第19話 河村さんに転がされる俺
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「……あっ、こんにちは。一条さんですか?」
「そうよー。ふふ。大きくなってねー。可愛らしくなって!知明、お金置いとくからこれで払っておいてね〜。仕事あるから、先に店出るね」
「ちょ、お、おい、待てよ」
母さん、なんで帰ってしまう⁉︎
「失礼するわねー、陽奈さん」
「さようなら……」
これどうなの?
俺と河村さんは、2人店に取り残される。
「……」
「……」
話すことない……!
「なんか飲むか?」
「うん。じゃあ、注文するね」
何を頼むんだろ?
「すいません、コーヒーで」
そうきたか。
「少々お待ちください」
店員さんが席から離れると、河村さんは話しかけてきた。
「一条知明くん、お久しぶりです。これからお世話になるけど……いいですか?」
なーんか、ルールあった気がするけど……今忘れました!
はーーーーい!
もちろん河村さんならオーケーです。
河村さん、そんなうるうるとした瞳を向けて、上目遣いの顔で言わないでね?
みーんな、世の男は勘違いするよ。ご多聞にも漏れず俺も……。
「全然住むことはいいんだけど、なんで?東京に引っ越してきたの?」
「あ、お母さんから聞いてない?」
「そうだ。いきなり連れてこられて、今に至る」
「そうなんだ……今は言えないの。ごめんね」
河村さん、そんな唇に人差し指当てないで……!
か、可愛い子だな。
「今日からお世話になります。そろそろ行かない?」
「おう。行こうか」
店を一緒に出て、家に向かった。
「4月から、どこの高校に行くんだ?」
「東高校なの」
「一緒じゃんか!偶然だな」
「……そうなるね。じゃあ、一緒に登校出来るね」
「いや、一緒ってマズくないか?」
「なんで?」
そんな悲しそうな顔をして言われたら……。
「俺が初日から一緒に登校する女の子がこんなに美人だと、入学早々大変だろ」
「そんな、一条くんがこんなにカッコいいから、私の方が大変に……」
すげー恥ずかしいこと、さらっと言ったな、俺。
それに河村さん、俺のことかっこいいって。
俺はすぐに俯いてしまった。
それから家に着くまで、2人は何も話せなかった。