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第13話 人の失敗を茶化すやつは嫌いだ

なんと!ジャンル別日間ランキング60位にランクインしていました。

初めてのことで、ただただ驚いてます。明日は雪でも降るんじゃないか……?

ありがとうございます!これからも張り切って更新していきます。


順調に、リハーサルは進んでいき、ついに、在校生の合唱。


「沖田、次だぞ。頑張れ」


「沖田さん。応援してるで!」


俺はうなづくことしか出来なかった。


軽く会釈して、沖田さんは席を立ち、舞台に出て、グランドピアノの前に座った。


体育館で合唱に合わせて伴奏するのは結構、難しい。


音が聞こえるタイミングが、双方でずれる。


だから、スピードとかが狂ってくる。


そんなに注意することではないんだが……沖田さん、大丈夫かな?


その時だった。


沖田さんの演奏がピタリと止まった。


歌詞の1番が終わり、間奏に入るところだった。


「沖田。どないしたんや」


「沖田さん?」


卒業生や在校生からは、急な出来事に騒つく声が聞こえる。


沖田さんは両手を見つめながら茫然としていた。


「……どないしょ」


俺と先生と松木さんは顔を互いに見合わせる。


「楽譜持ってへんやん」


「沖田さん、暗譜はまだちゃうかった?」


そうだよな。まだ沖田さんは曲を暗譜していない。


緊張であがってしまったのかも。


「先生、どないしょ……。私、もう弾けへん……」


何百という人がこっちを見ている。


教師たちも突然のことに慌てている。


すると何人かの生徒が騒ぎ始めた。


「はよせえや!」


「なに待たせとんねん!ピアノ止まんなや」


「なにさらしとんねん!アホ!」


俺は3人目の生徒がアホと言った時点でキレた。


アホ、だと?


バカは許せるが、アホは無理。


沖田さんに何、暴言吐いてるの?


君たち、そうやって騒ぐことしか出来ないくせに。


俺は気がついたら壇上に出てっていた。


「うるさい!黙って待ってろよ。誰だって失敗はするし。今から俺がとりあえず代わりに弾くから静かにしとけ!そんな声出せるんだったら、歌うときに出せよ!」


……だよな。引くよな。


いきなり静かになったし。


「一条、お前そんなこと言うて大丈夫なんか?」


「はい、先生。本番で誰かが休むことになることもあると思って(嘘)二人の曲も練習しておいたんです」


「一条くん……せやけど、楽譜あらへん……」


「あー、沖田さん、大丈夫。俺、覚えているから」


俺は沖田さんが椅子を立つと、そのまま演奏を続きから始めた。


演奏が再開したことを受け、司会の教頭がマイクで生徒に歌うよう告げた。


難なく演奏を終え、引き続き、俺は旅立ちの日にを弾く。


最後に松木さんが校歌を弾いた。


控え室では、沖田さんがずっと泣いていた。


俺はかける言葉もなかった。


リハーサルが終わると、沖田さんは先生に介抱されて職員室に行った。


俺はその後ろ姿を見つめる。


沖田さんに心無い言葉をかけた奴らのことは記憶から消した。気分が悪い。


体育館から校舎までの通路は、激しく降る雨で、一面濡れていた。


生温い風と一緒にかかった雨はとても冷たかった。





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