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第39話 もう一度、あなたのそばにいたい……けど




俺が有希子の幼馴染だった。


はっきりと認識した。



そういえば……



すべてが……俺の中で次々にハマっていく。




有希子……ゆきこ……ゆきちゃん……だったんだ。


ピアノ教室で同じレッスンを受けていた、ゆきちゃんが沖田有希子……


どんどん鮮明になっていく、彼女との思い出ーー


「……ころんじゃった」

「イタイノイタイノとんでけー」


「ともくんのピアノの音きらいかな」

「ぼくはゆきちゃんのピアノの音、好きだよ」


「ともくんはどんなおんなのこがおよめにきてほしいの?」

「ゆきちゃんみたいな人がずっといてくれたらいいな」

「うれしい。忘れないでね。やくそくだからっ」



そして大阪での再会ーー



居た堪れなくて、「一条くん、一緒に帰らへん?」って誘ったんだな。



音楽室から出ていく時、俺を引き止めて話しかけてきた……思えば、顔、思いっきり近付けてきたな……


私がゆきちゃんだって、気づいてほしかったのか……



受験の時、俺の行く高校をあれだけ尋ねてきたのも、気になって……



卒業式のリハの時ーー俺は少しだけ、小さい頃の「ともくん」らしいことができたのかな?



告白の時の言葉ーー「私、絶対他の人なんか好きにならへんから」ーー理由、今なら分かる。



なぜか、俺の誕生日を知っていたこと。



東京に来て、俺に手料理を振舞ってくれた時も……


なんで数ある中から、ピンポイントで俺が本気で好物ナンバーワンのハンバーグを引き当てることができたのか。


そしてーー


使った調味料は、マキシマム。


朝ごはんに、うどんを出してくれた。しかも、あの、おくのさんのうどんを再現してた。



そうだったんだな……


俺の方から気づいてほしかったんだな。


隣の家の幼馴染が、沖田有希子とーー。



俺は、16年前、宮崎で生まれた。


そこで、小学校1年生まで過ごした。




忘れてたよ……宮崎行って、仙台行って、札幌行って、大阪行って、今、東京。


俺、めちゃくちゃ引っ越してんだな。




そして、俺のどこかに残る何かが、水族館のレストランで、俺にチキン南蛮を選ばせたんだ。





俺は狂ったように、泣いた。


中村がいたかもしれないが、関係なかった。


ふと我にかえると、中村も目を真っ赤にしていた。


そうだよな……3月から音信不通の幼馴染と一緒だったら、そうなるよ。



俺に置き換えて考えてみる。


俺は、沖田さ……有希子……いや、ゆきちゃんにもう一ヶ月近く連絡を取っていない。


どうしよう……今更連絡取っても……もしかしたらもう一度ーー


だが……


あのルール3カ条を守らなかった俺は、幼馴染だったかどうか関係なしに、恋人になる資格はもうない。


彼女は幼馴染だった俺を好きでいてくれた。


彼女を幼馴染だとは知らなかった俺は、再会して彼女をもう一度、好きになったけどーー


付き合うと俺はダメな人間で……。


なおさら、彼女を幼馴染だと知った俺は、彼女が幼馴染だから無条件で俺を好きでいてくれるに違いないと思って、また彼女を傷つけてしまいそうで……。



その上、陽奈までも巻き込んでしまって……。


陽奈に申し訳ないし、中村にも申し訳ない。



俺は……どうしたら救われるんだ?





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