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神々の遊戯 〜最下層からの下克上〜  作者: スガシラ
第一章 俺が1000年も、こもった訳
12/21

第11話 本気を出してもへたれはへたれ

 “それ”は唐突に起こった。いや、事前に告知されていたのだから必然なのかもしれない。


 『ティン』と聞き慣れた通知音で、俺は目を覚ました。

 メニュー画面に記された日付と時刻は2/2、0:00を指していた。

 “お知らせ”に追加された3つの内容は全て物騒だ。



『シルベルの世界より戦争の申請が届いています』

『ロダンの世界より戦争の申請が届いています』

『タナカの世界より戦争の申請が届いています』



 睡眠を邪魔した上に、初心者の神相手にひどい仕打ちだな。

 1ヶ月前の俺なら『タナカの世界』とは何も考えずに“承諾”を返していたかもしれない。なんとなく、親近感が湧く名前だから。


 焦る必要はないんだ。俺にはまだ72時間の猶予があるんだから。

 これはニート時代に付いてしまった悪い癖かもしれないな。

 つまり、“明日から(起きてから)本気出す”ってことさ。大きな欠伸を一つ挟むと夢の世界へと帰還した。







 1ヶ月の生活で、1日の流れは大体固定化されていた。


 朝起きたらまずは朝食作りからはじまる。10グループで当番制になっているので、早起きをするのは十日に1回のはずなんだが……俺は毎日といっていいほど強制参加だ。

 食材の鍵は俺が握っているのだから、仕方がないんだけどね。


 朝食が終わるとリーダーたちと俺で、その日の役割を確認する。

 狩りに行くグループ、採取に行くグループ、スキルで鍛錬をするグループに分かれる。


 スキル構成は“テレポート”、“鑑定”、“念話”を固定として、もう一つを“剣術指導”、“槍術指導”といったなにかしらに当てていた。

 お目当てのスキルがいつになるかわからないこともあり、狩りや採取のグループにいても、鍛錬したいスキルの日は優先的に参加してもらうようにしていた。

 逆に興味がないスキルの日には、狩りや採取に参加してもらっている。


 スキルとは凄いもので、鈍臭い俺でも、まるで“その”達人であるように体が機敏に動く。

 ただし、対人戦と動かない的に限る……。

 試しに“剣術指導”をとって狼に向かっていったことがある。結果は、なすすべなくやられた……。

 “指導”とつくだけに、教えること以外はからっきしなのだろう。



 今日この日ばかりは、リーダーたちと役割を確認した後に、1万人全員に草原に集まってもらった。

 戦争についての大切な話をしたかったからだ。


 あの日のようにみんなは円を作って俺を囲った。

 1万人の視線はそうそう慣れるもんじゃない。足が震える。



「みんなに聞いてほしいことがあるんだ」



 普段はくだけた感じなのに、この時ばかりは静けさに包まれている。



「俺は……他の世界と戦争をしようと思ってる。出来ることならしたくない。みんなと精一杯生きてる、今の生活だけで満足なんだ。でも……俺は神だから……。戦争からは逃げることができないんだ」



 誰の顔を見ることもできなかった。知らず知らずのうちに俯いて話していたからだ。

 俺の声は震えていたかもしれない。



「ダールっち、顔を上げて」



 静まりかえったその場に、メリハリのない女性の声が響く。

 この声は、フィロルかな。



「なにいってるか聞こえねーぞっ」



 ガラガラ声に、この口の悪さはワーワーだな。



「このへたれーっ!」



 間違いない、ルインだ。



『へ・た・れっ! へ・た・れっ!』



 ルインの言葉に続くようにへたれコールが始まった。



「みんな、うるさい!」



 俺は、はにかみながらそう言った。内心は嬉しくて仕方がなかったんだけどね。



「戦争は俺一人じゃ無理だ。だから……みんな力を貸してくれ!」

『当たり前だっ!』



 泣きそうになった。心の中で何回も「ありがとう」って言った。

 ううん、本当は泣きながら声に出して「ありがとう」って言ったんだ。



 その日、俺は2階層『ロダンの世界』に“承諾”と返事を返した。戦争形式は初めてでよくわからないから、フリーバトルでね。

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