている。その奥には散乱した酒と拳を真っ赤に染めた父....いや、私が世界で一番嫌いな男が立っている。


いつもの見慣れた光景だ。いや、違う明らかに様子がおかしい。体がまるで打ち上げられた魚のように跳ねている。そして最後の力を振り絞って何かを話そうとしてる。そして無音の空間に一つの言葉が発せられた。


「ごめ....んね」


そしてそれを見ていたその男はことの重大さを理解したのか酒が抜けたのか、その場を逃げるように去っていった。


この日、母は死んだ。


人生は残酷だ。生きていれば楽しいことが一つや二つあると思っていた。けれどいくら神様に祈っても人に頼っても誰もなにもしてくれない。母だっていつも私たちに謝ってばっかりだ。謝るだけでなにもしてくれない。私は母も嫌いだ。あぁ、もうこんな世界いたくない。


「おかあ.....さん」


静かな静かな空間にか細い声が響いた。


私は死んだ顔をふとあげる。そこには母の亡骸を激しく揺らす1人の小さな影があった。そしてその影がゆっくりと晴れていく。


「お姉ちゃん...お母さん動かないよ」


あぁ....なんて酷い世界なんだ。


私は体が勝手に動いたかのような速さでその子のもとに行き、後ろから抱きしめる。


―――あったかい



私たちは部屋の隅で喉が焼けるまで泣き続けた。そして、徐々に弟の目のヒカリの輝きが薄れていくのがわかる。


「おねえ....ちゃん。僕は...お姉ちゃんがいたから...行きて...いけた。ありが...とう。天国でもいっぱい...遊びたいな。好きだよ」


これが真の最初で最後の笑顔だった。真は震えた手をゆっくりと動かし、私の手に重ね合わせた。私も反対の手で真の頭を撫でながら口を開く。


「うん。。。私たちはずっと一緒だよ。天国でも生まれ変わってもずっと。ずっと。愛してるよ....しん」


溢れ出す大粒の涙を堪えながらゆっくりと口を閉じた。そして手の中にある真の体が冷たくなっていき目から光が失われた。


私も視界がぼやけていき後を追うように...死んだ



ファーストライフ

早川 雪 11歳    死亡

早川 真 11歳    死亡













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