表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の私と聖女と呼ばれる妹〜隣国の王子様は魔女の方がお好きみたいです!?〜  作者: 海空里和


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/39

38.家に帰りましょう

「ロズイエの皆様、ありがとうございました。国が落ち着いたら改めてお礼に伺います」


 オスタシスの病も山を超え、ティナもいる。そしてアーヴィン殿下がすぐに王座に付くことになった。


 殿下の継承の儀は簡略して行われるらしい。その儀式まで見届けていったらどうかと言われたけど、私たちも長くロズイエを空けるわけにはいかないので、ここでお暇させてもらうことにした。


「じゃあ、ティナ、元気でね。ハーブティーと一緒に手紙も送るからね」

「……待ってます」

「ティナも書いてね」

「私がいかに幸せに暮らしているか、いっぱい書いてあげる!」


 顔を少し赤らめながら、ティナがいつもの調子で言うので、私は何だか嬉しいやらおかしいやらで、笑ってしまった。


「……だから、私のことは心配なんてしてないで、お姉様自身の幸せを考えてよねっ!」

「ティナ………!」


 顔が赤いのは、照れていたからなのね。


 私は可愛い妹を抱き締めて、最後のお別れをした。


「元気でね」

「まあ、生きていればまた会えるでしょ!」


 オスタシスとロズイエ。違う国に住む私たちは、そう簡単に会えることはないだろう。


 涙を滲ませていたら、ティナがそんなことを言ってくれたので、私はすぐに笑顔になった。


 ティナも目の端に涙が滲んでいる。


 私はそんなティナの涙を拭うと、また彼女を抱き締めた。


「ティナ、今度こそ幸せに」

「……私は幸せですよ」


 『お姉様がいて』と消えるように呟いたティナの言葉に、増々涙が出てしまった。


「エルダー、そろそろ」


 後ろで見守ってくれていたオリヴァー様が私の肩に手を置いて、合図をする。


 ロズイエの馬車がすぐそこまで来ていた。

 

 お義母様はすでに乗り込まれ、ロジャーが乗口の前で待機していた。


 私たちはアーヴィン様にお辞儀をすると、馬車に向かった。


「ロズイエの聖女と魔女に祝福を!」


 馬車に乗り込もうとしたその時、後ろからティナの声がした。


 振り返ると、ティナが手を上げ、同時に王都中から歓声があがった。


「ロズイエ王国、ありがとう!」

「聖女様、魔女様、万歳!」


 城を囲む声が、こちらまでこだまして聞こえた。


「こんな、いつの間に……」


 オスタシスの城内の人たちも皆出てきて、私たち

を温かく送り出してくれた。


 馬車に乗り込んだ私たちは、その歓声に送られ、オスタシス城を後にした。


 『魔女』と蔑まれ、この国からはいらないとされて追い出されたあの時とは違う。


 温かい歓声に、私は涙が止まらなかった。


 そんな私を優しくオリヴァー様が寄り添ってくれていた。


「ロズイエとオスタシスはまたハーブの貿易を再開することになるわ。あなたたちの学校が軌道に乗るまではまだ時間がかかるからね」


 馬車の中、お義母様が教えてくれた。


「妹さんの専用ハーブは、エルダーちゃんしか作れないから、ロズイエを通して買い取ってもらうけどね?」


 ウインクをして見せたお義母様。私は妹に直接送る気でいたので、ちゃっかりというか、ちゃんとしているというか……。流石王妃様だと思った。


 そうして私たちは途中宿を取りながら、ロズイエの国境まで辿り着いた。


 国境の入口では一台の馬車が待っていた。


「さ、あなたたちはここで降りてね」


 お義母様の言葉に首を傾げると、オリヴァー様から手を取られる。


 どういうことだろう?どこか視察でも行かれるのだろうか?


 疑問に思いながらオリヴァー様を見ると、彼は優しく微笑んで言った。


「約束、果たせるな」

「約束??」

「あなたたち、新婚旅行もまだでしょ? 良い機会だから、休んでらっしゃい!」


 オリヴァー様の言葉にまだ首を傾げていると、お義母様がウインクして言った。


「そういうことだ」


 驚く私は手を引かれて、オリヴァー様と馬車を降りる。


 馬車の後ろには積荷用の馬車も続いていて、着替えやらが準備万端だ。


「いつの間に……」

「ロズに手配を頼んでおいて正解だったな」

「ありがとうございます」


 驚く私を横目に、オリヴァー様とロジャーが会話を進める。


「護衛もロズもいるから二人っきりというわけにはいかないが……」

「当たり前です」


 オリヴァー様の言葉に、ロジャーの容赦ない言葉が飛ぶ。


「マーク領の薔薇ももちろん見に行く。約束しただろ?」

「あ……」


 それは『サンブカ』とした約束。


 覚えてくれていたんだ。


「一緒に行ってくれるか?」


 そう言うと、オリヴァー様は私のドレスの胸にブローチを刺した。


 薔薇を象ったブローチ。オリヴァー様からサンブカへのプレゼント。


 確か、ロジャーに預けていたはず?


 ロジャーの方に目線をやれば、彼は優しく微笑んでいた。


「エルダー、君に見せたい場所がいっぱいある。一緒に見て回ろう。俺たちの新婚旅行だ」


 ブローチを付け終わったオリヴァー様は、私の手を取ると、甘く、優しい笑顔で言った。


「はい! 約束、守ってくださってありがとうございます!」


 私もオリヴァー様に答えるように、満面の笑みを向けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