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第27話 初デート






そして、待ちに待った朝が来た。


ゴールデンウィーク初日、5月3日。


ばさっと布団を飛ばして置き時計を掴む。


「6時か。よかったあ。寝坊するんじゃないかと思った」


昨日、なかなか寝付けなかった。


やっとこの日が来た!


リビングでは陽奈が朝ごはんを用意している。


「おはよう、陽奈。今日もご飯、ありがとな」


「おはよう、ともくん。いつもそんなこと言ってくれなくていいのに。今日から小川くんと旅行でしょ?」


GW中、家を留守にする理由は、タカとの北陸旅行ってことにしている。


いろいろ辻褄を合わせるのって大変だな。


「ああ、留守させて申し訳ないけど、頼むな」


「いいの。楽しんできてね」


朝ごはんを食べ終え、服を着替え、家を出る。


「じゃあ、行ってくるな」


「いってらっしゃい」


俺は後ろを振り返らず、歩き出した。



こうしている間にも有希子は東京に向かっている。


新幹線で俺に会いにきてくれる。


普通、あり得ないだろ?


実感は湧かないけど、有希子は俺に近づいている。



気分は最高の状態で、俺は東京駅の新幹線の改札に着いた。


あと少しすれば、のぞみ200号が到着する。



改札口で待つなんてしない。


入場券を買って、14番ホームで出迎えるんだ。



とても混雑しているホームには、おじいちゃんおばあちゃんとか、親子づれとかの姿が多い。


何度も深呼吸しているけど、すぐ心拍数が上がる。


こんなに早くからたくさんの人が、大切な人を迎えに来ている。



さあ、8時23分になった。


左のほうから先頭車両が入ってきて、完全に停車した。


ドアが開く。


1人、2人、3人とホームに降りてくるが、一向に有希子の姿は見えない。


完全に乗客が降り終わったようで、ドアが閉まる。


そして、颯爽と清掃員さんが乗り込んでいく。



え。


有希子が来ない。


ガチガチに体が固まり、その場から動けない。



彼女になんかあったのか?


それともーー



スマホを取り出して彼女に電話をかけようとした瞬間ーー


ずっと聞きたかった声が聞こえた。


「知明」


「って有希子!」


俺は後ろを振り返った。


「ンフフー。ドッキリ〜!来ないんじゃないかって心配したやろ。」


「ほんと、心臓に悪いから止めろよ……。久しぶり。会えて嬉しいよ」


「私も。久しぶり。東京、来たで」


そう言う彼女は満面の笑みを浮かべている。


「ありがとな。荷物、持つよ」


その両手に、キャリーケースと手提げバックを持っている。


「で、どうするん、こっから」


ええと、落ち着け俺。


昨日まで練りに練ったプランがあるだろう!


「まず、荷物を置きに家に戻らないか?」


「そやね。そっからやな」




エスカレーターで改札まで降りていく。


こうやって彼女が俺の横を今こうして歩いているなんて。


信じられない。



電車を乗り継ぎ、最寄りの駅に着いた。


「目の前のマンションが家だよ」


「……ええマンションやん。億ション、っていうん?」


「俺にはわかんないけど、まあ、億ションじゃないと思う」


オートロックを抜け、エレベーターに乗り、20階を押す。


「めっちゃ豪華やし20って……やばいな」


「そ、そう?」


エレベーター、そこそこ広いけど、彼女と2人っきりって。


いや、普通に俺歩いているけど、これ、見ようによっちゃいけないんじゃない?


だって彼女、家に連れて来ているから。


ああ、もう!緊張するし、家、変な匂いとかしないかな、不安。


家の鍵を開けた。


「お邪魔しまーす。あれ?お母さんおらへんの?」


「仕事だよ」


「まさか、親いないからって、変な……」


「おいおい、そこまでヤバイ奴ではないよ」


俺は健全な心の持ち主です。


「けど、どうしてもっていうならいいけど、明日にし……」


「冗談はさておき、これからどうする?俺はまず昼ごはんをどっか外で食べようと思うけど」


「いいね!はよ行こ」


「じゃあ行くか」


家の鍵を閉め、エレベーターに乗る。



「なあ、手繋ご!」


そうか。


今回がはじめてのデート。


手が触れるだけでも、嬉しさがこみ上げる。


好きな人と手を繋ぐんだ。


「そ、そうだな」


彼女も恥ずかしそうにしているが、俺だって恥ずかしい。



近くのイタリアンの店に入ることにした。


連休で混んでるかなと思っていたけど、案外空いている。


「いらっしゃいませ。お二人様で」


「はい」


「では、こちらのお席へ」


川沿いのテラス席へと案内された。


「すっごい洒落てんなー」


「そう?」


パスタのランチセットを頼む。すっごい美味しい。


あーん、とか、全然しないよ?


会計を済ませて(奢り……もちろん?)店を出た。



「前に言っていた、東京スカイタワーとスカイシティに行ってみよう」


「早よ行こ!」



すごいテンションが上がっている。


途中、ガラスのドアに映り込む自分の姿をちらっと見て、チェック。


初デートは、順調な滑り出しだと思う。





夜にもう1話更新します。

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