第18話 なんでだよ。なんでだよ。
ブックマークありがとうございます。
俺、一条知明は今、喫茶店の6人掛けの席に母と並んで座っている。
「このコメタのサンドイッチって本当においしいよな」
「絶妙な味よ」
「でさ、今日、河村さんのお母さんと何で待ち合わせしてるの?」
「ちょっと相談事があるんだって」
「いや、だからその相談ってなんだよ」
「ラインで聞いても教えてくれなかったわよ」
なんで、さっきからにやけてんだよ?
「そうなんだ」
そうこうしていると待ち合わせの時間ぎりぎりに河村さんは来た。
「久しぶり〜。今日は時間わざわざ取ってもらってごめんね」
「そんなことないのよ〜〜!暇なの」
「あ、ともくん、わざわざ来てくれて。ほんと、大きくなったね!」
「あ、お久しぶりです。こんにちは」
河村さんは俺が東京に来る前に、小学校2年生から5年生まで住んでいた仙台での同級生のお母さんだ。
ママ友であるものの、それ以上に仲が良すぎた。
学校の役員も一緒にやったと思う。
娘さんは陽奈という名前で、ひな、と読む。小柄で、可愛いらしい子だったと思う。
あ、けどよく覚えてないや。
確か……メガネをかけ、少し内気だったような?
ああ、5年生の頃には……そうだな胸がまあ……大きく……ん?
ううう、寒い。
なんでこんなに体が震えるんだ?
今日は最高気温20度の筈だが。
まあ、きっと陽奈さんも成長して、今頃、綺麗な女性になっているんだろうな。
お母さんが美人だもん。
そしてーー
親子揃って、とっても優しい。
そんな河村さんはカフェラテを頼み、なにやら携帯をいじっている。
「一条くん。陽奈のこと、覚えてくれているかしら?」
「あ、はい。もちろんです。仲良くさせてもらいました」
さっき絶賛思い出してました。
「お願いなんだけど……一条くんのお家に陽奈を住まわせてくれないかしら?」
……
はい?
い、今なんと?
俺が茫然としていると河村さんは前に乗り出してきた。
「こんなこと頼むのはおかしいってわかっているんだけど、事情があるの。お願いできるかな?」
そんな美人な方に頼まれたら、断れませんよ〜!
俺は顔が緩みきっていた。
俺は、あのルールを忘れていた……!
「もちろんです!」
「んふふ。そう言ってくれると助かるわ。あとは一条さん、お願いします」
「わかってるわ」
2人で何やら意味ありげな表情だが。
「それじゃあ、私は失礼するわ」
「あ、さよなら」
河村さんはそのまま帰っていった。
俺は母さんと黙って座っている。
「知ってたんだろ?」
「……」
「いや、別に黙ってくれてても良かったんだけどさ。こっからどうするの?」
ずっと黙っている母さんの目線の先を追いかけるとーー
そうなるよな。
そこには河村陽奈さんが立っていた。
昔の面影は残している。
可愛らしいって言葉がぴったりだ。
ショートカットで、メガネは……もうかけていない。コンタクトだろな。
にしてもだ。
なんで母親に似て、こんなに美女なんだ……?
ああ、もう!動揺しまくりじゃんか。
俺は目を奪われていた。
ストック切れで……回数は落ちますが、鋭意執筆中ですので、更新頑張ります!