第47話 まったくの偶然です
沖田有希子視点です。
宮崎に引越して来てからの日々は、最悪だった。
空気は綺麗だし、人は優しいし、外もうるさくない。
でも、心の傷は、思ったよりも深く、ちょっとだけ生きるのが辛い。
普通に生活しているから、問題ないのよ……。
高校に編入するって言っても、友達なんか今更……
なんか近くの高校に通っているけど、楽しくない。
親はそんな私を見かねて、ピアノレッスンを受けさせてくれるけど……
ピアノ教室の本部?みたいなところで受けるから、ちょっと大変。
あーあ、ピアノ辞めようかな……?
2学期も終わり、冬休み。
今日はクリスマスイブだっていうのに、今日もレッスン。
何なのよ、もう。
クリスマス……今、東京で一緒に入れたかもしれないのに……
あ、そうそう。昨日、昔にあの人のお母さんがくれたDVDを偶然見つけた。
ピアノ教室の発表会だった。
「ジュ・ト・ヴひいてね」
こんな恥ずかしいこと言う私が映っていた。
ジュ・ト・ヴって、あなたが欲しい、って意味の題名なのよね……。
たぶん、このDVDを彼が見ていないだろうし……。
そうだったら、きっと、大阪で、私に気がついたはずだからーーそして、きっとその曲を弾いてくれたはずだから。
レッスン後、家に帰る私だったが、その日は、気が向いて、通りの向こうにある、山形屋にでも行ってみようと思った。
今から思えばーー
何かの巡り合わせだったのね。
だって今まで一度も、百貨店になんか行こうって気持ちに、宮崎に来てから、ならなかったから。
私は交差点の真ん中で思わず立ち止まってしまった。
ずっと逢いたい、逢いたいと夢にまで見た、その人。
一条知明くんーーともくんがそこにいたから……かもしれないだけよ。
もちろん、人違いってこともあるよね……世の中には瓜二つの人が10人いるっていうから。
それに、こんなところにいるのよ……絶対、違う人だわ、間違いよ……きっと……でもちょっと後、つけてみようかな……
その人は、商店街の方には行かず、アートセンターの方へ行った。
あ!アートセンターに入ったよね。
物陰に隠れて、出てくるのを待っていると、すぐ出てきた。
そして横の銀行に入っていった。
あれ……?人違いかな……だって、彼だったとしたら、高校生なんかが銀行に用があるわけでないじゃない。
……もう、ちょっと尾行するのやめようかな……寒いし。
あ、銀行から出てきた。
……なんかの職員の人と喋っている……え?「ストリートピアノっていうんです」……
って聞こえるけど……
そんなのどこにあるの?
って後ろを振り返ると、青いピアノ……てか、ストリートピアノってなによ!
あ!近づいてくるよ……!
急いで、ピアノの正面から見えなさそうな場所に移動する。
どうなんだろう、ピアノ……弾けるの?
……あ、座った。これであの曲弾いてって……だいぶ私もロマンチックなのね。
そんなわけないじゃない、と思った。けどーー
とうとう、演奏が始まった。
明日、更新できるか、怪しいです。




