第24話 カフェでいろいろ起きるんだけど……
少し長いです。
翌朝。
俺は6時には起き、ベッドから立ち上がり、部屋を出た。
「母さん、おはよう」
「おはよう、ともくん。私は母さん……じゃないよ、ふふっ」
「そ、そうだよな。ごめん、陽奈か」
陽奈は昨日のことをさらっと流しているようだ。
さて、今日は高校の入学式。
とはいっても、何もない。
ただ式典に参加するだけで済む。
そういえば……母さんは?
「なあ、陽奈の親は式に参加するのか?」
「参加しないって」
「……そうか」
目の前には、朝ごはんが並べてある。
「こんなに豪華な朝ご飯は初めてだよ。何時に起きたんだ?」
「30分くらい前よ。これくらい、当たり前」
「そんなもんか?すごいよ、じゃあ、いただきます」
このご飯、いつも食っていた米か?
甘みが違う。色も艶やかだ。
おかずの味付けが俺の好みどんぴしゃ。
味噌汁は……あっさり。これもまた美味しい。
すぐに食べ終わってしまった。
「ご馳走さま。作ってくれてありがとう」
「どういたしまして。明日からはお弁当も作るからね。楽しみにしてね」
いたせりつくせりで。
「じゃあ俺は部屋で着替えておくよ」
「片しておくね。私も準備し始めるから」
俺は自分の部屋に一応鍵を閉め、沖田さんにラインを送る。
『昨日はごめんな。今日は入学式です』
すぐ返信が来た。
『お母さんは大丈夫?心配です。大阪ではもう高校が始まっています。またね』
よし!
今日も頑張るぞ!
「陽奈は用意済んだ?」
「うん。大丈夫。戸締りもオッケーだよ」
本当、しっかりしてるよ……。
「じゃあ家そろそろ出るか」
「そうだね。行こ!」
俺と陽奈は高校へと向かうのだが……
「……手、握ろ?」
お。おう?……今なんて?
「……だから手握ろうよ。ダメ……?」
天は自ら助くる者を助く。
ああ、神よ、このような機会をありがとうございます……!
でも……沖田さんとは手すら握っていない……。
まあ、ただ仲のいい女友達ってことで?
「じゃあ握ろうか……」
握った陽奈のか細い手はとても暖かい。
それにしてもーー
同級生と見られる男子高校生の視線が痛い……。
「あいつ見せつけてやがって」
「彼女、美人すぎるだろ。学校1かもな……」
女子にはヒソヒソ話で噂されている。
「……何あの2人、付き合ってるのかな?」
「入学式早々、なんなのよ」
「でも、お似合いか。ちょっと男の方が劣る?」
いろんなこと言われてんな……。
「私たちカレカノみたいに見えるって!」
すごい複雑だな。
「……そうだな、違うんだけどな」
「いじわる……」
その後、俺は手を握り続ける陽奈をなんとか言いくるめて、手を離してもらった。
入学式は、眠気を誘うには十分で、何も覚えていない。
解散となり、俺が学校を出ようとすると……
まさかの旧友との再会。
「お前、一条か……いや、一条だよな!」
「えっと誰……?」
「覚えていないか……小川だよ」
小川……そうそう、小川タカ……か! でも下の名前、タカじゃないんだけど、ま、いいか。
すっげーかっこよくなってんじゃないか。
お前、モテそうだな!
俺より10センチくらい背が高い……
前住んでいたところで一緒によく遊んだ親友だ。
それから俺が転校しても連絡を取っていたんだが、途中から手紙がイギリスから届くようになった。
国際郵便を初めて見たときはびっくりした。両親の赴任で長らくロンドンに住んでいたらしい。
「ああ、タカじゃないか!え、日本に帰ってきて、この高校に通ってるのか?」
「まあな。こんな偶然もあるんだな……前みたいに仲良くしてくれ」
「大歓迎だ。こっちもさ、親の転勤続きで友達がいなくて」
「これからちょっと久し振りに、どっか店入ってしゃべろうぜ!」
「おう」
意気揚々として歩き始めた時、不意に腕だけが後ろに下がった。
「ともくん、帰ろ!」
陽奈のことを忘れていた。
「ああ悪い。ちょっと久し振りに再会した小川って言うんだけど、ほら、そこにいる……」
「じゃあ先帰っておくね……鍵は私も持ってるから。じゃあね〜!」
「なんだよ、お前彼女持ちか」
「……違うんだ。まあ、店に入ってからだ」
「……そんな深刻な顔して」
俺とタカは近くの喫茶店に入った。
「さっきの女の子とは付き合ってんだろ?」
「いや、違う。口の固いタカには言うが、誰にも言うなよ。あの子、河村陽奈って言うんだが……一緒に住んでいるんだ」
「……は?おいおい、お前、法律とか大丈夫なのか?捕まらないのか」
「そこかよ……まあ、大丈夫だそうだ」
「まあ、俺は一安心だ」
「じゃねえよ。俺にはちゃんとした彼女がいるのに、あんな女の子が同居してんだよ。問題大アリじゃんか」
「……その彼女とはどうなんだ?」
「このことはもちろん言えねーよ。彼女、大阪に住んでんだよ」
タカよ、事態は深刻になりつつあるんだ……
「ま、バレないように上手くやれ。1番はお前の気持ちがブレないことだ」
そんな簡単に終わらせるな!
コーヒーを一口飲んで窓を眺める。
ここ最近、カフェ巡りしてないよな……。
少し俺が気を抜いていて、もう一口コーヒーを口に含んだ瞬間、タカはびっくりする一言を発した。
「河村さん、俺一目惚れした」
ぐ、グフっ……は、鼻にコーヒー入った……
お前、まじか。冗談だろ……?
……でも、本気っぽい。
沖田「これからは小川くんを全力で応援するで」
あき池「肩が……凝って」