第44話 すれ違う2人
前半、沖田有希子視点で、後半、一条知明視点です。
私の最初で最後の恋は、終わった。
何もかもがどうでもいい。
帰りの新幹線の中で泣いた。
もう、会えない……そうでもない……会ってくれないの、知明くんは。
夏休みってどうして存在するんだろう。
部活もやっていない私は、ただ決まった曜日にピアノ教室に通うだけの長期休み。
寂しさも悲しさも悔しさも、ぶつける場所のない私は、これからどうすればいいの?
思えば、毎日、知明くんとのラインや電話が生きがいだった。
そんな私に、両親が言ってきたのーー
「有希子、宮崎の方に引っ越すことになったの。高校、変わるけどごめんね。でも、宮崎だったら昔、いたわね」
8月にはもう、宮崎にいる。
まだ大阪にいたら、知明くんはもしかしたら会いに来てくれたかもしれない。
しかも、宮崎……大切な思い出の場所……でも、知明くんと別れた今……。
東京と大阪から……もう別れた……けど、付き合っていたら、もっと距離が遠くなってしまっていたのね……。
少し病んだのかもね、私。もう、疲れたの。
ともくん……どこかにいるともくん……また会いたいです……それだけ……。
前に沖田さんから送られたハガキにあった住所を頼りに、俺は家に行った。
でもーー
「誰もいないのか……?」
インターホンを押すけど、音ひとつしない。
諦めきれない俺は近くの家のインターホンを押して、聞いてみた。
「わからへんな。すまんな、ボク」
「ちょっとわからへんね……おばちゃん力になれへんでごめんね」
中村の友人に聞いても、何もわからない。
俺は、為すすべもなく、東京にトンボ帰りになった。
新幹線の中で、俺は涙ひとつ出なかった。
「俺が……俺が悪いんだ」
今日の更新は難しいです……すいません!




