第5話 鋭い母
短いです。
学校から帰った俺は、リビングにあるアップライトピアノで練習を始める。
ここだけの話、今回弾くことになった曲、小学校の卒業式でもう経験している。
久しぶりに弾いてみよっかなー、って感じだから余裕?
暗譜できているか怪しいからちょっとお時間くらい練習して、母が帰って来る前に、二階に上がって、勉強を始めた。
「ただいまー。知明いる?」
「母さん、おかえり。今日の夕飯は?」
「鍋よ、鍋。鶏肉とさつま揚げが安かったの」
「そう。手伝おうか?」
「あら、珍しい。なんか悪さしたんじゃ……?」
「え、ああ。してない……ヨ?」
「ピアノ……弾いてなかった?」
「(ギク!)……」
「何があったの?」
「……はい。その、ちょっと、学校の卒業式で弾くことになって……」
「だったら正直に言いなさい。ちょっと最近、ピアノの椅子の位置がずれてたのよ。
あと、ピアノの鍵盤の掃除、した時になんか埃が溜まってないの、変でしょ?そんなことすぐ言いなさいよ?そんな大役任されたんだったら、精一杯頑張りなさいよ。もちろん、勉強もだけどね。母さん、応援してるから。正々堂々と練習しなさいよ」
「ありがとう、母さん」
「ひとりでご飯作るから、ピアノでも弾いて来なさい」
「うん」
まじ?あの母さんが何も俺に言わないなんて……
なんかおかしいな?
でも、母さんには何にも隠し事できないな。
なんでだろう?
いっつもバレるんだよな……女の人の勘って怖い。
それとも俺が隠し事下手なのか?