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第36話 side:沖田有希子




GWは人生最高の連休だった。


家の帰っても彼のことを思い出せるもので溢れており、毎日、もう寂しくなんかなかった。


でも……5月の終わりくらいからだんだん、彼の返信が遅くなったり、文面が変になった気がした。


どうしたんだろ……?


決定的だったのは、あの電話の切り方。


逃げるように一方的に通話をやめた、こんなことは今まで一度もなかった。


ハガキの字を見る。


『いつも連絡してくれてうれしいです。

夏に大阪でまた会えることを楽しみにしているよ。有希子のことが好きです』


これだけを糧にして毎日生きていた。


仲良い友達には、みんなからこう言われた。


「そんなんアホちゃう?絶対そのカレ、遊びやわ!」


「ちゃうもん……だって幼馴染やもん」


「でも、そのカレ、幼馴染やって気付いてないんやろ?」


「……うん」


「もうはよ、みなまで、言ってな、もう大阪にカレ連れて来ちゃえばええやん」


「まだ高校生でしょ?」


もう!遠距離恋愛なんて失敗する、失敗するってばっかり言って。


そんな訳、彼に限ってないと思っていた……


いたけどーー





7月になり、夏のバーゲンが百貨店で始まる。


私は期末テストの勉強の合間を縫って、ともくんの為に新しい服を買っていた。


ワンピにスカートに……し、下着?


ちゃ、ちゃうの!そんなんまだ……早い?


その夜、いつものようにラインを打つ。




でも、彼から返信が来ることはなかった。


前も、こんなこと、あったね。


私は重いって思われたくないから電話はせず、ただ彼からの連絡を待った。


でも、夜0時を回っても連絡は来ない。


あれ……?


どうしても不安になった私は彼のマンションの固定電話にかけた。


『ただ今留守にしております。ご用件のある方は、ピーという音の後に』……』


「え……」


……。


どういうこと……?


ずっと画面を見つめていた。



次の日も、その次の日も、メッセージを送るけど、連絡はこない。


彼からの連絡が完全に途絶えた。



私……フラれた?


心配した友達が励ましてくれるけど、そんなことでは私の心の傷は治らなかった。


泣いた、それはもう、泣いた。


もうあの日々は戻らない。





私は居ても立っても居られなくなって、夏休みに入り、単身東京に行った。


もう、フラれててもいい。


ただ、もう一度、彼の声がどうしても聞きたい。





あの日、彼に会いに行くために乗った同じ新幹線、同じ座席に乗った。


東京駅に着いても、あの時のように彼はいない。


電車を乗り継ぎ、彼のマンションの前にたどり着いた。


オートロックのナンバーを押してみるけど、なんの音沙汰もない。




もう、私ははっきりと分かった。




彼はもう、どこにいるのかも分からない。







ただ、これだけははっきりしたーー


2人は別れることになったんだと。









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