今の状況について、一言物申したい。
不意に書きたくなった…。
誤字脱字等あればご指摘いただきたいです。
それは、突然だった。
学校からの帰り道、横断歩道での出来事。
渡っている最中に突っ込んできたのは、トラック、ではなく、猪。そして運が悪いことに、それに突き飛ばされ、私の体は勢いよく近くにあった電柱へ、しかも頭からぶつかる。
私の住んでいるところはド田舎。猪が出るなんてそこまで珍しいものではないが、それでも危険なものは危険。
突っ込まれ、突き飛ばされる間の時間は数秒。吹っ飛んだかと思うと頭に激痛が走り、そこで記憶は途切れる。
ただ、一言物申したい。
私、運なさすぎじゃ無いか…?
そして次に目を開いたときは、見知らぬ天井。
まぁ、病院だし、そこまで病院に行かないからそりゃ知らないわ。というか、生きてたんだ、案外私タフだわ。あれ頭からいったじゃん。ご臨終です、ってなるかと思ったわ。あの猪まじ許さん、もし捕まえたら猪肉、もしくは猪汁にして食ってやる。
なんて自己完結しようとしたのもつかの間、ん?ってなる。
何故なら、まず、病院にある特有の機械とか匂いとか、病室のあの白さとかがない。普通の部屋なのだ。いや、普通といえば語弊となる。どう見ても高級感あふれる内装で、更には今寝そべっているベッドも質が良い。
次に、ベッドの近くにある窓の外。私の知ってる地域の病院なら、病院のそばに庭などない。一回、友達が骨折し、結構重症で見舞いに行った時、窓から外は見えたが、病院の駐車場が見えるだけだった。
しかし、いま外に見えるのは庭。しかも、手入れもきちんとされているらしく、とてもきれいで、更には広さも結構あるのだろう、見渡す限り続いている。
最後に。ふと、私の体は頭以外、どこ怪我したんだろう、と痛む体を我慢して動かしていると、違和感を感じる。
そして、その違和感の正体は。
「…こ、子供になっとる。は…?」
手は小さく、足も小さい。多分、身長も低くなってるのだろう。
立ったら分かるかもしれないが、ベッドから抜け出すのも痛みで難しいし、抜け出せても立つことは難しいだろう。
ちなみに、私の体は頭が重症と思う。包帯巻かれてるし、一番ズキズキするし。だが、次にやばいのは体。多分、全身打撲、もしくはどこか骨折でもてるんじゃないかな。全身打撲も骨折もしたこと無いから、痛みの差なんてわからないし、痛みの度合いでこれはこっちだ!なんてのもできないし。
なんて考えていると、扉からコンコン、とノックする音が聞こえる。
いきなりのことで、とっさに返事、とできるわけもなく、ただビクッとビビることしかできなかった。
幼稚園や保育園レベルのお化け屋敷に、今の年で入ってガチビビりするやつである。今ので悲鳴をあげなかった私を褒めたいくらいだ、なんて思っていると、扉が開く。
「失礼する。やはり、まだ寝て…、いや、おきたか。おはよう、具合はどうだ?まだ体は痛むだろう、大丈夫か?何かあったらすぐ言えよ。」
「っあ、え、は、はい。」
入ってきたのは二十代前半だろう思わしき男性。
入って、私が起きているのに気づいた途端、すごい心配してくれている。まぁ、見た目この体子供ですしね。あ、外見この体何歳なんだろ、と思う。
だが、入って来た男性がどう見ても日本人ではない。目とか髪色黒じゃないし。
そのせいか、はたまた、ただ私がコミュ障なだけなのか、返事の言葉が詰まりまくりである。
「ふむ、起きているなら丁度いい。今、別室で話をララにもしている。君にもしておくべきだからな、連れて行こう。少し痛むだろうが、我慢してくれ。」
「っう、わっ…。」
そう言うと、ひょいと私を別途から抱き上げる。
女子が夢見るお姫様抱っこ、ではなく、片腕に私を腰掛けさせて抱き上げる、という形である。
もうこの時点で、相手はかなり力があること、私はかなり子供であることが分かる。
その後歩き出し、“ララ”とやらに話をしている別室に連れて行かれた。
……今更だけど、目覚めたら知らないところで、子供になっていて、出てきたのは明らかに日本人じゃない男性で、連れ出されて違う部屋、ってやばくないか?
