第35話 さよなら……
章の名前を変更しました。
今後もよろしくお願いします。
俺は、今、目の前にスマホを置いてリビングの机に座っている。
「誰と電話してたの?」
「友達だよ」
「名前は?」
「……」
「ねえ、ともくんは陽奈の彼女でしょ?」
「……はい」
「どこの誰だか知らないけど、陽奈以外の女の子と喋るってどういうこと?」
あ、バレてますか。
「……ごめん」
それは1時間前ーー
いつものように有希子と夜の連絡を自分の部屋でとっていると、久しぶりに有希子は電話をかけてきた。
着信が入ると同時に、偶然、陽奈も夕食の準備が出来たからリビングに来るように言う声が、かすかに聞こえた。
でも、俺はもちろん有希子との電話をしていたんだが……
あいつ、なかなか俺が来ないことで勘付いて、部屋に近づいてきた。
やばい、バレる、と思った俺は有希子との電話をやめた。
「ごめん、ちょっと家に電話がかかってきたから切る」
「あ……」
そして、ドアをノックしてきた陽奈に呼び出され、今に至る。
「本当、私のこと、好きなの?」
「……好きだよ」
「じゃあ、お詫びにキスして」
まあ、俺としても美人さんにキスできるなんぞ、人によっては大大大歓迎なんだろうけど、陽奈は……
それでも一応、しなければならない俺は席を立ち、陽奈の頰にキスをする。
頰にするのがせめてもの抵抗……。こんなキス何回目だろ……。
コイツ、喜びやがって……。
これだけは俺の中ではっきりさせなければならない。
俺は、本気で有希子のことが好きだ。そして、心の底から愛している。
もし、俺と有希子のどちらかの命を差し出さなければならない時ーー
俺は進んで犠牲になるだろう。
だから、俺の行動が起因で、有希子と別れたくない。
俺が陽奈と一緒に住んでいることは、おかしいと自分でも思う。
この状況を見て、有希子が悲しまない訳ない。
でも、隠し通して有希子がこのことを知らないまま、この先過ごしていけるなら俺はそれでいい。
バレなきゃ、遠距離では何しても良いって言ってるんじゃない。
ただ、俺だけが苦しめばいい。
俺は好意から発展させた感情を陽奈には一度も抱いていない。
全てを伝え、こんな不甲斐ない俺を、もし有希子が好き……いや、愛してくれるなら……俺はひざまづいてでも、俺のしたこと全ての責任を取る。
そんなことありえないけどな。
もし、この俺の最低っぷりが白昼の下に晒されてしまった時に……俺は有希子の前には二度と立つことはない。
有希子が有希子の理由で俺を振るのは、俺は構わない。さっぱりと別れる。
だって、有希子が知っていようが知らずにいようが関係なく、すでに俺に100パー問題があったんだ。俺への好意が消える原因は俺にある。
だから、陽奈には絶対に従う。
ーー俺には有希子と付き合う資格があるのか?
そんな葛藤を胸に抱えながら俺は毎日生きていた……。
そんな俺をよそに陽奈の要求はますますエスカレートしていき、ついにーー
陽奈は、俺の中で一線を超えることを突きつけてきた。
「夏休み、一緒に仙台に行こうよ」
仙台ーーそれは陽奈の地元だ。
有希子……仙台に俺は絶対行かないけど、大阪にはもう行けないかもしれない。
その夜、泣いた。ベッドでただ涙を流した。
俺は、陽奈に、弱々しい姿を見せたくないから、いつも気丈に振舞う。
でも……有希子、ルール3だけじゃなく、ルール1も俺は破ってしまったよ……。
ついに7月のはじめに有希子との最後の約束を破ってしまった。
俺はもう心が折れた。
学校から陽奈と帰ってくると、玄関口で陽奈は言った。
「ともくん、部屋にいるなんて冷たいな、期末テストあるんだし、リビングに一緒にいようよ」
『ルール2……毎朝、毎晩、ラインのやり取りをする。用事があって返事できない時は先に伝えておく。』
その晩、スマホを手にとって有希子とラインのやり取りを交わすことはなかった。
俺は……取り返しのつかないことをしてしまった。
女の子1人との……しかも大切な人との約束を守れなかった。
もう、どうにでも良くなった。
あき池「おーい、沖田さん、出てきてよ」
沖田「……」
あき池「もう、ずっとこんな調子だよ……」




