第45話 弾いてほしかった曲
もしかしたら、中にはお気づきの方もいらっしゃっるかもしれませんが、本編は48話エンドです。
昨日は、更新出来ず、申し訳ありませんでした。
夏休みが、あっという間に過ぎてゆき、学校が始まる。
宿題を忘れていないか確認して、学校へ向かう。
あの日以来、陽奈は俺とちょうどいい距離感で接してくれる。
登校する時だって、手なんか繋がない。
ただ……可哀想なことに、タカは毎日フラれている。
夏休みの間も俺の家に毎日オートロックのインターホン前で、陽奈への想いを叫ぶのだが……迷惑だ……!
「陽奈が好きだ!」
「……帰って」
陽奈は容赦なく通話終了のボタンを押す。
あーあ、これで懲りないタカの精神世界はどうなってんだろ?
愛すべきアホの突撃の後を見計らったように、陽奈には中村からの電話がくる。
「もしもし?電話ありがと!」
そう言って陽奈は自分の部屋に消えていく。
小一時間くらい、部屋から出てこない。
俺にとってこれが日常。
でも、9月1日に中村から驚くべき情報が入った。
なにやら、高校が変わったらしい。
夏休みの間に、なんと、宮崎に引っ越したらしい。
くそかよ……入れ違いで俺は大阪に行ったのかよ!
「中村、高校の名前はなんだっ!」
「それが……すまん!誰にも言わへんと引越したらしい上にやな、通とった高校の先生もどことは言わへんかったらしいねん……」
「……そ、そうか」
「悪いな、でもな、お前が好きな言葉にあるやろ、『ドリームズカムトゥルー』。ずっと唱えとったらいつかは上手いこといくんちゃうか……もうこれくらいしか言うことないわ!じゃ」
「ありがとな。中村」
電話を切る。
スマホを机の上に置き、俺は深いため息をついた。
宮崎にも行こうか迷ったが、何の手掛かりもないまま行っても無駄足だから、そんなことはしなかった。
ある日、俺は中学の頃に間違えて買った参考書を探していると……
普段は全く見向きもしないような、俺の母親が置いている俺の写真コレクションの棚を漁っていた。
「いつのかな……2005年、か」
整理されている写真を次々に目で追いかける。
「あ、そう言えばこんな公園に行ったな」
高い滑り台の上で、陽奈と俺は隣同士で映っている。
ブランコを漕ぎあいっこしている。
ピアノの発表会で衣装のドレスを着る陽奈の横で写る俺。
そこには小さく母の字で、『ビデオ有り』と書かれている。
どうしてもその映像が見たいと思った俺は、母親に電話をかけて尋ねた。
……あ、ニューヨークの時差忘れてたわ。
「あら、どうしたの知明、珍しい」
「なあ、アルバムに書いてあった、ビデオってどこにあるんだ?」
「……ええ……確か……そのアルバムの奥にディスクがあるはずよ?」
「おお、あったよ。ありがとな」
「もう切るの?たまにはもっともっと電話しなさいよ!」
「はいはい。分かってます」
よし……これ、見るか……!
再生機器にディスクを入れ、再生する。
中身は、ピアノ発表会の様子が映っていた。
これは俺が小学校1年のときの学年末のピアノ発表会。
陽奈は、ピンクの可愛いドレスを着ている。
俺は……蝶ネクタイをしているくらいか?
俺の演奏と陽奈の演奏しか収録されていないな……時間的に。
俺は……何だろ?何弾いてんだ……エチュードかなんか分からん。
陽奈は、これは何の曲だっけ……
確か昔、アニメに使われたような……思い出したぞ。
ジュ・ト・ヴか!
でも……ジュトヴってどういう意味だ?
ネットで調べると一発で分かったよ
ーー「あなたが大好き」
……だそうだ。
陽奈の演奏は終わったので、これで映像も終わりかと思ったが、まだ数分続くみたい。
すべてのプログラムの終わった後のようで、みんなホールの外でしゃべっているようだ。
「ともくんもいつかジュ・ト・ヴ、ひいてね!」
「うん。いいよ」
「……いつひいてくれるの?」
「また、いつかだよ」
「ねーねーごまかさないの」
そこで映像は切れている。
ディスクを取り出し、俺は、陽奈に話しかけられるまでずっとアルバムを見返していた。
沖田「ねーねー、アキせんせー、どんな曲ひいたらいいの?」
千秋先生「そうね……一つ聞いてもいい?」
沖田「なに?」
千秋先生「有希子ちゃんは知明くんのことどう思ってるの?」
沖田「好き!けっこんするの。ダンナさんになってもらうの」
千秋先生「……なら、この曲、弾くのよ……!」