男性につれてこられた部屋は、先程私がいた部屋よりも少し広く、部屋の中央にはテーブルとソファ。
部屋の中には、女性、というか女の子?みたいな子が一人と、周りには5人の男性が。
「…来たか。」
「ああ、起きていたようでな、連れてきた。」
「その子がもうひとりの子〜?まだほんとに子供じゃん!しかも怪我してるし!まだ寝かせておいたほうがいいんじゃないの?」
「む、だが、何も知らないと言うほど怖いものはないと思うが?」
「そりゃあ、そうだけどさー。」
「…ゼフ、イル、そこまでにしておきなさい。殿下、とりあえず、話だけでも進めてください。」
「…ああ。」
何やら完結したのだろう、殿下、と呼ばれた男性が喋り始める。
ちなみに、今の間、体の痛みと、考え事をしててぼーっとしていたことと、なぜかソファに座っている女の子から睨みつけられ、すごい視線を感じていたので、あまり話を聞いてなかった。
ま、問題無いでしょ、って信じたい。
聞いた話をまとめると。
この国、というよりはこの世界は今危機的状況に陥っているらしい。ちなみに“この国”と“この世界”はやっぱりというかなんというか、日本でも地球でもないらしい。
環境の悪化、激しい天候変化に加え、なんと魔王、魔物という存在までいるらしい。更にいえばこの世界には魔法というものがあるのだとか。
実際に使っているのを見たが、すげぇ…!しか出てこなかった。子供だまし程度のマジックでも、タネとか見破ることができず、すごい感動してた私だ。魔法なんて、言葉通りタネも仕掛けもないものを見たら、もとからない語彙力、更に失われるに決まってるさ。現に失われたし。
そして、この危機的状況をなんとかしよう、と思い立ち、古い歴史書を調べに調べ尽くし、『異世界召喚』というものに辿り着いたらしい。
…是非ともたどり着かないでほしかったな、うん。
そして昨日、ついにそれを行い、成功させたらしい。
…というか、昨日のことだったんだ。じゃあ私結構寝てた?
ちなみに、今日の話し合いも、昨日行う予定だったが、問題が起こったのと、とりあえず一日置こう、ということで今日になったらしい。
その問題とは。
成功したは良いものの、本来なら一人のはずが、二人、召喚されたこと、である。
まぁ、見た目的に一発でどっちが本物、って分かったし、何なら魔力測定機というもので測ると、目に見えて結果がわかったのだ。
本物の方、つまり彼女の方が、この国、いや、世界でも並ぶ人がいないほどの魔力の持ち主。
そして私は、ごく普通の一般的な魔力の持ち主であった。
ちなみに、測ったのは私が寝ていたときらしい。
寝ていても測れるんだ、って思ったよ。
そんなこんなでどちらが本物か、っていうのは分かったが、次の問題は私の処遇。本物の彼女の方は、城の方で保護が決まっている。私も、手違いとはいえ、同じ異世界から来たから城で保護、となった。
それともう一つ、問題がある。
それは、私の今の姿。
子供の姿、というのもあるけど、それに加えて、全身打撲、更には頭を強く打ったことにより、その時には血がドバドバ流れていたらしい。
それを見た女の子が、この子虐待されてたのでは!?可哀相!保護してあげよ?って感じで言ったらしい。
え、すごい上から目線じゃん?
いや、実際、今の年齢的には彼女のほうが上だけどね?精神的には私の方が一個上だからね??
ちなみに彼女の名前はララ、らしい。
それを聞いて思ったのが、あれ、この子雑誌に乗ってた読モ?の子じゃない?ってなった。
私は流行に疎かったけど、クラスの子とかはこういうのには結構敏感だった。
前にチラ、ってみたときに、表紙にいた子に似てるな、って思ったけど、そうらしい。
私に自己紹介する時に、
「初めましてぇ、あたし、宝馬らら、っていうの!よろしくね!あ、としは17で、高校2年生なのぉ!読モもやってるんだよっ!」
って言ってたもん。
あ、ちょっと痛い子かな、って思ったよ、うん。
色々とね、うん…。
そんなこんなで、一緒に保護されることになった私。
と言っても、私は特にやることはなく、さらに言えば子供の姿、ちなみに皆さん曰く6,7歳くらいらしい。多分身体的な年齢的はもっと低いと思うが、私の言動からしてもう少し上なのでは、となったらしい。
…私はただ、会話に入らず黙ってたり大人しくしてただけなのに。
あ、それが原因か…。もう少し騒げばよかったかな。いや、でも中身の年齢的には辛いんだよなぁ…。
彼女、ララさんは毎日あの人達、五人と私を連れてきた一人茶会とかしたり、楽しく過ごしているらしい。
ただ、やはり重役を担っている人達らしく、なかなか構ってもらえないらしい。
その八つ当たりが、城のメイドさんや女性の方、更には私に向かってくる。
暴言、クレームは当たり前、ワガママも日常茶飯事。
ただ、城にいる男性やあの六人に対しては、自己紹介でしたあの、地味に痛い喋り方で接しているらしい。
ちなみに、私を連れてきたのはゼフ、その人とあの時会話して、心配してくれたらしい人はイル、その人と双子の兄の人はカル、殿下、と呼ばれた人はファム、そして宰相のフラット。
