第43話 もう一度、大阪へ
ごはん(ただしジャンク)を食べ、満腹になった中村とタカはやっと落ち着いて話ができるようになった。
全てを話すーー
「……ほんでお前は付き合うようになったと、偽で」
中村は物分かりがいいが、タカは飲み込みが悪い。
タカは口をポカンと開けたまま微動だにしない。
「ああそういえば、陽奈なんであんなこと言ったんだよ」
俺はどうしても分からなかった。
「言いにくいんだけど……許してね?……えっと、ともくんがコレ、持ってたから」
陽奈は親指と人差し指で輪っかを作ってる……
陽奈の完璧な笑顔に俺はころっと騙される。
「……バカみたいな不純な動機だな」
呆れて物が言えない。
まるで、ハニトラじゃんか……!
「だからごめんなさい。まさか……彼女さんと本当に別れてしまうなんて……」
「起きてしまったことは仕方ないじゃんか。泣くな」
陽奈をどうしても憎めない。直接、俺の元カノになんかしたわけじゃないし。
元カノ……
「なあ、中村、お前、なんか連絡取れないのか……その」
「ああ、言わんでええで、わかってる。期待させといてなんやけどーーまったく知らん。まあ、友達に聞いてみよか?さりげなくな」
「ああ、頼む!」
タカはイケメンを殴り捨てて泣き噦り、3人でドン引き。
「おい、泣くな!男だろ」
「……お前、水族館でナンパ役やらされた俺の身にもなってみろよ……ううう……それに連休明けの取り調べは二度と勘弁してくれよ……」
ああ、あの北陸ね……『……はい』
今なら笑える……いや、笑えねーよ。
「小川くん、ごめんね?」
「うん!いいよ」
こいつはバカだ……まーた引っ掛かりそう。
タカは……俺の家に住むとか言い出したから、こいつが犯罪を仕出かす前に親御さんに引き取ってもらった。
電話したけど……ああ、もう二度とあんな電話はしたくない……!
小川ママ、怖い!
「一条くん、お分かりですわね……?」
スピーカーで話していたから、同時進行でタカの顔が歪んでいくのは傑作だった。
電話終わると、あいつ、もう一回奈落の底に落とされたぜ……!
「小川くん、ごめんなさい。タイプじゃないです。でも、ただのお友達ならぜひ、仲良くしてください」
「……はい、こちらこそ」
俺は黙って、エントランスにタクシーを用意させてあげて、家まで送ってあげた。
タカが帰った後、俺は2人のお邪魔虫になってしまうので、早々に自分の部屋に退散した。
あいつら……覚えてろよ……俺、寝れないじゃんか……!
まだリビングにいるようだったので、俺は扉越しに「早く寝ろ!」と怒鳴ったら、
ドタドタと音がしたあと、廊下を静かに歩いていったよ。
きっちり足音は2人分聞こえるのに……なんで扉が開く音がひとつなんだよ……
しかも中村の分の布団……ねえぞ……あああああ!
俺のマンションが……
次の日、朝起きると俺はいの一番に中村に聞いた。
「お前……いつ帰んだよ……?」
「なんなん……そんな脅さんといてや……はよ帰って欲しいんか?」
「早く帰って連絡先回収してくれよ……?」
「は、はいい!わかりやした、親分!行って参ります!」
中村は一人で帰るみたいだが、俺も一緒に大阪に向かう。
「俺も一緒に行くからな」
「……ねえ、ともくん……私も大阪行ったらだめ?」
はい!もちろんオーケーです!
チケット買いまーす!
「中村もその方がいいか」
調子のいいヤツめ……笑顔全開で頷きよる。
3人は朝イチの新幹線に乗って、東京駅から新大阪駅へと向かった。
……2人で勝手にイチャイチャするので、疲労が溜まる。
新大阪駅21番ホームに停車した。
ホームに降り立つ。
「なんかしんどそうやけど……新幹線で酔おたんか?」
「……」
「ともくん、大丈夫?」
「ああ」
新大阪駅26番ホームを一瞬だけ見て、俺は大阪の街に繰り出した。
大阪メトロ御堂筋線の新大阪駅は、ギラギラと日差しが差し込んでいた。
言い遅れましたが、題名の表記を変更しました。