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勇者だった男  作者: 阿国豊山
プロローグ
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叙事詩

 遥か昔。聖なる神々が創造したザラス大陸に突如出現し、非道の限りを尽くしたシュマという邪神がいた。邪神は人間の老婆のような姿をしており、空に漂う人間の怨魂を狂暴残忍な亡霊――葬民と呼ばれたそれを蘇生させ、生ける人間達を無差別に虐殺したのだ。

 葬民に人間の武器は通らない。一方的な殺戮が続き、誰もが生を諦めようとしていたその時、奇跡は起きた。世界を創造したアルター神の霊魂が邪神の悪行をみかね、人々を導いてきた二人の男に対抗する加護を与えたのである。戦士フェンブルには光輝く剣を授け、賢者ペロムには聖なる術を教えた。そして更には二人への補佐として神へ仕えし神獣ビノを戦いに同行させたのだ。

 フェンブルとペロムは三つの強力な支援を用いて葬民を払いのけ、邪神を追い詰めたのだが――


『覚えておけ。ワタシは力を蓄えて再臨し、必ずや生けるものを根絶やしにする。その際はお前達の醜い怨魂を操るこの力を受け継ぐ者も現れるだろう。覚悟していろ』


 邪神はそう言い残すと姿を消してしまったのだ。かくして戦いは一時的に集結した。

 その後フェンブルはメネスという国を建国、光り輝く剣――霊剣の守護へ尽力する。

 ペロムは戦いが終わった後に、アルター神から告げられた世界創造の秩序と授かりし聖霊術を人々へ伝えるべくアルター教会を設立する。

 神獣ビノはフェンブルとペロムへ、邪神が再び動き出した時に自身を起こすよう言伝を残し、メネス国王都ナダン内に建設されたナダン大聖堂の地下にて休眠についた。

 それから二人の英雄は邪神再来に備え対策を講じるに一生を捧げてきたが、遂に晩年まで邪神は現れなかった。

 

 時代が変わり、幾多の争いはあえど人間同士は変わらぬ営みを続けてきた。誰もが邪神は負け惜しみを吐いて死んだと結論付けた現代、状況は一変する。

 ザラス大陸暦九百年。邪神の予言通り葬民を自在に操る人間が出現してしまう。

 一人の男が突如としてメネス王国北部を占拠したのだ。自身をジーナと名乗った。

 全てにおいて謎の人物である。誰一人として彼の住む場所、境遇、邪神と繋がった経緯を知らない。

 そしてアルター教団から編成された聖霊術士部隊がすぐさま討伐へ向かった。ペロムの遺志を受け継ぐ者達がついに初の実戦へ臨んだが、初陣は全滅に終わる。葬民の力は幾年前の戦いの時よりも強大となっていたのだ。

 人々は悟った。邪神が予言通り、長い時を経て復活するのだと。

 普通の人間が束で挑もうと葬民の前では無力。メネス王国を統治するエリオット王家は霊剣を使用する時が来たと判断。そしてアルター教会教皇ケルと協議を重ねた結果、英雄の再来との呼び声高い二人の天才に、かつての戦いの如く命運を委ねる事にしたのだ。

 

 その二人とは、メネス現国王ヴィスター・エリオットの息子ルイ・エリオット王子とシュマの呪印から王家を常時守護するため、アルター教会所属聖霊術士の中から選ばれて王宮に派遣された王家聖守護者、フランク・トローマンである。

 二人は王都中央へ位置するナダン大聖堂地下にて今も眠る神獣ビノを言伝通り起こして、かつてのように助力を求めた。こうして選ばれし者達は二度目のジーナ討伐へ向かったのだ。

 国中が伝説の再来に湧き、選ばれし者達の勝利を待っていたが、運命は残酷だった。

 聖なる神の加護の元にある者らは邪神シュマの手先に破れたのだ。王都を始めとする国内の主要都市は次々と落とされ、メネス王国の国土の大半が悪意の影に覆われた。

 邪神が完全復活し、王国全土が支配されるのも時間の問題であった。

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