本名は違うし、これは愛称だが、私が子供で覚えられないだろう、と愛称で呼ぶことを許可してもらった。やったね。
まぁ、もし教えられても覚える気がしないけど。
それと、彼女の本性は、男性でも気づく人は気づくらしい。
現に、その六人は気づいたらしく、あまり彼女に関わらないようにしている、が、彼女の方から関わってくるらしい。
気づいた理由としては、六人はそれはまぁイケメンさん、更にはスペックも高いらしく。
狙ってくる女性は、それはまぁ数えきれるものではなく。
自然と、本性とか分かるようになった、らしい。
ちなみに、私に対しても最初はあの痛い態度で接していたが、あの六人が私に構うこと、甘やかしてくること、そしてそれに対する彼女との対応の違いに痺れを切らしたのか、本性を表したのである。
「ちょっと、黙ってみてれば何なの、このガキ!せっかく、異世界トリップしたのに、イケメンたくさんいるのに!チヤホヤされるのはあんただし!あんたがガキで、怪我とかしてなかったら、そんなにチヤホヤされないんだからね!私が異世界召喚されたのよ!私が主役なの!ガギが、調子に乗るんじゃないわよ!」
いやぁ、まじでびびったね。いきなりこれだもん。
でも本性も痛々しかった、気がするな。
あと、思い返せば、出会った最初睨まれてたし、元からバレているようなもんだな、って思った。
それと、彼女が言っていた、チヤホヤされる、っていうのはちょっと語弊がある。
子供だから、という理由と、更には最初の怪我を見て、虐待されてたのでは、なら俺たちが存分に甘やかしてあげよう、守ってあげよう!という理由、だと思うが、そのせいでとてつもなく甘やかされるのである。
移動に抱っこは当たり前、食事も誰かの手で食べさせてもらったり、膝に座らされたり。
なんなら寝るときとか添い寝だぞ?
この前なんか風呂まで侵入されそうになった。
さすがに必死に抵抗したよね、うん。
だって、中身はそれなりにお年頃の女の子だぜ?
ちょっとそれは…ってなるよね。
そんなこんなで日常を過ごしながら、異世界召喚ライフを満喫?している。
でもね、欲を言うならもう少し、自由がほしいと思うんだ。
ゼフ、あなたは私を毎回抱っこして移動するけど、たまには歩かしてくれ。ただでさえ体力ないのに、よりなくなってしまうじゃないか。
イル、カル、あんたら双子は私に構いすぎだ。馬に乗れたり、庭に散歩とか、城下町に出るのとか嬉しいし楽しいけど、振り回されすぎるんだよ!おまけに、どっか行くたびになにか買い与えようとしたり、くっついたりするのは少し遠慮してくれ。
フラット、あなたは膝に私を乗せて執務をするのはどうかと思うぞ。君の部下がすごい驚いてたじゃないか。集中できるのか。しかも私が黙ってたら、そっちから話題をふる、っていう。いや、集中しろよ。そして私を部屋に返せ。ゆっくりしたいんじゃ、こっちは。
ファム、あなたは王太子殿下でしょう。何夜な夜な私の寝ているベットに来て一緒に寝ようとしてるんですか。あなたの部屋が一番安全なのに。それを言ったら、私を毎夜部屋に連れて行って抱き枕的にして寝るのもやめていただきたい。私は一人でゆっくり寝たいんだよ!毎朝気づけば、目の前にきれいに引き締まった胸板、もしくはその顔面あるのまじでびっくりするんだが。
一人の時間がほしいんだよ!
というか、切実に、自由時間がほしい!
あなた方、わかってるんですか!
私、見た目6、7歳だぞ!
ロから始まってンで終わる4文字の言葉、あなた方に贈りたい。
いや、精神的には違うけど、それでもその事あなた方に言ってないし、彼女にも言ってない。というか誰にも言ってない。
彼女に至っては、言ったらさらに過激になると思うの。
ほら見てよ、あのギラギラな目!
視線だけで人が死ぬなら、私凄い数死んでるわ。無理。
なんて思いながらも、私の今日一日は始まる。
…とりあえず、目の前にある綺麗な胸板、どうしよう。
いや、どうもしないけども。
私は知らない。
あの六人が、実は、私の精神年齢が、今の見た目より高いことを知っているのを。
そして、魔法を使って戻すこともできるが、私の今の姿を堪能したい為、そして今の姿のほうが、周りからとやかく言われない為、そして小さいが故に私が逃げてもすぐ追いつけたり、移動範囲が狭い為に、元の姿に戻さないでいること。
異世界召喚したのは、実は世界の危機とかは全く関係なく、あの六人の“興味本意”、もっと言えば“暇つぶし”の為に行われたこと。
私が異世界召喚に巻き込まれたのは本当に偶然だということ。
さらに言えば、魔王、魔物ともにいるが、人間たちと共存しており、特には問題ないこと。
このあと、ララを魔王のもとに送り込む際、私も一緒に連れられたり、魔王に気に入られたり、他国の人らにも執着されたりと、波乱万丈な日々になり、それすらも日常になるなんて、知る由もない。
とりあえず、一言物申したい。
「あの、全ての原因となった猪、マジ許すまじ。」
猪肉として食ってやろうか。
…え、主人公、名前出てなくない?
あれ?