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気がつくと、ヘンリーは動かなくなっていた。
あっけないものだ。
これで俺の悩みのタネは無くなった。
メイは俺のものになったのだ。
嵐のような激情が去ると、やっと冷静になった脳が、警鐘をならし始めた。
ヘンリーの死体を、どうにかしないと。
ヘンリーを殺した事実を他の2人に知られては、ただでは済まない。
メイと良い雰囲気になるなど、夢物語だ。
考えろ。
考えろ。
突然、けたたましいブザーが鳴り響いた。
宇宙船のセンサーの警報音だ。
何かが、この船に接近している。
俺は通路へと飛び出した。
ハリソンとメイも部屋から出てきた。
「操縦室へ!」
ハリソンが言った。
俺たち3人は、操縦室へと走った。
レーダーをチェックすると、ワープ空間の中を、何かがこの船に近づいてくるのが分かった。
船外カメラの映像が、モニターに映しだされる。
チカチカとした赤い光線が流れるワープ空間を、一隻の宇宙船がこちらに接近してくる。
「ハリソン!?」と俺。
「ああ。見えとるよ。しかし…この船は…見たこともない型じゃ。データベースにも合致する船は無い」
「それって、どういうことなの!?」
メイがヒステリックに叫ぶ。
「しかも、こちらの船にドッキングしようとしておる。こんなことはあり得ん。不可能なんじゃ、今の技術では…」
ハリソンが首を振る。
得体が知れない恐怖が、俺たちを押し黙らせた。
謎の船が、こちらのエアロックにドッキングする振動がした。
こちらへ来るつもりか?
俺はエアロックへ向かおうとした。
メイも続く。
ハリソンが動かない。
「ハリソン?」
俺はいらだった。
「わしはここに居る」
ハリソンは怯えている。
正体が分からない何者かが、この宇宙船に侵入しようとしているのに、この老いぼれは何だというのか?
臆病風にでも吹かれたのか?
「勝手にしろ!」
俺はメイとエアロックに向かった。
古いタイプだが、銃を準備する。
メイを後ろにかばいつつ、エアロックの前まで来た。




