第29話 俺、困る……
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俺と有希子は家に戻ってきた。
夕食は、有希子が作ってくれるらしい。
エプロンをして、キッチンに立つその姿は……
なんか既視感が……
まあ、いい。
慣れって怖いな……少しソワソワしている風を装うか。
料理は……
匂いからして、これは……俺が1番世の中で好きなハンバーグ?
なんで数ある中から、ピンポイントで俺が本気で好物ナンバーワンのハンバーグを引き当てたのか……?
しかも……
ま、マキシマム……?
どっかで見たことある調味料がキッチンに無造作に置かれている。
有希子はとっても美味しそうな盛り付けをして持って来てくれた。
「いただきます」
「どうぞ。食べてや。味、どう……?」
「ほんとうまい。うまい!」
「安心したわ〜、まずい言うたらどうしょって思って」
「そんなの絶対ないよ」
あっという間に食べ終わり、皿洗いは俺がすると言ったが、横で有希子も手伝う。
「ハンバーグ、味どうやった?」
「ああ、美味しかったよ」
「それだけなん?なんか……思うところあらへんかった?」
「……んー、いや、特にない。普通に美味しかった」
「……そうなんや。あ、別になんの意味もあらへんで」
「そう……か?」
片付けが終わると、ソファーに座って、一緒に、テレビを見ている。
「なあ、最初に私を見たとき、どう思たん?」
「すごい美少女だなって思った」
「……なんかこそばゆいな」
しばらくすると、ドラマのシーンで、キスシーンが流れる。
「なあ、キス、せえへん?」
「……あ、あう?」
「なに言うてんの……」
有希子はそう言いながらほっぺにキスしてきた。
体が熱い。有希子は俺をまっすぐ見つめている。
「ヘタレやなあ!そんなん、ちっちゃい時にしてるやん」
ちっちゃい時にしている……って
「誰と小さい時に……その、キスしたの?」
「だ、だれて……そんなん言えへんし……そんなんどうでもええやん」
なんだよ。少し気になるじゃんか。
「……」
「お風呂、入ってくるで!」
シャワーの音が響く。
それは、陽奈が立てる音よりも俺のなにかを揺さぶるものだった。
「ふぁー。風呂、入ったで」
「じゃあ俺も入ってくる」
有希子はどのシャンプーを使ったんだろう?
これ、男用なんだけど?……綺麗な黒髪、傷んじゃうかも。
俺は風呂場から外に声をかける。
「なあ、有希子、シャンプーとかどうしたんだ?」
俺が声をかけると、脱衣所で、ガラガラガッシャーンと音をたて、なにかが落ちた。
「どうした!有希子」
俺は風呂に入った格好のまま、ドアを開けると、そこにはーー
有希子がいた。
「あは……」
「……有希子……どうしたんだ」
「い、いやごめん!……知明くん」
「ん?」
「その……見えてる!」
「……ご、ごめん」
俺はとっさに手で隠した。
2人、なにも言えない。
「閉めるぞ!」
「……」
俺はすっかりのぼせてしまい、ろくに湯船に浸かることなく、風呂を出た。
どんな顔して、リビングに行きゃいいんだか……。
有希子、ばっちり見たよな……。
俺はリビングに行くと、またもや、有希子に驚かされた。
「……知明くんの見ちゃったから、私も見せなあかんのちゃうと思って……」
俺は、テレビの前に……そうだよな……多分、下着姿で立っている有希子の姿を一瞬視界に入れた後、記憶がない。
気がついたら、自分の部屋で寝ていた。
あ、俺ちょっと倒れちゃったのね。
はっ!有希子、寝る場所とかどうしてるんだろう?
……ん?……体が起きない……んーーーー?
……。
ゆ、有希子ぉ……!
お前、下着姿のままじゃんか……!
おい、俺の理性が持たね……!
……想像してみろ。
寝顔まで透き通った美少女が、横で……しかも……服をろくに着ていない……!
俺は1ミクロンの理性でこの状況を耐えきった。
「おい、有希子、服を着てくれ……風邪引くぞ」
「……すぅー……すぅー」
何度揺さぶっても起きない。
これ、完全に寝てるな。
俺の頭の片隅に母さんの一言がよぎる。
『まあ同意の上だったらゴールインしてもいいわよ』ーー
なーに考えてんだか、俺は。
付き合って一ヶ月やそこらで……というか男の家で、こんなに無防備な有希子も有希子だが……。
す、少しだけなら……キスしてもいいよね?
俺は、有希子の目が覚めないように静かに、やさしくキスした。
「おやすみ、有希子」
仕方ないから、俺は有希子が寝るはずだったベッドで寝た。
一応、言っとくぞ?
俺のベッド、まだ一晩も使っていないからな。サラだぞ。
小川「クソっ、この撮影リスト、連休中に終わるか……?」
あき池「思いのほか、執筆が進みました」




