第48話 会えなかった時間を取り戻す
一応、本編完結いたしました……。
どうぞ、お読み下さい!
後日談も書いていきたいと思っておりますので、どうかブクマを外さずに、お待ちください……!
これまで、たくさんの、ブクマ、評価、それに、感想まで頂けたこと、本当に感謝の言葉しかありません。
これからもよろしくお願いします。
ストリートピアノの椅子に座り、鍵盤の蓋を開けた。
よし、ジュトヴ、弾くか。
でも、そんなに、弾くのって珍しいのかな……?
周りに結構人が集まってくる。
メロディーを聴いたら絶対知ってる曲だもんね。
曲を弾き終わった。
そして、手を鍵盤から離した瞬間ーー
誰かに、後ろから抱きしめられた。
俺はいきなりのことで驚き、前のめりになりながらも、席から立って、誰なのか見ようと振り返った。
そこには、ずっと、会いたいと思っていたーー
そんな言葉では言い尽くせないほど俺にとって大切な人ーー
沖田有希子、幼馴染のゆきちゃんがいた。
有希子……いや、ゆきちゃんは、振り向きざまに、俺に抱きついてきた。
「なんなのよ!……急に連絡途絶えて……」
「ごめん」
ゆきちゃんは俺の胸元で泣いている。
俺も目に涙がいっぱい溜まっている。
俺のこと、まだ好きでいてくれているのか?
どうなんだ……?
言いたいことはたくさんあるのに、言葉にならない。
でも、やっと会えたんだ。ここで言わなきゃ、いつ言うんだ。
「ずっと好きだったよ--ゆきちゃん」
「……え?」
「ん?どうした」
「ゆ、ゆきちゃん……って言ってくれたの……今」
「そ、そうだけど……嫌なのか?」
「……思い出してくれたの……?」
「そうだよ。ゆきちゃん、一緒にいつもいた、幼馴染だろ?」
「……もっと早く気づいてよ!」
「ごめんて」
「鈍感男!」
「そうだな」
「朴念仁!」
「そうだな」
そう言って、ポカポカ俺の体を叩くけど、痛くない。
「有希子……ゆきちゃんがいいのか?」
「有希子よ。もうゆきちゃんなんてちょっと恥ずかしいよ……」
「じゃあ、有希子。これまでのことは本当にごめん」
「……うん」
「勝手に転校したり、幼馴染だって気づかず、で、また離れ離れになってしまって俺は有希子を傷つけてばかりだけどーー」
さあ、一条知明よ、叫べ。
「俺は……俺は有希子が世界で一番好きだ!」
「私も知明くんが世界で一番好き。知明くんの全部が好きなの。だって……」
ゴクリ。
「さっきの曲、あなたが欲しい、って意味でしょ?私も今から弾くから、受け止めてね。ジュ・ト・ヴ!」
そんな笑顔で言われたら、うれしすぎるだろ……!
有希子は椅子に座り、その曲を、弾き始めた。
あ、弾けるんだ……そうだよな、有希子は俺との思い出を大切にしてくれたもんな。
俺は、有希子が弾き終わると同時に、有希子も弾き終わって鍵盤から手を離し、立ち上がりーー
互いに、抱き締め合った。
有希子は耳元で囁く。
「知明くんは、ともくんって呼ばれたいの?」
「や、やめろよ」
「と・も・く・ん!いやだ、ともくんって、呼ぶの!」
クリスマスイブの夜は、人生最高潮の予感。
百貨店前の交差点に掲げられたクリスマスツリーに、明かりが灯る。
南国宮崎には珍しく、雪が降る。
俺は、ツリーを前にして、改めて有希子に言う。
「有希子さん、俺と、付き合って下さい」
「……もちろんよ!10年前から言ってるのよ」
「あはは、そうだな」
俺たちの、遠距離恋愛はまだ始まったばかり。
大阪と東京を行き来した俺と有希子は、今度は、宮崎と東京の距離を、飛行機で乗り越える。
もう、会えないなんて、ありえないから。
会うのが、いちばん。
帰ってくる、あなたがーー
最高の、プレゼント。
一条「有希子、ジングルベルを鳴らしてくれ……!」
沖田「……?」
一条「ご、ごめん、ちょっと分かんないよな……」




