5
「まずは船内の安全確認をします。その後、あなたを助けます」
コナーが、俺の目をまっすぐ見て、子供に言い聞かせるように、ゆっくりと言った。
「我々はあなたと戦いたいわけではありません。その銃は、あなたが思っている効果を我々には発揮しませんが、出来れば穏便に進めたいのです。銃を下ろしていただけますか?」
俺は迷った。
が、メイの「ピート」と言う声で、しぶしぶ銃を下ろした。
「それじゃあ、確認してきます」
キャラハンが、そう言って、宇宙船の共用スペースへと消えた。
俺は胸騒ぎがした。
何か大事なことを忘れているような…。
キャラハンをあちらへ行かせてはならなかったような気が…。
そうだ!!
俺は思い出した!!
絶対に見られてはいけないもの!
ヘンリーの死体だ!
コナーとキャラハンは、何故かは分からないが、この船のロックを無効化できる。
ヘンリーの部屋のロックも解除できるに違いない。
俺はコナーとメイを置いて慌てて、キャラハンの後を追った。
共用スペースでキャラハンを見つけた。
キャラハンは俺たちの寝室の側から入ってきたところだった。
ということは、すなわち…。
「どうだ?」
俺を追ってきたコナーが、キャラハンに訊いた。
キャラハンは肩をすくめた。
「安全です。何もありません」
俺は深く息を吸い、一気に吐いた。
混乱していた。
「この船をスキャンしたときに、何もないんだから、そりゃあ、異常ありませんよ。これこそ一番、無駄な作業だと思いますけど」
キャラハンが言った。
この女は…ヘンリーの死体を見逃したのか?
確認作業が面倒で、本当はヘンリーの部屋は見ていないのか?
そして、確認したとウソをついているのか?
気がつくと俺は、全身にびっしょりと汗をかいていた。
何か分からないが、嫌な予感が胸を締めつけてくる。
「文句を言うな。あっちも確認しろ」
コナーが操縦室を指差した。
「はいはい」とキャラハン。
「船長が」
俺が言った。
「操縦室には、船長のハリソンが居る」
「はあ?」
キャラハンが首を傾げた。
「何ですか、それ?」
「キャラハン!!」
コナーが怒鳴った。
「早く確認しろ!」
「はいはい」
キャラハンが操縦室へと消えた。