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 誰も居ない…。


 ハリソン…。


 ハリソンは!?


 操縦室へ行こうとした俺の腕を、コナーが、さっと掴んだ。


「ミスター・ピート。ここからは冷静に聞いていただきたいのですが…」


 コナーは慎重に言葉を選んでいるようだった。


「結論から言うと、この船の乗員は、あなたしか居ません。あなた1人なのです」


「バカを言うな!」


 俺は怒鳴った。


 俺に寄り添っているメイと目が合う。


 彼女は、にっこりと俺に微笑みかけた。


「ピート、落ち着いて」


 メイが俺の頬に優しく触れながら言った。


「これは、それほど珍しい事例ではありません。あまりの孤独感に妄想が始まり、やがてあたかもそこに現実に存在するかのように感じ始める。あなたの場合、漂流がかなりの長期間に及んでいるので、他の乗組員を造りだし、生活していたとしてもおかしくはない。そう、孤独に殺されないために、生きるために必要だったのです。誰があなたを責めたり、笑ったりできるでしょうか?我々、皆に起こり得ることです」


 コナーの声は途中から、やたらと反響して聞こえにくくなった。


 そうか…。


 今まで…わざと深く考えずにいた…。


 何日も、同じことの繰り返し…刺激も何もない。


 メディカルカプセルに入り、計器をチェックして、寝るだけ。


 何も楽しみが無い。


 気が狂いそうになった。


 そのときにメイを造った。


 俺の理想の容姿を持ち、性格も優しいメイ。


 彼女との愛の日々が始まった。


 それまでよりも、ずっと楽しくなった。


 だが、時間が経つと、2人では退屈になってきた。


 俺はハリソンを造った。


 冗談ばかり言う、前向きなじいさんだ。


 これも上手くいった。


 そして3人目。


 ヘンリーの登場だ。


 これは面白かった。

 

 メイとハリソンと違って、こいつは俺の神経を逆撫でばかりする。


 奴のことを考え、いらだち、悩み憎む。


 あまりにハマりすぎて最後にはどうだ、俺は奴を殺してしまうほどだった。


 傑作だな。


 コナーが何かを喋り続けているが、もう俺の耳には入ってこない。


 メイが俺に身体を密着させてきた。


 彼女の胸が、腰が、太ももが、はっきりと俺には感じられた。


 美しいブロンドをかきあげて、俺に微笑みかける。


 メイが俺の頬にキスをした。


「さようなら、ピート」


 メイが、ささやいた。


 その姿が、ゆっくりと消えていく。


 さようなら、旅の仲間たち。


 俺を守ってくれた仲間たち。




 おわり

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 大感謝でござりまする。

 面白くなったと思います。←手前味噌(笑)

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