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第8話 side:沖田有希子



はっきり言う。


私は小さい頃から、ずっと一条知明くんが好きだ。


昔、住んでいたところで、彼と同じ保育園とピアノ教室に通っていた。


親もママ友同士で、よく一緒に遊んだ。


近くの公園でも遊んだし、遠くの大きな公園で思いっきり一日中、走り回って遊んだ。


一緒にいろんなことして……


今から……そうね、10年くらい前のこと。


通っていたピアノ教室で何が楽しかったって、グループレッスンの後に彼と遊べたことよ。


駐車場で転んで怪我した時も……


ううん、いいの。小さい頃のこと。


同じ小学校に入ったけど、どんどん遊ぶ時間は減った。


クラスも違う。


ただ、変わらず、ピアノ教室の後は遊べた。


でもーー


クールな彼は、私と遊ぶのがおもしろくないんじゃないかと思った。


楽しそうな、私の好きな彼の笑う顔は、時間とともに減っていった。


そして、1年生の終わり。


今でも忘れない。


3月の終わりに先生が言った。


一条くんは残念ですが親御さんのお仕事で九州の方に行くことになりましたーー


泣くよね。


お母さんに言ったもん。どうしてなのって。


彼には何も言えなかった。彼も何も言わなかった。


私は、なにもかもが怖かった。ともくんに当たってもどうしようもない。


ただ、1年生が終わると彼はいなくなった。


ピアノ教室も辞めていった。


私はそのまま今までピアノを続けている。


彼との思い出は年々補正がかかって、光り輝いている。


はっきり私は覚えている。


「ゆきちゃんのピアノの音、好きだよ」


そしてーー


「ゆきちゃんみたいな人がずっといてくれたらいいな」


私は人生で最高の笑顔を彼に向けて言った。


「うれしい。忘れないでね。やくそくだからっ」




そして、現在。


元々両親が関西人だった私は、大阪に中学で引っ越してくると、自然に関西弁を喋るようになった。


何もおもろいことがあらへんまま、中学生活を送って来たんやけど……


人生って分からんもんやね!


転校生くる言うから黙って座ってたら……


一条知明!


ありえへんありえへんありえへん。


めっちゃ昔の面影あるわ……。


あかんあかん、彼のこと見過ぎや。


はああああ。どないしょ。


彼、私のこと覚えてるやろか。


家近くでもあらへんし……ストーカーちゃうで!


中村に聞いただけや。


なんかこういう時、よく隣に住んでたりするって言うたやつでてこい!


しばいたる。反対方向や。


クラブも入らへんようやし。


吹奏楽部くらい入れや。ピアノやっとったやんけ。


なんて?自分から話しかければいいやんって?


そんなん出来たらとっくの昔にやってるわ!


何日経っても彼、何もしてこうへん。


やっぱり私のことそんな好きちゃうねや……。

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